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    noa/ノア

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    新春SSおみくじ:第弐番 [風信&南風 パイロットAU]
    南風のサングラスが壊れるお話。

    #天官賜福
    Heaven Official’s Blessing
    #風信
    windGod
    #南風
    southerlyWind
    ##風南
    ##パイロットAU

    「あ、」
     コックピットで機材の最終チェックを終え、出発を待っていた風信は、その声に隣を見た。
     副操縦士の南風が、手に持ったサングラスをいじっている。
    「どうした」と覗き込む。その手の中のサングラスは片方のつるが外れていた。
    「壊れたのか?」風信が聞くと、南風は気まずそうな顔をした。
    「その、昨日うっかり踏んでしまって……。でも、つるが外れただけだったので、テープで巻いてみたら直ったかと思ったんですが」
     目を近づけて、うーんと唸る。「やっぱりダメだったのかも」
    「予備は」風信が聞くと南風は、そのぅ、と言葉を濁す。「……ロッカーに」
    「おい」
     風信の顔を見て、南風の表情がわずかに固まる。
    「お前、これはカッコつけるための小道具じゃなくて、上空では必需品だぞ」
    「……はい」南風の顔が下がる。
     もちろん、もう取りに戻る時間はない。
    「あの、なんとか直します…!」
     南風は横に置いた鞄を開け、中を覗き込んだ。「絆創膏かなにかあるはず……」
     その体から焦りが見えて、風信は小さく溜息をついた。これからのフライトには、平常心を保ってもらわないと困る。
     風信は自分の鞄を開け、中から眼鏡ケースを取り出すと、なおもあわあわと鞄を探っている南風の肩を叩いた。南風が体を起こして横を見る。
    「使いなさい」
    「えっ、これは機長の……?」「予備だ」
     おずおずと南風が手を出す。「……いいんですか?」
    「ああ。安全な運行のためだ」
    「……ありがとうございます」
     南風は、焦げ茶色の革のケースを開けて、繊細な壊れ物を扱うようにそっと中のサングラスを取り出した。
    「しばらく使ってないから、曇ってたら拭いてくれ」
    「いえ」南風は恐る恐るそのサングラスをかけた。風信がちらりと横を見る。
    「よく似合ってるぞ」
     風信の笑顔に、南風の表情の強張りがとける。
    「向こうに着いたらすぐに買いに行くんだぞ」
    「はい」
    「こだわりとかあるのか?」風信が聞くと南風は首を振った。
    「いえ、特には」そう言ってから付け足す。「でも……機長がいつも使っているの、いいなぁって」
    「そうか?」風信が驚いたように眉を上げて笑う。
    「別に変わったのじゃないけどな。どこでも売ってるブランドだ。これから行く町にもあると思うぞ」
     管制から連絡が入り、風信は天井のスイッチを操作し操縦桿に手を置いた。そして前を見つめたまま言った。
    「一緒に買いにいくか」
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