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    ひらい

    人選ぶ奴とか供養とか

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    ひらい

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    鯖りんの小説作品が無限に欲しいので口調とか解釈とかの練習。推敲は雑。
    書いたら増える(ページ切り替えが無いツールでやることでは無い)

    ##鯖りん

    ――――
    六道さんのお題は緩やかに失った天国です
    #お題ガチャ #nijinodai https://odaibako.net/gacha/36

    ※複数キャラの死ネタ/あらゆる捏造
    ※CP要素無いけど生産元は鯖りん思想/後半若干鯖人贔屓
    ※錯乱の様子を病棟の患者と表現する描写がありますが、一切の差別的意図を含みません。夢野久作の雰囲気です。
    ※バドエンという言葉は似合わないけれどその括りです。
    ※鯖人視点にしたせいでお題に沿っている感じが皆無ですが、緩やかに(周りの人々が少しずつ死んでいって、人間としての安寧を)失った天国(=楽園のような場所だと思っていた現世)的なニュアンス。

    ――

     我が息子は、その身に巡る血の比率で考えれば過半数が死神なのにも関わらず、何とも奇怪なことに、人間じみた生活を送っている。然しながら、如何にそちらの世界で生きようとも、心身ともに迎合することなんて叶わない。少しずつ時の流れに置いて行かれるのは、至極当然のことで。

     死神の成長が停止する時期には個人差があるが、魂子や乙女を筆頭に、りんね六道の血筋は基本的に二十代の見た目で停止する。例に漏れず、りんねもそうだった。
     大学で、周りが就職だの何だのと俄にざわつきはじめた頃(学費は奨学金と死神の両立は不可能とみた魂子が出した)、自身の見目に変化が無い事に気がついたらしい。髪が伸びることが無くなった、と。元より現世で就職する気は無かったらしいから、何を言う必要も無かったのだろうが「それで誤魔化せるのは精々30歳くらいまでだよ」とだけ言って、本来の予定も忘れて踵を返した覚えがある。鯖人は、この姿で高校生の父親と名乗っても不審に思われなかったから、恐らく30代後半までは行けるのだろうが、やはり、人の血の濃さというものがある。りんねの方が、鯖人より幾らか若い見た目なのだ。身長も若干低い。
     とはいえ、その時点のりんねが、高校生の頃以上に鯖人と似た姿になっていたことは相違なかった。――顔だけ見たらそうでも目付きだとか雰囲気だとかが違いすぎる、と聞こえた気がしたが気のせいだろう。

     最終的に、大学卒業後は、拠点は現世に置いて、フリーの死神として飛び回ることにしたらしい。事情を知らない人間には祓い屋……みたいな……?と適当に誤魔化しているときくが、それでいいのか。その頃既に中学生となっていた苺からは、目指せプラチナライセンス!と発破をかけられていたので、いつか第二の死神乙女になるところを見てみたいと思ってしまった。

     それでも、現世で生活することを続けて、現世の友人達との繋がりを断たなかったのだから、彼にとっては、現世こそが楽園のような場所だったのだろう、と薄ら思う。――確実に終わりが待っている幸福なんて意味が無いのだから、早くこちらに来れば良いのに。分かった上なのか、目を逸らしているのか、考えても詮無きことだ。

     彼と同世代の人間で最初に死んだのは、同級生の少年だった。その訃報を聞いた時のりんねの動揺具合ときたら、錯乱して隔離病棟を抜け出してきた患者なのかしらんと思わせるほどで、その惨状には、実は成仏出来ていなかった彼の霊すらも気を遣うほどだった(りんねに気づかれる前にという本人たっての希望で魂子に浄化された)。
     常人なら死んでいるような状況下を幾度もくぐり抜けていた彼であったから、心の奥底で死なないとでも思っていたのだろうか。人の寿命はそんなに単純なものではあり得ないのに。
     それから数日間、周りの人々が少しずつ日常生活に復帰していく中で、何も出来ないまま魂の抜けたようにぼんやりとしている彼を見た時点で、少し厭な予感はしたものだが、その時はまだ、慣れていないだけなのだろうなと思って、憐れむに留めていた。ちなみに、似たようなことを口に出したら、無言で苺に殴られた。

     その次までは、暫く間が空いた。具体的には、いい加減人間としての戸籍年齢と見た目年齢の誤魔化しが効かなくなってきて、人間としての六道りんねを失踪宣告で死亡扱いとし、数年が経った頃。同級生の少女が死んだ、病死だった。今回のりんねは前回と比べて落ち着いていたが、それでも少しずつ、顔つきが見た目年齢に似合わない哀しいものになってきているのは見て取れた。
     その頃、彼の周りに現われて、その度に未だにちょっかいを出しに来ている悪魔にからかわれていた、視える高校生は、最初に死んだ少年に似ていた――というか彼の転生した姿であったのだが、苺が例外中の例外であっただけで、本来、輪廻転生を経た魂の記憶は戻らない。疑問に思うそぶりがあるのならば告げることも慈悲にはなろうが、幸いなことに何とも思っていないようなので、不干渉でいることにする。どちらかというと、真宮桜の方が薄ら高校生の正体に気づいているように思えた。

     更に間が空いて、彼が祖父の年齢に追いついた頃、彼の大切な人が寿命を迎えた。病死ですらない、安らかな終わりだった、と噂に聞いた。と、いうのも、寿命が確定した時点で架印経由で情報を聞いた魂子たちに軟禁されていたから、伝聞でしか知ることが叶わなかったのだ。さすがにそこで妨害するほど最低な親では無いはずなのだが、その情報を持ってきたのが鯖人の被害者である架印とれんげ(結局命数管理局に流れで就職したらしい)だった時点で、余儀ないことである。

     その頃には苺も良い年になっていて、気軽に会いに行けなくなっていたし、あの頃の人間の知り合いがほぼ全員死んでしまったというのは、中々に堪えているだろう。暫くは預金に手を出すのはやめておくか、と決意したあたりで、残念ながら自分もそろそろ彼とお別れだ、ということに気がついてしまった。死神と人間の寿命を足して割れば全然500年くらいは行けるだろうと思っていたのだが、そう甘くはなかったらしい。考えてみれば父とて本来は若くして死ぬ身であったのだから、そこを引き継いだと考えればおかしいことではないか。佳人薄命とも言うことだし――百年以上生きて薄命と言って良いのかは分からないけれど――。
     知る者が次々と消えてゆく中で、数少ない血縁者さえも死んでしまうのは少し酷いかもしれないとは思うのだが、別に彼なら自分のことは気にしないだろう。寧ろ、せいせいするくらいは言いそう――否、人の命をそのように軽んじる子では無いか。

     このまま寿命に任せて大人しく死んでは、きっと転生できずに地獄行きだ。輪廻の輪への送迎を頼んでみよう、なんて思って、目の前で飛び降りてみる。実体で。無視される可能性も若干考えたが、今のお前は飛べないだろう!と必死な顔で掴み上げてくるものだから、つい笑ってしまった。容赦なく鎌で殴打されたが、それでも安全地帯に辿り着くまでは絶対に手を離さないという気概で掴まれていて、数年ぶりに罪悪感をというものを覚えた気がする。
     でもこれで分かった。多分、りんねは、鯖人を輪廻の輪に導いてはくれないだろう。というか、信じてくれなさそうだ。

     最近、こちらに来ることが多いことに気づいていない訳ではなかった。最近、今までより態度が軟化したことが分からないほど鈍感ではなかった。最近、無理するかのように沫悟や鳳と会う機会が増えていることを、知らないほど無関心ではなかった。
     けれど、けれども、こればかりはどうしようもないのだから、それを直視出来るほど、六道鯖人は勇壮では無かったのだ。

     別れの言葉を言う勇気は無い、遺書なんて書く柄じゃない、何も遺せる物はない、だから、誰にも何も悟らせずに輪廻の輪に乗った。きっとりんねはこれからも生きるだろうから、人間の頃の痛みなど忘れてしまうほど、死神との交友関係を深めていけば良い。
     でもカンパニーや借金の事後処理が息子に行ってしまうのなら、それは……悪いことを……したな……
    (24/06/24)

    ――

    鯖りんのお話は
    「こんなところで、どうしたの」という台詞で始まり「銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった」で終わります。
    #こんなお話いかがですか #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/804548
    ※鯖→りん CP要素薄め
    ――――
    「こんなところで、どうしたの」
     珍しく、鯖人が正論を言った瞬間であった。彼が登場時の突風で巻き上げた海水が、りんねに頭から襲いかかっていることに目を瞑れば、だが。
    「……おやじには関係ないだろ」
    「いやぁ…さすがに目の前で自殺行為じみたことをやってる息子がいるのに関係ないって言うパパはいないんじゃない?」
    「お前なら言うだろ、というか半分くらいは急に現われたお前のせいだろうが!」
     殴りたいところだが、生憎と絶妙に間合いを取られていた。構うだけ時間の無駄だと切り替えて、またざぶざぶと海を掻き分けていく。
    「……まさかとは思うけど女の子が沈んじゃったりしたの? なら隠蔽するから早く上がった方が良い。そんなところにずっといたら風邪引いちゃうよ?」
    「お前じゃ無いんだからそんなことはしなっくしゅん!」
     状況をおさらいしよう。季節は秋、時間は夜、場所は海である。そんな寒空の元、Tシャツ一枚で海に浸かっているのが六道りんね。……普通に考えて自殺行為以外の何物でもない。一般人に見られたら速攻通報されるだろうし、鯖人だって、これでいて結構本気で心配している。
    「言わんこっちゃない……。こんなところで倒れたら死んじゃうよ。死神も人間も関係なく」
    「うるさい。お前には関係ない。とっとと帰れもしくは命数管理局に自首でもしにいけ」
     言っている内容に反して、声は若干震えている。暗くてよく見えないが、手も顔も不健康な色だった。どうせ裸足だろう足も、きっと無事ではないはずだ。
    「何探してるの」
    「……指輪。銀色の。そこら辺の若者向けの店で買った奴だから金にはならんぞ」
     盗むと思ったから言わなかったんだ、等と言っているが、鯖人とてさすがにそこまで悪党では無い、はずだ。多分。
     それが依頼人関連なのか、あの三つ編みの少女に貰った物なのかを聞く気にはなれなかった、から、にこりと微笑んでりんねを担ぎ上げる。
    「分かった。探してあげるからりんねはこれで終わり、大人しく寝なさい」
     反論する暇すら与えずに雑に気絶させ、霊道経由でカンパニーに放り込む。丁度美人がいたので、「適当に着替えさせてからぼくの部屋に寝かしといて」と頼んでおいた。
     
     翌朝、鯖人の部屋で気絶――ではなく眠っていたりんね(案の定風邪は引いた)を叩き起こす声があった。霊道を通って声の聞こえる方へ行ってみれば、声の主は何やら光る物を掲げている。
    「りんね、これで合ってるか?」
    「合っているが……お前、これは働いたことにならないのか?」
    「え~? あの後社員たち呼び出して総ざらいさせただけで、ぼくは何もやってないし~?」
     夜には無かったクマに、びしょ濡れの髪と肌、雑に社員から引っ剥がしたのだろうサイズの合っていないTシャツとズボン姿でそれを言われても説得力は無い、が、下手に追求して面倒なことになってはたまらないので"そういうこと"としておくことにする。
    「……感謝する……」
     自分でも聞き取れるか怪しいくらいの声量だったが、どうやら聞こえていたらしい・一瞬だけ、鯖人らしくない――まるで世間一般の暖かな父親のような――眼をした物だから、つい瞠目してしまった。
     
     特に渋られることも無く普通に手渡された銀色の指輪が、朝日を反射して眩しかった。
    (24/06/23)

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