ピッ。
電子音がひとつ、手狭な部屋の中に響く。
それから少し遅れて、モニターに流れていた広告が無機質な画面に切り替わる。
ランキング表のような黒っぽい画面に、白い文字。一番上の欄だけがやけに大きく、そこに合わせた文字がでかでかと並ぶ。
「……知らないやつだ」
「え、まじ?結構有名だと思うけど」
「俺が洋楽を聴くと思うか?」
「ざんねーん、これは洋楽じゃないでーす」
「英語なのにか?」
「英語表記の曲名イコール洋楽っていうその認識、そろそろ改めるべきだと思います」
「うぇ、うぇばーえばー……」
「Wherever you are、な」
目の前を大きな掌が横切って、無造作に転がっていたマイクを取り上げる。態とらしくヘッドを叩いて接続を確認すると、彼はにやりとこちらを見遣った。
「中学生で習う単語ですけど~?」
「うっ……」
「ほんと、英語だけは駄目な」
「どうしても記号の羅列に見えてしまって……言葉として認識できないんだよ」
「じゃあなんでそれで定期テスト常に上位入ってんだよ……」
「定期テストはほら……教科書と課題丸を暗記すればどうにかなるから……」
「はい、極論定期」
アイスクリームが溶け込んだメロンソーダを煽り、空になったグラスがテーブルに置かれると同時。再び画面が切り替わって、アーティスト映像が流れ始めた。どうやら演者はアイドルや個人歌手ではなく、バンドグループらしい。ドームライブのものらしき映像には、ドラムやベースといった楽器も映っている。
それを満足そうに眺めながら、意気揚々と立ち上がる彼。彼がモニターのすこし左側に陣取って口を開くのと、前奏が流れ始めるのはほとんど同時だった。
「じゃ、ちゃんと聞いててね」