第1回 ロイエドブートキャンプサインしている紙を一枚抜き取って隠したのに、気づいたら自分で紙のありかを見つけ出してまたもくもくとサインを続けた。お咎めはない。
ならば、と何度もペンの先が行き来する瓶の蓋を閉めた。一度ペンを置いて開けられるだけだった。やっぱりお咎めはない。
ワックスも何もついていない柔らかな髪を撫でても目の前で手を振っても、こっちなんて見もしない。
いつもねちねちと嫌味を言ってくる口は閉じられたまま。
真っ黒な瞳が熱心に見つめるのはつまらない用紙。
オレの胸倉を掴んで強引に前を向かせてくれ、時には焔を生み出す手は机上と大佐の頬に。
部屋にはカリカリとペンが走る音と、鳴り響く時計の秒針。
つまらない。
顔を見せに来いというからわざわざ来たのに。
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