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    はるのぶ

    なにかをかきます

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    はるのぶ

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    花が毎日家に届くファウストのはなし(色んな魔法使いが石になっている世界線なので色々注意

    #フィガファウ
    Figafau

    eternal それが自分宛てだと気づいたのはいつからだろう。
     突然。本当に突然、花が届くようになった。

     毎日というわけではなく、時々、頻度も分からず誰がどうしてここに置いていくのかも知らない。綺麗な花束にしてあるわけでもなく、だからと言って無造作に散ってしまっていることもない。ただ、玄関に置かれているのだ。
     朝起きて、今日はあるだろうか、と玄関の扉を少し優しめに開くのがすっかり日課になってしまった。
    「うん」
     小さく摘み取ったそれを抱え込んで、家の中へ戻る。水の張った花瓶に見栄えが良いように刺すと、瞳を閉じてゆっくり深呼吸をする。
     胸いっぱいに広がるのは、花の香りと少しの魔力。
    「…よし」
     まぶたを開き、背筋を伸ばして今日も一日生きていくことを実感する。

     
    「あれ?ファウストじゃねえか、珍しい」
     後ろから話しかけられてその声に振り向くと、袋いっぱいの食料を抱えたネロが小さく会釈した。近寄ってその荷物を持ってあげると、ありがと、とお礼を言う。「何しにきたんだ?」
    「花瓶を買いに来たんだ」
    「花瓶?あんた、花とか育てる趣味だっけ」
     いや、その否定の言葉にネロは眉をひそめる。「毎日花が届くようになって」
    「なんじゃそりゃ、変な呪いか?」
    「呪いだったらとっくに処理しているよ。まあなんというか…知人だと思うんだ。確証はないけれど」
    「ふーん」
     僕が本当のことを言っているのを確認してから返事をして、そのまま歩き出した。向かう先は彼の店。
    「飲んでいくだろ。今日は泊まっていくか?上の部屋片付ければすぐに用意できるけど」
     ネロの言葉に嘘はない。それがわかっているから、僕も安心して本当のことが言える。
    「食事だけにしておくよ、明日も来るかもしれないし。最近頻度が多くなってるからね」
     そうかい、とネロは呟くように言った。
     
    「いくら魔法使いでもできることとできないことがあるってね、ファウスト」
     帰り際、人目もないけど法律で街を抜けるまでは一人にならないようにと送ってくれたネロが小さくつぶやいた。
    「…?」
    「俺は自分から離れていったけど、あんたはそうじゃなかっただろう。ちゃんと最後の最後まで…普通は手のひらからこぼれるものをわざわざ拾ったりしないんだぜ」
     僕の両手を彼の両手が包み込む。暖かくて、胸が締め付けられる思いがする。視界が一瞬だけゆらりと歪んだけど、すぐにまばたきをしてそれが落ちるのをやめる。ネロもそれを知っていて、だからこそ何も言わない。
    「ファウスト、それでも落ちるもんは落ちる。死ぬときは死ぬんだよ。俺たち生きているもんが出来るのは、弔って悲しんで前を向くことだけ」
     言葉をゆっくりと咀嚼して飲み込む。うん、と頷く。
     ネロの言いたいことが痛いほど分かる。正しいし、それが一番だ。これ以上のことはないし、最善のことをするのが自分にとっても良いことだと知っている。
     けれど同時にそれがどうしてもできないことも知る。
    「わかってるよ」
    「…本当かよ」
     何もわかってない。ネロは今頃心の中で僕に失望しているかもしれない、僕がこんなにも幼稚な考え方をして、嘘つきだと言うことを。「本当だよ」
    「そうかい」
     ネロは諦めるように僕の手を離した。僕の言った嘘をゆっくりと飲み込むと、もう一度呟く。
    「そうかい」
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    Shiori_maho

    DONEほしきてにて展示していた小説です。

    「一緒に生きていこう」から、フィガロがファウストのもとを去ったあとまでの話。
    ※フィガロがモブの魔女と関係を結ぶ描写があります
    ※ハッピーな終わり方ではありません

    以前、短期間だけpixivに上げていた殴り書きみたいな小説に加筆・修正を行ったものです。
    指先からこぼれる その場所に膝を突いて、何度何度、繰り返したか。白くきらめく雪の粒は、まるで細かく砕いた水晶のようにも見えた。果てなくひろがるきらめきを、手のひらで何度何度かき分けても、その先へは辿り着けない。指の隙間からこぼれゆく雪、容赦なくすべてを呑みつくした白。悴むくちびるで呪文を唱えて、白へと放つけれどもやはり。ふわっ、と自らの周囲にゆるくきらめきが舞い上がるのみ。荘厳に輝く細氷のように舞い散った雪の粒、それが音もなく頬に落ちる。つめたい、と思う感覚はとうになくなっているのに、吐く息はわずかな熱を帯びてくちびるからこぼれる。どうして、自分だけがまだあたたかいのか。人も、建物も、動物も、わずかに実った作物も、暖を取るために起こした頼りなげな炎も。幸福そうな笑い声も、ささやかな諍いの喧噪も、無垢な泣き声も、恋人たちの睦言も。すべてすべて、このきらめきの下でつめたく凍えているのに。
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