君が居ないパチリと一気に覚醒すると、荒い呼吸が出た。寝汗も凄くて思わず額を拭った。
酷い夢を見た。
声が出てしまった。声はか細くて震えそうだった。
「アスラン・・・」
聞く者のいないその部屋で、虚しく響いた。
月の幼年学校。そこで、二人で過ごす日々に疑問を持ったことはなかった。
当たり前のように、居たから。そこにいたから。傍にいたから。
「アスラン・・・キラ知らね?」
「まだ来てないのか?今日は別々に来たんだが・・・困ったな」
廊下でそんな声が聞こえて、キラはつい走り出していた。耳馴染のある声、懐かしい気持ちになって教室の扉を開けると飛びついていた。
「キラ??!」
「アスラン・・・」
突然の事にアスランが驚いたように振り返る。先ほどアスランに話しかけていたらしい男子が「熱愛発覚?!」と冷やかす。
だが、ガタガタ震えてる様子のキラに驚いたのはアスランだけじゃなくて、その男子はノートをアスランに渡すとその場を去る。借りていたキラのノートを返したかっただけのようだった。
「キラを連れて保健室に行って来る。先生に言っておいてくれ」
そう言うと、アスランは顔が青ざめているキラを連れて保健室に行った。
保険の先生に、キラは何も言わず、ただアスランを掴んでいた。ひたすらに。
取りあえず休んでいくようにとベッドに寝かせられ、ただならぬ様子のキラにアスランも付き添いを申し出た。しばらくすると保険の先生も急用だと出て行った。
そこでようやく、アスランはキラに声をかけた。
「キラ・・・どうした?何かあったか?」
「・・・怖い、夢を見て・・・君が」
「俺が?」
「・・・僕を殺す夢」
「・・・・・・」
しばらく音がなくなった。キラは起き上がると、アスランの目を見つめる。
睫毛がゆっくりと上がって、緑色の瞳がキラを見つめ返す。そーっと、キラの背に腕が回った。
「・・・夢だ、それは」
「うん・・・でも、怖かった。・・・ううん、怖くなかったかもしれない」
「・・・?」
「君になら殺されてもいいと思ってた・・・あの時の僕は」
「・・・・・・」
夢の中のキラは、アスランになら殺されてもいいとすら思ってた。何か辛い事があって。逃げ出したくなっていたのかもしれない。
・・・でも、怖かった。凄く、怖かった。
「キラは・・・俺を置いて行くつもりだったのか?」
「アスラン・・・」
「俺は、お前が居ないと苦しい・・一緒に生きたいと思ってる」
「・・・僕だって、思ってるよ。君と一緒に生きたい」
触れ合った手と手。触れ合う唇。窓から風が入って来て二人の頬を冷やしていく。
指先も口づけも離した後、互いに照れたようにクスクス笑い合った。
ポンポンとキラの寝ている布団を叩きながら軽口をたたき合う。
「ほら寝ろ・・・昨日出た宿題、お前またサボってたりしないだろうな?」
「あ、忘れてた・・・アスラン宿題見せてよ」
「キラ・・甘ったれるな!・・まあ、仕方ないか・・・」
緊張が少し解れて来たと思って、もじもじとキラが言いだしずらそうに言ってきた。
「今日ね、母さんが居ないんだ。アスラン・・・泊ってってくれる?」
「そっちが本題か・・・いいぞ」
「・・・良かったあ・・・」
「また変な夢見たら、起こしてやるから」
「うん!!・・・ありがとう、アスラン」
それからアスランは手を握ってキラがうとうとし出すのを優しく見守った。
傍にいればきっと、怖い夢なんて見ないから。
夢にまで見る、君がいない夜
お題配布元「確かに恋だった」確かに恋だったbot@utislove様より。