ファーストキスはレモン味、なんていうけれど。これは、そんなんじゃない。そんな程度のものじゃない。あまくて、やわらかくて、あったかくて。なによりこんなに胸がいっぱいになってしまう。ぎゅうって思い切り握りしめたみたいに、心臓がどきどきして痛くてたまらない。
あぁ、これ以上は駄目だ。このままではきっと、しんでしまう。羞恥とか高揚とか、なにより幸せ過ぎてしんでしまう。
なんとしてでも離れなければ。この腕の中から抜け出さなければと、必死の思いで身体を捩る。その拍子に唇が離れて、不満げな瞳とぶつかった。
「……どしたよ」
「こ、これ以上は駄目だ」
「なんで。……やだった?」
「ちっ、ちがう!!」
「じゃあなんで」
「ぁ、う……」
「なんで?」
「こ、これ以上は、しんでしまう……」
「は」
「これ以上は、ドキドキし過ぎてっ……幸せすぎて、しんでしまう」
彼の顔を見ることができなくて、咄嗟に視線を地面に向ける。俯いて顔を隠すと、くすり。頭上で笑い声がした。
「なら、一緒に死んじまおうか」