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    セキセ

    小説諸々アカウントにしました‼️自創作の設定などは、また別の場所でまとめておきたいと思います!

    ifカプの官能小説や創作の二次創作もあります。18禁絵もあります。ごめんな!

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    セキセ

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    代理創作にある、少し暗めな公式設定を元にした小説です。
    赤瀬が縊死しているところを、賢一に見つかる一時の場面。

    ⚠️首吊り描写

    ##手帖と青年

    救い本屋の空気は、いつもと変わらなかった。
    賢一はレジの上で帳簿をめくり、静かにペンを走らせていた。天井の古い照明が、かすかにチリチリと音を立てている。


    しかし、ふと――その音の合間に、なにかが胸に触れた。


    感覚。


    妙な静けさ。耳に残る余白のような、そんな落ち着かない感覚。


     「……」


    賢一はペンを置いた。


    背筋を、冷たい何かが撫でていったようだった。思考よりも先に、身体が反応していた。カウンターを出て、急いで、どこか重い足取りで、外階段へと向かう。


    ――赤瀬クン。

    呼び名だけが胸に浮かぶ。何があるとわかったわけじゃない。


    ただ。


    分かってしまった。



    あの部屋に何かが起こっている。


    どこかおかしい。


    そう、胸の奥の感覚が叫んでいた。



    ギシギシと音を立てる鉄階段を駆け上がる。


    赤瀬が暮らす二階の部屋の前で、手を止める。
     

    ドアノブに手をかけると、カチリと簡単に開いた。


    ーーー?



    ーーー――鍵が……開いている?



    赤瀬クンがこんな不用心なことをするはずがない。
    不信感と、ぞっとするほど冷たい予感が同時に喉元までせり上がった。



    「赤瀬……クン?」



    恐る恐る中に入る。部屋の中は静まり返り、カーテンの隙間から差し込む夕陽が、斜めに床を照らしていた。




    ーーそして、目に入った。



    ーーーその光のなかに、揺れていた。


    細い身体が――ロープに吊るされて、宙に浮いていた。




    「っ___?!赤瀬クン」



    頭が真っ白になった。



    動作が荒くなる。足元の椅子を蹴飛ばし、背後から抱き留めるように腕を回す。
    支えきれず倒れ込みながらも、懐から取り出した小さな折り畳みナイフですぐさまロープを切った。



    ドサッと落ちた衝撃よりも、赤瀬の軽さの方が怖かった。



    異常に軽かった。



    膝の上に抱きかかえた身体はぐったりとしていて、首にはまだ赤い痕が残っている。


    「赤瀬クン……っ、……ッ!」



    呼びかけながらも震える手で脈を確認する。息は――ある。微かだが、確かにある。



    安堵と涙と怒りと、何もかもが一気に胸をつかんで潰そうとした。


    なぜーー



    なぜ、何も言わなかった。



    なぜ、こんな一人きりでーーー


    だが、いまは問いただす時じゃない。



    赤瀬の額に触れながら、震える声で賢一は赤瀬に声をかけようとした。


    どう、言葉をかければ良いか分からなかった。



    鼓動が早くなる。


    ドクドクと鼓動が大きくなり、周囲の空気をかき乱す。


    ドクドク、ドクドク____と音が響いた時、賢一はその音を掻き消すように再び、「……赤瀬クン」と声をかけた。



    喉が焼けるように痛む。言葉を絞り出すようにして、続けた。


    「赤瀬クン………お願いだから……………」


    声は返ってこなかった。


    けれど、ほんの少しだけ、赤瀬のまつげが震えた気がした。


    その小さな動きにすがるように、賢一はそっとその額を抱き寄せた。



    静かな部屋の中で、風がカーテンを揺らしていた。



    ***


    キン_______!



    ――耳鳴りがしていた。


    遠くで何かが鳴っているよう。
    でも、それが現実の音なのか、自分の中から聞こえるものなのかも分からなかった。



    まぶたの裏はとても重く、開けるには力が必要だった。
    けれど指先がかすかに冷たく感じ、それがまるで引き戻すように、現実へと自分を手繰っていく。


    息を吸う。喉の奥が焼けるように痛んだ。


    「……ん……」



    かすれた声が、口から漏れた。



    どこかの布の上に寝かされている。部屋は薄暗く、静かで、どこか懐かしい匂いがした。


    本特有のあの香りと、誰かの気配。
    温かい手が、額に触れている。いや、額を撫でられていた。



    誰___?と思った矢先、「……赤瀬クン」と声が聞こえた。
    その声を聞いた瞬間、張りつめていた何かがぷつりと音を立てて切れた気がした。


    やっと目を開けると、すぐそばに賢一がいた。
    少しだけ乱れた前髪の奥で、その目は涙を堪えるように揺れていた。
    開いた目の奥はあまり見えていなかったが、どこか……綺麗な色彩を帯びた瞳孔が、自分を見下ろしていた。



    まるで虹のようだった。



    「……お、大家さん……?」


    赤瀬は、自分の声のかすれ具合に驚いた。



    賢一は小さくうなずいて、安堵と何かを堪えるように、優しく笑んだ。



    「……気づいてくれてよかった。……もう、呼んでも目を開けてくれないから……」
    彼は涙ぐんだ声で、赤瀬の手を取った。





    その言葉が、胸に刺さるように響いた。



    ああ、自分は――。

    「……ご………ごめ………ごめん、なさい……」
    赤瀬は視線を逸らそうとした。目を合わせれなかった。


    「謝らなくていいよ。……生きててくれて、本当に、よかった」


    その一言に、赤瀬の目に、涙がジワリと出てきた。



    言葉にできなかった思いが、胸に詰まってどうしようもなかった。ただ、静かにこぼれる涙を止めることはできなかった。


    頰を伝う涙。



    賢一はそれを責めるでもなく、黙って傍にいて、赤瀬の頭を優しく撫でた。



    しばらくそうして、少し落ち着いた頃、賢一は口を開いた。

    「赤瀬クン、明日、明日さ、図書館に、行こうよ……ね………」

    赤瀬は、目を見開いた。けれど、すぐに眉を下げ、くすりと笑った。


     「……また、急に誘うんですね」
    死にかけたような笑顔で、彼は言った。


    すぐさま賢一は、
    「うん。急に誘いたくなるくらい、大事な人だから」と言葉を投げた。



    赤瀬の喉がまた詰まりそうになった。



    ――この人は、ちゃんと見ていてくれた。自分の存在を、当たり前に肯定してくれている。




    少しの間を置き、赤瀬は微笑んだ。
    「……はい。行きます」


    枯れた声でも、それは確かに返された、生きる側の返事だった。




    窓の外で、夜風がそっとカーテンを揺らした。
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