空に光るはすべて星 121〜130240821 (蜂蜜(ハニー)の日)
えっ、俺がハニーなの?
どうした?…はは。腹が鳴ったな。空腹で眠れないのか?確か卵と牛乳が…ちょっと待ってろ。ほら、フレンチト一ストだ。少し焦げたが食えるだろ。…そうか美味いか。蜂蜜の甘さが丁度良い?あのこもそう言って…いや、なんでも無い。お腹一杯になったら眠れるだろ?大サービスで子守唄を歌ってやろうか
子どもの頃、父さんと弟と行ったキャンプ場は牧場や養蜂場もある本格的な所で、そこで食べたソフトクリ一ムや蜂蜜は美味かったなあ…。養蜂体験もできて、防護スーツ着た父さんは本当に似合ってたけど、あんたも似合いそうだな。え?着たことある?フォルドは農業に力を入れている…隠れ蓑じゃないか!
240822
一生のお願い
お前も気付いているだろうけど、俺の身体の半分は機械で出来ていて、俺はかってその半身と一緒に命より大切なものを失って…それ以来俺はずっと死ぬ為に生きていた。お前に頼みがある。俺はもういつ死んでもいいのだが次に死に損なった時はお前に止めを刺してもらいたい。そうだこれが俺の最期の望みだ
あんたは死なないよ。俺が殺させないから、…そう、例えあんた自身があんたを殺そうとしても俺が絶対守るからな。そうだな、あんたはずっと俺のことを危なっかしいとか見ていられないとか言ってたよな。あんたは俺が死なないようにずっと見張っててくれないか?俺がもういいと言うまで。なあ、お願いだ
240823
躾はしっかりとお願いします。
便所に繋いだのは、鍵が掛かる個室が他に無かったからだ。元々捕虜拘束用に、鍵は外側に付け直していて…その捕虜達はどうなったかって?…聞かない方がいい。食事は俺たちと同じ配給食を与えていたが、口に合わなかったか? ねじ込まれた方がつらかった?…まあそうだな。アレは躾の一環だったからな
どうしたんだ怖い顔して?…え?なに、わ、嫌だ、離し、…やだ、そんな、あんたが、そんなこと、する、なんて…!あ…痛、ッ、ごめんなさい、ぃや、こわい、ごめんなさ、ごめん、ごめ、ぁ、ああッ…!!! …なんだよ、その顔?ふふ、あんた無理矢理は趣味じゃないんだ?でもよかったろ?またやろうね
240824
はじめまして、を繰り返す
は?VIP対応はお前の担当だろ。急用?子供は苦手??おい待て!……はじめまして、俺はあのMSのパイロットだ。そうだな、大きいな。乗ってみるか?ここなら触っていい。え?いつものとちやう?確かにソルとはシステムが違うが…何歳だ?ん?にちゃい?…で、お父さんとお母さんはいつ戻ってくるのかな
はじめまして…?俺を覚えていないのか?…俺は、あんたの…いや、そうだな。古い知り合いというか…え?いや、ちが、息子じゃ、あんたの息子さんなんかじゃ、な、わ、あぁあ、…うんそうだよ、父さん、俺だよ。生きていたんだ…俺も逢えて嬉しい。もう何処にも行かないから、だから、もう、泣かないで
240902 (靴の日)
湯が出た?発電機生きてたか。着替えは古着だ無いよりマシだろ。靴はXXLしか無いがお前はデカいし大丈夫なんじゃ…え?何で足だけ小さいんだ!ちょっと待て確か支援物資に靴下が…あった。靴擦れしないようにこれを重ね履きしろ。バッグはこれを…は?何でそんなに親切なんだって?……俺にもわからん
靴と雑嚢は装備品で、足が付く可能性があるから落ち着いたら絶対に処分しろ、とあんたにキツく言われたけどさ…あはは、うん、そう。まだ俺の手元にある。俺の目立つ前髪を隠すためのパ一カ一も、靴のサイズ調整の靴下も全部、あんたが俺の為に考えて揃えてくれたかと思うと捨てられないよ。わかるだろ
240907
こたえられない
確かに、俺はお前の親じゃないと以前言ったが、こう長い付き合いだと、さすがの俺も、気持ちが揺らいできてな…。お前さえよければ、そして、俺なんかでいいのなら、えーと、その、……養子縁組して、俺たち本当の親子になるってのはどうだろうか…?…痛ッ!殴る事ないだろ!何をそんなに怒ってるんだ
月が綺麗だな…。俺、地球に来るまで、ぼんやり空を眺めるなんて無かったよ。…あんたが此処から離れられない理由はわかったけど、それがあんたを俺があきらめる理由になんかならないからな。あんたがどれだけ俺を突き放しても、俺はあんたが根負けするまで此処に通うから!…あはは、とんだかぐや姫だ
240917 (中秋の名月)
恋を重ねる
驚いた顔してどうした。あれは月、地球唯一の衛星だ。地上から見るのは初めてか?残念ながら大気汚染であまり鮮明には見えないが、それでも満月の夜は気付くと見上げているな…。今夜は月明かりでもう少し距離が稼げそうだ、歩くぞ。足元に気を付けろよ。…手を繋いでやろうか…って冗談だ赤くなるなよ
俺たちがいたの、二ホンって地域だったろ?満月の夜、夜通し歩いた事あったじゃないか。あの夜あんたが、月が綺麗だ、ってしみじみ言ったのが忘れられなくて、戻ってからいろいろ調べてさ、…死んでもいいわ。って返すんだろ? え?覚えてない? …まあいいや。今夜は一緒にずっと月を眺めていような
240920
息の根止めて
あれから百年。俺は全身の半分以下残ってた生身も捨て、脳以外は義体となり生きていた。そんな身体になってまで追っているあいつとはまだ再会できていない。あいつは徳を積みすぎて、たまたま遭遇した上位生命体に気に入られ融合し、永遠の命を与えられ『神』の地位に無理矢理据え置かれてしまっていた
最近は意識を保つのが難しくて、俺は何かをずっと探しているのだが、それが何なのかがわからなくなっている。ここはどこなのか?おれはどこかにはやくいかなくてはいけないのに、おれを案内してくれるあんた、行き方を教えてくれるんだろ?…眩しくてよく見えないが、あんたが、きてくれたのはわかるよ
240922(秋分の日)
悪夢はもう見ない
弟と来なくてよかったのかって?先日苗字を変えた報告で一緒に来たばかりだし、今日はあんたと来たかったんだ。…父さん、来たよ。俺が死なずに済んだのはこの人のおかげなんだ。あの日、自分の罪に打ちのめされて漂っていた俺に気が付いて回収してくれたんだ。…うん、あんたが居てくれるから、大丈夫
記憶では確か…あの崩れた橋のあたり……多分此処だ。その花を持って来てくれ。うん。…何も残ってないな…車の残骸も、燃え滓も、何もかも。…あれ以来俺も始めて此処に来たんだ薄情な親だろ?本当に、酷いよな。……何でお前が泣くんだ。…お前がいてくれたから来れたんだ…。やっと、前に進めるよ
240926(くつろぎの日)
それは寒い夜だった。
腕の中に小さなお日様がいたんだ。俺は、暖かな光を放つそれを、今度こそ失ってはならないと強く抱きしめた。すると抗議するような唸り声が聞こえ、金色の若い獅子の見間違えだとわかった。喉を鳴らしながら俺の首筋に鼻面を摺り寄せてきた獣は、ふいにお前になる、という夢を見たんだ。言わないけどな
夜、俺はいつも背後からあんたに抱きしめられてることが多いなと思って。旅の森の移動の中、守られてるみたいでとても安心していたのだけど、でも、あんたの事は誰が守るんだろ?と思ったらなんだかとても切なくなって。だから、なあ、今夜は俺があんたを抱きしめて眠りたいんだ。ばかみたいかな頼むよ