空欄やがて満つ「ハンザは、年末はどうしますか?」
二人で帰路を歩いていたとき、従妹────リヨンは突然、俺にそう尋ねてきた。顔を見れば、夕焼けの中、まっすぐ俺を見上げている。
「年末」
「ええ」
鸚鵡返しに呟くと、リヨンは首を傾けて同意を示した。それから、思い出し笑いを含みながら続ける。
「今日、図書館に行ったらラサさんと会ったんです。それで、クリスマスから年末にかけての話になったんです」
「クリスマス……」
俺はまた鸚鵡返しをした。クリスマスという行事は、俺達の地元では無いも同然の行事だ。『異国で行われている行事』に等しく、遠くの騒ぎを新聞の時事の面で聞きかじる程度に留まっている。
特に、俺達の家において、その行事が取り上げられることは皆無に等しい。
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