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    yu__2020

    物書き。パラレル物。
    B級映画と軽い海外ドラマな雰囲気になったらいいな

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    yu__2020

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    新しい機能出来たらしいので早速遊んでみた。
    とはいえあげられるような物もそうそう出来ないので取り敢えずイディオの冊子版の冒頭あたり適当に抜き出してみた

    イディオ冊子版進捗イディオグロシアの睦言

    少年時代

    悪魔の棲む島
     
     文字通り、ほぼ手ぶらだ。
     アズールは自分の勉強道具や本、それに貴重品だけという荷物を手にして迎えの車に乗り込んだ。時間はぴったりで模範的な運転で、配慮でもしてくれたのか目立たない一般的な車は流れるように海辺の桟橋にたどり着いた。
     北の独特の強い風が吹く港町の小さな桟橋に案内されると、そこにはモータボートが待っていた。地元の漁師だろうか、何故か浮かない顔でアズールに目を向けて、荷物を先に船に載せてから彼の為に手を差し出した。慣れない船に乗り込んだアズールは、遠ざかる岸を振り返った。案内した男はもう既に立ち去っており、アズールは何か妙な気分になりながら、揺れる船の縁に捕まった。
     ――島、とは聞いていたが……
     アズールはギリギリに来た連絡で初めて知った、子供達の住んでいる島について載っているガイドブックを開いた。かつては一般向けに公開もされていた島で、それを依頼してきたあのリーチ家の当主が老朽化した建物ごと買ったのだという。それが十年ほど前となっていた。
    「お客さん、あの島に一体何をしに?」
     突然、名を呼ばれてアズールは顔を上げた。あのしかめっ面をしていた漁師がアズールをじっと睨んで、もう一度同じ言葉を投げかける。
     風と波の音が激しいが、海に慣れた男の声はよく通った。
    「ええ、あちらの島にいるという子供達の家庭教師として」
    「……悪いことは言わないが、もっと普通の仕事をするんだな」
    「は?」
     波と、悲鳴にも似た風の音の合間に、漁師は不器用に喋り始めた。どこか、その顔は怯えさえ見える。
    「あの島にはな、悪魔が住んでんだよ」
    「悪魔? それはそれは」
    「笑い事じゃ無い。実際になぁ、オレやオレの仲間が何人もあんたみたいに人を運んでるが……戻ってきた奴はいないんだよ。もうずっと。同じ理由だ。『家庭教師として呼ばれた』と」
     ホラー映画としてみればまるで駄目だ。とアズールはどこか考えながら、そうなのですか、と愛想良く笑った。
    「島の人が送っているだけではないですか?」
    「あの島から出る船は執事だか言う老人が運転するやつだけよ。それも、食材とかそういうのを運ぶための定期便としてな。ここは夜何も無いし、潮流も強いから夜にこっそり桟橋に、なんてのは無い。何かあるんじゃ無いかって話さ」
     風で髪がなびき、アズールは思わず頭を押さえた。島が近づいてきて、強風にあおられた海鳥が頭上をかすめていく。
    「とにかく、逃げられるならさっさと逃げた方が良いぞ」
    「はい、ご忠告ありがとうございます」
     いつものように、猫をかぶった優等生の笑みを浮かべたアズールは、島から伸びる桟橋に顔を上げた。船はゆっくりと桟橋に横付けするように進み、桟橋に止まった。
    「はあ……」
     アズールは桟橋に上がろうと荷物を手にしたまま、島をぐるりと囲う壁を見上げた。
    「まるで牢獄だな」
    「ああ、昔はここに戦から逃れた修道士達が住んでいたらしくてな」
     漁師がアズールを支えて、アズールはどうにか桟橋に立って船に乗っている漁師に礼を言った。
    「くれぐれも気をつけろよ」
    「はい」
     立ち去る船を眺めていると、金属のきしむ音がしてアズールは慌てて振り返った。一人の老人が金属の柵を開けて桟橋に降りて軽くアズールに向かって頭を下げた。
    「お待ちしておりました。アーシェングロット様。私はポールです。旦那様より坊ちゃまたちの世話を任されております。どうぞ、屋敷へご案内いたします」
     荷物を預かります、と老人はアズールの手から荷物を取り、キビキビとした動作で歩き出した。アズールは彼の後を付いて、階段を上ってきしむ柵の奥に足を踏み入れた。
     恐らく防風林の役割を果たしているのだろう、背の高い木がそびえる壁の内側に植えられ、その下には花壇がいくつも並んでいた。手入れされているのは一目瞭然だったが、強い風にあおられて花は見ているそばからいくつも散って花びらが風に飛ばされていった。
    「ここはかなり強い風が吹く場所です。たまに波が壁を越えてくることもあるので高潮の日は外に出ることはお勧めしません」
    「重々承知しました。しかし、そんな過酷な環境にしては、随分綺麗な庭ですね」
    「ええ、仕事の合間に手入れをしていますので」
    「そうでしたか」
     抑揚の無い老人の声に一瞬生気が宿ったような気がして、アズールは何か言うだろうかと待ってみたが、それきり老人は黙って庭を通って奥に見える屋敷へと歩き続け、玄関の前に立った。
    「さて、アーシェングロット様。くれぐれもお気を付けてください」
    「は?」
     その言葉はこれで二度目だ。アズールは思わず老人を見つめたが、彼の目には何の感情の起伏も読み取れず、真意を聞こうとしたアズールを置いて玄関のドアを開けて中に入っていった。
    「……なんなんだ一体」
     思わず視線をあちこちに向け、アズールはぼそっと呟き、風が強く吹いてきて慌てて中に入った。
    「ふう」
     風の音は少し弱まり、アズールは玄関ホールを改めて見渡した。目の前には階段、そして左右に伸びた廊下。調度も流石に品の良い物が置かれていて、手入れも行き届いていた。庭で育てていた花が飾られているホールの机に目をやっていると、老人がふらりと出てきて頭を下げた。
    「どうぞ、荷物はお部屋に先に置いておきますので、まずは広間の方でおくつろぎください」
    「ああ、ありがとうございます」
     老人に促されてホールから廊下を通って広間に入ったアズールは、並べられたソファに座った。窓の外は薄暗くなってきており、既に夕方を過ぎているようだ。カーテンを閉めながら、ポールはまるで何度もやってきた、と言うようによどみなく話を続けた。
    「お食事は十八時からとなっています。お勉強の内容についてはお二人から聞いてください」
    「あの、それでお父上のミスタ・リーチはどちらに?」
    「旦那様は仕事でお忙しいため、私に一任されております」
    「……では、ミスタ・リーチはお二人の事についてあまり把握はされていない、という事でしょうか」
    「ご報告は常に滞りなく行っております。ですので全て把握されております。ご心配なく」
     抑揚の無い声でそれだけ言うと、彼は失礼いたします、と言って外に出ていった。
     一人残されたアズールは、ソファに座ったまま考え込んだ。
     ――嫌な予感がするな
     どうにも首元がぞわぞわする感覚が先ほどから止まらず、アズールはソファから立ち上がってそわそわと落ち着かなく動き出した。部屋の中にはいくつもの剥製が並べられていて、それもおかしな事に、よく置物として並べられている鹿などではないのだ。
    「これは……全部海鳥だな」
     近づいてじっと見つめたアズールは、思わず首をかしげた。その剥製は、どう見ても素人が作ったようなものでガラス玉の目も本来ならば瞳として作られているのが何か別の物を使っているようだった。近づいて見て、アズールは思わず呟いた。
    「ビー玉かこれ?」

    「そうだよ」
    「よくわかりますね」
     
     突然背後から聞こえてきた声に、アズールは内心の動揺を見せないようにゆっくりと、わざと振り返った。
     二人の、そっくりな見た目の少年達が広間の入り口に立ってアズールを見て笑っていた。
     これが言っていた双子か、とアズールは思いながら二人をそれとなく見比べ、微笑んだ。
    「初めまして。僕はアズールと言います。二人の名前を聞いても宜しいですか?」
     問いかけに、二人は顔を見合わせてひそひそと何語かを短く呟き、片方が頷いてアズールに一歩近づいた。
    「僕はジェイド。こっちがフロイドです。まあ、見分けられればそう呼んでください」
    「努力しますよ。ジェイド、フロイド」
     普通の人間のように、と言っていた双子の父親の言葉を思い返し、アズールは手を伸ばした。
    「……Was?」
     警戒するフロイドに、アズールは微笑みかけ
    「握手ですよ。今までの先生もされてきたでしょう?」
     問いかけに、二人は顔を見合わせてからジェイドがそろりと手を伸ばして来た。指先をつ、とアズールの手に触れさせ、そろりとアズールの顔を見上げてくる。その動きがどこか相手の出方を見ているようで、アズールは微動だにしないように待った。
     ――……これは
     フロイドの警戒する様もそうだが、アズールは妙に引っかかりを覚えた。
     ジェイドはアズールの手をゆっくり掴み、アズールは怯えさせないように彼の手を緩く握った。
    「よろしく、ジェイド」
     自分の声や見た目がそれなりに好感度を左右することはアズールは理解していた。ここはある程度彼らに敵意が無いことをわかりやすく示した方がいい気がした。アズールは、穏やかに聞こえるような声音と、笑みを作ってジェイドを見つめた。
    「あ……」
     何か思うところがあったのか、彼は先ほどまで浮かべていた薄ら笑いを引っ込め、こくっと頷いてアズールの手から自分の手を引き抜いて、そわそわとしながら後ろに下がった。
    「ん」
     ジェイドの様子に、取り敢えずは大丈夫と判断したのか、フロイドもぞんざいながらアズールに向かって手を出してきた。
    「よろしく、フロイド」
     フロイドの手を握り返し、親愛のつもりで笑みを浮かべると、フロイドはぱっと手を離して顔を逸らした。
     ――取り敢えず、気難しいにしても今日はこんな所か
     アズールは立ち上がり、ふと思い出して剥製の方に目をやった。
    「そういえば、この剥製の目、ビー玉なのは……」
    「……僕達が、作りましたから」
    「本当に? それはそれは」
     呟いたジェイドの言葉に目を丸くし、アズールは改めて剥製を手に取ってじっと見つめた。子供が作ったのであれば、若干処理が甘いのも仕方が無いだろう。むしろ、この歳でここまでの物が作られるのは、かなり賢い子供達と言う事になる。
    「……なんか、文句ある?」
     ぶすっと小さく呟いたフロイドに、アズールははい? と思わず首をかしげ
    「いえ、確かに素人が作っただろうとは思いましたが、この歳でここまできちんと形を取ることが出来るのは中々よく観察しているなと」
     思わずこぼした感想に、二人は、え? と声を上げてアズールを見上げた。
    「……お、怒らない、んですか?」
     ジェイドは恐る恐る問いかけ、アズールは怒る? ともう一度首をかしげた。
    「剥製は立派な学術的な資料ですよ。まあ、トロフィーのような所は確かにありますが……。生物の身体についての知識、それに剥製にした動物の知識が無ければ、きちんとした、野生のときのようなポーズを取らせる事は出来ませんからね」
     アズールは海鳥の剥製の一つを手に取り
    「きちんとした眼球を使えば、これはもっとそれらしくなりますね。羽根の部分はもう少し艶を出してみればこの毛羽立ちも落ち着きますし……」
    「pror……」
     ぐっとジェイドがアズールのシャツを掴んで、興奮したようにアズールを見上げていた。聞き慣れない発音の言葉に思わず顔を近づけると、彼は言い直して続けた。
    「はい?」
    「先生は、その、作ったことがあるんですか」
    「剥製を? ええ、学術用の仮剥製ですが。バイトというか、手伝いをしまして」
     何しろ奨学金を貰っても彼の場合学費が掛かった。それだけでは無く将来に事業をやりたいと思っていた彼にとっては資金は多ければ多いほど良い。汚れ仕事のような物は稼げるからアズールからすれば願ってもないものだった。おかげで教授からの覚えも良くなった。まさに一石二鳥だ。
     少年達は勿論そんなアズールの事情など知らないのだが、彼らはどういうことか、ぱっと先ほどの警戒感が一気に霧散し、アズールに近づいてきた。
    「え、え、じゃあ先生俺達のことおかしいって叩かない?」
    「? 何故何もしていないのに叩くんです?」
     そんな馬鹿げたことを、と肩をすくめるアズールを、フロイドはぱっと笑みを浮かべてアズールに飛びついた。
    「お、おおっ!?」
    「えへへー、先生話分かるじゃん」
    「は、はあ?そう、ですか。えーっと」
     アズールはじっと飛びついてきた方の少年の目を見つめて呟いた。
    「フロイド?」
    「あは、正解ー!すげーね。もう分かるんだぁ」
    「あ、ああ。二人とも、目の色が左右で少し違いますよね。それが丁度左右対称ですし、何よりフロイドの目は二重で少し目尻が下がっていますね」
     アズールはまっすぐ見上げてくるフロイドの目を見つめ、金に近い目と、濃い緑色をしている目を見比べた。陳腐なたとえになるが、少年のまっすぐとした目も相まって、これは確かに宝石と表現してもいいな、とアズールは思わず表情を緩めて、顔に掛かるフロイドの髪を柔らかく横に梳いた。
    「変わっていて綺麗ですね」
     ジェイととフロイドは、お互いの袖を引っ張り合って困惑したような顔をしてから、そろりとアズールの顔を見ようとつま先立ちした。
    「先生の、目も……僕は良いと思います。晴れたときの空みたいで」
     ジェイドは、そっとアズールの服の裾を掴み、じっとアズールを見上げて言った。腰をかがめてそれはどうも、とそろりとアズールはジェイドの頭に手を置いた。彼は一瞬びくっと身体を震わせたが、すぐに緊張をほどいて目を細めた。
     ――やはり……。
     アズールは手を叩いて
    「さて、僕は一度部屋に戻ります。まあ、この感じだと僕が教えるようなことはない気もしますが……。念のため後ほど二人の学習の進みについて教えください。できるだけ努力はしますので」
    「ん、わかった」
    「わかりました」
     二人はそう言って、ふと思いついたのかアズールの手をそれぞれ手に取って
    「どうせだから先生の部屋案内してあげる」
    「はい、じいやが荷物を置いているのを見たので。こっちです」
     と広間のドアを開けてアズールを引っ張って廊下に出た。二人に引っ張られたまま歩いていると、角を曲がってじいや、と二人が読んでいた執事と鉢合わせた。
    「あ、えーっと」
     アズールが何か言おうとすると、老人は一瞬驚いたような顔で双子の方に目をやったがすぐに元に戻した。
    「じいや、先生の部屋はこっちであっていますよね」
    「はい、東棟の四番目、青の間ですね」
    「やっぱり。先生こっちー。一応それなりに部屋もあるからわかんなかったら俺らが教えてあげる」
    「ああ、それは助かります」
     上機嫌な双子の言葉に頷くと、アズールは用意された部屋に入っていった。
     執事はしばらくその場に立っていたが、やがてふっと息を吐いて歩き出した。
    「じいや」
     ジェイドの声に、彼は立ち止まって頭を下げる。
    「なんでございましょう」
     ジェイドはアズールの部屋のドアを閉めてから、老人を見上げて微笑み
    「先生の食事はどうなっていますか?」
    「念のため準備して置いてあります」
    「助かります。食堂には僕達が案内しますので用意をお願いします」
    「……は。ではあちらの方の荷物の処分は」
     老人の言葉に、ジェイドは首を振り
    「不要です。ええ、今のところは」
    「かしこまりました」
     時には珍しいことも起こるのだろう。老人は深く追求することはせずに、恭しく頭を下げて仕事に戻った。


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    ショタイドとアズの絡み増やしたくて実際増やしたら下書きが倍に膨れ上がった
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