【WEBアンソロ】夢の伝言バーでたまたま隣に座った青年が、いくら男から見ても美人で綺麗だったからといって、好きになった覚えはないし、好かれている覚えもない。枕元に立たれるような理由はない。
2度目に会ったときに教えてもらった「鯉登」と言う苗字が、聞いたことがある大企業のものと同じだからといって、俺がどう思ったかなんて相手には関係のないことで、だから、やっぱり、そこに鯉登さんそっくりな男が立っているのは、おかしい。
実際は立っているのではなくて空中で器用に座って浮遊している、大体幽霊のようなものだと思う。足の先まで見えているが、靴だ。黒い長靴。
星のついた袖と線から、恐らく軍人の服だと思う。
ベッドから見上げる俺の視線に気づいたのか、はたと男がこちらを見て口を開く。
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