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    mizuki_mir

    鯉登さん右のなにかを書いています

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    mizuki_mir

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    下で公開中の前編と称したやつが完全に嘘で、本にしようとしているところです
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16988574
    尻叩きに進捗上げます
    月島さん視点が入れば支部にまとめます

    ぽちぽちしてもらえるとめっちゃ嬉しいです、よろしくおねがいします

    ドーナツホールの続きから食べる②(つづき)

    映画を見終えて、他のチャンネルに回すことなくテレビを消す。
    映画館で観損ねていた映画が配信され始めたのでなんとなく観始めたが、あまり面白くなかった。正確には面白いかどうか、よく分からなかった。
    いい時間なので風呂に入って、眠る。
    最近はずっとその繰り返しだ。
    暇だなあ。
    本当に暇な訳ではないけれど、なんとなくぼんやりとした日が流れて、季節が流れる。
    映画も、一緒に観たい相手がいなくて、もちろんひとりで観てもいいのだけれど、つまらないから観に行くのをやめてしまった。
    たまに行っていたスポーツ観戦も、ボルダリングも、美術館も、サイクリングも、日帰りの温泉旅行も、なにも、なにも行く気がしない。
    世界が狭まった気がして、面白くない。
    ひとりで旅行に行くのも悪くなかったけど、きっとどこに行っても月島の影を探してしまうのは目に見えていて、そして、きっと、どこにもいないであろうことも予想はついた。
    あんな影も形もなく消えてしまったのだから、その辺にいるわけがない。
    もっと上手にやるだろうという、いらない自信があった。

    誘われて色んなところに顔を出すようになって、杉元には「最近付き合いよくなったな」と笑われた。
    今日も杉元がオシャレな街のかわいいパフェが食べたいと言って呼ばれたので、男二人でかわいいフルーツパフェを前にしている。
    「そんなに付き合い悪かったか?」
    「悪かったよ、大体誘うと先約があるって言って。実際インスタ見たら色々行ってたから、ほんとに忙しいんだと思ってたけど」
    そうだっただろうか。とりあえずパフェを撮って、画面を消す。
    杉元はひとしきり可愛い可愛いと愛でた後、刺さったウェハースを引っこ抜いて、バリッと齧った。私は断面が綺麗に見えている苺をスプーンでつついて、綺麗だったパフェが、ただのフルーツと生クリームとアイスの層になるのを眺める。確かに美味しいけれど、一人でこのサイズのパフェを食べるのも久しぶりだと思った。

    元々あまり写真を撮る方ではなかったが、日記的に数枚インスタに上げるようになったのも、月島と色々なところに行くようになってからだ。
    私が写真を撮るのを月島は最初は変な目で見ていたが、慣れてからは撮らなくていいんですか?と聞くようになっていた。私が撮り終わってから、アイスをすくって差し出してやると、苦笑いしながらスプーンの方を受け取るのだ。そして美味しいですね、と笑って、私がそうだろうとそれに返す。手ずから食べてくれなくても、それで、良かったのに。

    そういえば、と杉元が空っぽになったパフェの器から顔を上げた。
    「今度アシㇼパさんと白石と会うけど来る?今日は都合つかなかったけど、二人も鯉登に会いたがってたよ」
    「都合が合えばな」
    反射でそう返すが、都合がつかないことなんて最近はそんなにない。他に予定がないから。
    スケジューラーを開く。仕事の予定しか入っていない。
    自分のインスタを開くと、更新は大分前に止まっていた。前の写真を見ないようにして、さっき食べたパフェをアップする。月島はインスタ見ていないだろうな。下手したらインターネットに触れていないかもしれない。でも、月島がいなくなったことで私が気に病むのを望んでいるわけではないと思う。今更ではあるが、努めて普通に過ごした方がいいのだろう。
    近くのファッションビルを一通り冷やかして杉元をマネキンにして、杉元は気に入った一着を買っていた。
    思えば杉元とそういう遊び方をするのも初めてかも知れない。
    普通に楽しかったので、少し心が軽くなる。
    「えーめっちゃ楽しかった」
    「そうだな」
    ニコニコする杉元に同意してやると、ちょっとほっとした顔をして、また笑顔になった。なぜだ。
    「じゃあまたね、連絡する!」
    「ああ、またな」
    乗り換えの駅で別れて、家に足を向ける。
    駅からひとり、徒歩5分の道のりを、歩く。歩いて、エレベーターに乗って、鍵を開けて、
    「ただいま」が虚しく響いた。
    後生大事に挟んだ付箋をたまに見ては、閉じる。
    何かできたんじゃないかという想像をしては、打ち消す。
    その前になにか言っていたとして、結局どうなっていたかは分からない。もっと酷い物別れに終わっていたかも知れない。嫌われていたかも。
    ぎゅっ、と喉の奥が締まる。
    誰も悪くない。悪くない。
    すれ違ったのは不運で、仕方のないことだったのだ。
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