ミスチレ短文 言葉は信用ならない。
強い魔法使いと結婚して、強い魔法使いを産むといった女は結局、弱い人間の男と結婚した。子供も産んだ。
そしてもうとっくに死んだらしい。
ミスラも知らないうちに。
「チレッタが亡くなったそうじゃ」
「……はあ」
なぜ俺に言ってくるのか、わからなかった。そのまま疑問を口にすれば、よくわからない表情をしていた。
何と言えばよかったのか、何を期待されていたのかわからなかったが、どうでもよさそうだと忘れることにした。
年中、吹雪いているような土地だ。
湖も凍って仕方ない気がするのに、なぜか水のままでいる。
ミスラは舟を出すでもなく、渡し場でぼんやりしていた。
時おり、女の声がする気がして振り返り、雪だけが目に入って息を吐いた。
死んだということは、もういないということだ。それくらいは知っているが、あの女が死ぬとは到底考えられなかった。
「……オズとやりに行きますか」
何しろ、ミスラは強い。オズくらい、倒せてもいいと思っている。
オズは最近、子供を拾ったらしい。連れ歩いているのを見た。子供は弱いので興味がないが、あの女も子供を産んだとは聞いていたから、この前少し眺めはした。
オズに、いつもより強い電撃を食らって、まじか、と思った。
吹雪いているだけのこの国で、もうどのくらい生きているのか、ミスラは考えたこともあまりなかったし、さして重要とも思わなかった。
ただ、このまま渡し場にいても、もうあの女には会えないらしい。死に際を知らないし、実感もない女の死は、ミスラのなかで宙ぶらりんのままだった。
ミスラは今日も渡し場に立ちすくんでいる。