『時の流れに 生まれたものなら 一人残らず 幸せになれるはず』アレクシス・ネスside
「…、」
「?羊、何聞いているんですか?」
いつもよりも暗い顔で、うつむきながら曲を聞いていた羊に対して何となくかけた一言だった。
「ん?あぁ、COSMOSっていう合唱曲」
「COSMOS…宇宙ですか?」
「あぁ、うん。そういう意味にはなるよな」
「それでもなぜ急に合唱曲を?」
僕の一言にすっと顔を下げる羊。何か、悪いことを言ってしまっただろうか。
でも、なぜ急に?
「何となく、聞きたくなってな」
「いい曲なんですか?」
「そういうんやなくて…、聞けばわかるわ」
そう言った羊は、スマートフォンの音声が出る部分を僕の方に向けてきた。
『時の流れに 生まれたものなら 一人残らず 幸せになれるはず』
「これ…、」
「この歌詞が聞きたかったんよ」
そんなこと、あるはずない。
だって明るい歌詞を聞くときに、この顔はないだろう。
そう言いたくなるくらい、羊の顔は暗かった。でもそれは、僕も同じだったのかもしれない。
***
「っ、、、」
カイザーが、僕のことをいらないといった。
きっと本心。それくらい、見ればわかる。
僕にはカイザーしかいなくて、カイザーも僕しかいないと思ってた。
それなのに、僕だけ一人ぼっちになった気分だ。
僕の考えが甘すぎたのだろうか。
ふと、あの歌詞が頭をよぎる。
『時の流れに 生まれたものなら 一人残らず 幸せになれるはず』
「そんなわけ、ないのにな」
僕の言葉は、広く輝くフィールドにとけていった。