断片一
「ティコ湖にはさ、人魚の伝説があるんだって」
髪が雲みたいにたなびいて、ゆるゆると、揺れている。肩も、腹も、胸も、全部が揺れている。魂を揺らしながら笑っているのだ。
ミスラはそれを見るのが好きだ。胸にオレンジ色の花が甘ったるく咲くみたいな、くすぐったくうねるような感じがする。
「空から隕石が落ちてきてさ、他にいないような生き物たちがいっぱい生まれてね、その中には人魚もいたんだって」
「ふうん」
「だから、人魚は、星から生まれてきたんだよ」
突然、チレッタはお気に入りのベッドに横たわるみたいに、自然に後ろに倒れ、そのまま、湖に落ちていった。水はするりとチレッタを受け入れる。
「どう、人魚みたい?」水面に金の髪がふわりと広がっている。
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