圭藤♀からあげ!うれしい!大好物!
基本晩ごはんの残りものだから、ちっちゃいのとか焦げたやつばっかりなのもなんかうれしい。
ハンバーグ!最高!だーいすき!
基本晩ごはんのついでに作るから、ぶった切った形になってるのもめっちゃ最高。
「じゃあ、第一位は?」
なんでもないふうに訊ねながらも、藤堂くんのお箸はずっと止まったままだ。“業スーの冷凍“らしいブロッコリーを右へ左へ、頭でも撫でるみたいにころころ揺らしてる。
「んーーー、一位はいっぱいあるんですけどー、」
明後日のほうを見上げながら、要くんは明後日のことを言う。同率一位ってこと?からあげとハンバーグの立場は?なんて内なる山田太郎が野次を飛ばしてしまうのは、惣菜パンにかじりついてなんとかなだめた。
あっ!と要くんの顔が輝いたのと、ピタ、と藤堂くんの右手が止まったのと、ごく、と無関係な僕がパンを飲み込んだのはほぼ同時。
「ポテト!ポテトサラダ!葵ちゃんの作ったポテサラ、また食べたい!」
「あー、そういやお前異常におかわりしてたもんな。食い尽くされるかと思ったわ」
きゃっきゃ!という吹き出しが見えそうなほど和やかにやわらいだふたりの空気に、どこかホッと肩の力が抜けた。
ポテサラ、ポテサラね、おいしいよねー、僕もお母さんのやつ好きだわ。
安心したのもつかのま、いやいや、あれ?と首をかしげることになるけれど。
お昼ごはんはほぼ毎日みんないっしょだけど、藤堂くんのポテトサラダって見たことないな。
「ポテサラはなー、すぐ傷むから弁当のおかずにできねえんだよ。マジ腹壊す」
「えー、じゃあまた葵ちゃんちの夕ごはん呼んでよ。ポテサラとカレーの日!」
あっ、やばい、とお気遣いの紳士、山田太郎は身を縮こめる。これは僕がこんな腕相撲の審判席で混ざっていていい話じゃないっぽいぞ、と背中がそろそろ後ずさる。
「おー、そのかわりお前もジャガイモ潰すの手伝えよ」
まあ、要らぬ心配余計なビビりでしたかね。
口調だけはビシッと元気な藤堂くんは、まっすぐ前だけ見つめてる。