情報部八幡の一日八幡はジャージくんのつもり。情報部所属。学生時代にインターネットで”イタズラ”をしており、それがキッカケで若頭に目をつけられ、スカウト(ほぼ誘拐)されてきた。頭のネジが緩んでいたところに、このことで何本か抜けてしまい、すっかり組に馴染んでしまった。もともと倫理観がゆるかったこともあり、犯罪行為に躊躇いがない。体力があり、躊躇いがないので、以外に腕っぷしが強い。
【朝】
八幡の朝は早い。情報部というのは、読んで字の通り”情報”を扱う。情報を得るためには、インターネットはもちろん、足で歩いて調べ回ることも重要になってくる。体力が必要なのだ。よって八幡は、朝に向かって眠りにつく”夜の街”を一人でランニングするのが日課であった。今朝もいつものジャージを着込み、先日四宮から手渡された”臨時収入”で購入したばかりのランニングシューズの紐をしっかりと締め、アパートの鍵もついでにしっかりと締めると、階段を降りて駐輪場へ向かう。そこで準備体操をしながら、今日はどちらの方向へ向かうか決めるのだった。白い息が、規則正しく現れては消える。明けの明星が、東の空に輝いていた。
八幡が情報部に配属されたのは、組の内部でも若手で、スマートフォンやパソコンなどの電子機器の操作に”それなり”に明るいから、というのが主な理由であった。実行部に入るほどの腕はないし、営業部に入るほど口も上手くない。その点、電子機器のことなら”少し”は分かるので、八幡は、多少の得意分野を認めてこの配属にしてくれた小林には非常に感謝している。小林の補佐である四宮にも日々世話になりっぱなしで、非常に良くしてもらっており、目も掛けてもらっている。最近では、情報部の仕事より四宮の手伝い——小林曰く「四宮の補佐やんけ」——をさせられることが増えてきた。補佐! 自分が! 恐れ多いが、嬉しかった。
いい職場だよな、と八幡は思う。自分みたいな者も認めてくれて、各自が得意分野で腕を振るい、頑張り次第で収入が増える。毎月の納金ノルマもそれほどキツくない。八幡は指先一つで大金を引き寄せ、遥か地球の裏側を経由し、宇宙までも巡り、そして最後に小さな端末の中から取り出す方法を良く識っている。その腕前は那須原に並ぶと評されるほどだ。しかし、情報部随一の頭脳と腕前を持つ那須原と同列に並ぶには、自分はまだまだだと八幡は自省する。あの、他人にも自分にも厳しすぎる男は、今頃東京で、元気にしているだろうか。何となくそんなことを思ったこともあり、八幡は今日は東の方向へ走ることにした。