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    あお(すっぱいまんはうまい)

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    7月オンリー用の小説の出だし、頑張れ!という自分で自分を鼓舞するかんじです!
    もちろんR18ドタバタエロギャグを目指します!

    #ハイノイ

    ようこそ!AA探偵事務所へオーブ首都、オロファト。片側二車線、計四車線大動脈が走る大通り。その脇からそれぞれ細かく伸びる道路のさらに裏手側。ひっそりと隠れるように佇むようにそのカフェは、あった。近隣の会社員達の密かな憩いの場となっているそこは、マスターが入れるコーヒーの味やモーニングのセットが美味しいなど良い評判が絶えない。行列ができて連日大盛況でもおかしくないが、この店が開店してこの方、行列ができるいるところは見たことがなかった。オーナーの意向らしく、この店に関する口コミは全て削除されている。よく知らない者がいたのなら美味しいか美味しくないかよく分からないカフェ。一見が入ることはほぼなく、知っている人だけに口談で良い所だと、伝わっている、そんな場所。お客自身も、限られた人の静かな雰囲気が流れるこの店が好きなので、積極的に店の名前を、よく分からない知人に知らせることはない。むしろ商談や大切な者と重要な話をする際に使う場所になっている。それゆえか、そのカフェの二階には探偵事務所があった。探偵事務所と言ってもHPで予約して入れるわけではない。探偵の気に入った案件のみを扱うため、商売っ気の欠片もない。特定の人以外、マスターへ依頼内容を確認し、了承が得られれば、喫茶店のカウンター横の扉からその事務所へ続く階段へ登れる仕組みだ。

    カツン、コツン

    滅多になることのない階段を登る音が助手兼事務員の耳に届いた。彼がこの仕事について半年、その間にきた客は片手で数えられるほどしかきていない。貴重な客がどうやら現れたようだ。彼は居住まいを正す。お茶の準備、ヨシ。部屋の掃除、ヨシ。チラと後ろを振り返ればブラックの重厚な机に探偵がいつもと同じように無表情でコーヒーを飲んでいる。その目は間断なくデスクトップの画面を走る文字を追っているので依頼人に気付いている様子はない。人形かと疑うほどに整った顔(かんばせ)が無表情でいるのは一種恐怖を覚えるが残念ながらこれが探偵の通常運転だ。

    (探偵、ヨシ!)

    カランカランと軽い鐘の音の音と共に扉が開かれる。マスターのお眼鏡に適った依頼人。だが実際にその依頼が受けられるか否か、全ては探偵ーアルバート・ハインラインーの気分次第だ。だから、もしかしたらほんの数時間の付き合いになるかもしれない依頼人を、助手ーアーノルド・ノイマンーは精一杯の笑顔で受け入れた。

    「ようこそ!AA探偵事務所へ!」

    ※※※

    「あんまり長く持たないと思ったけど一時間も持たなかったかーー」

    ハインラインの目の前で机に突っ伏しながらアーノルド・ノイマンはぼやく。貴重な依頼人は三十分も持たずにアルバート・ハインラインに叩き出された。相続関係の話だったのだが、一回聞いただけで彼がくだらない、と一蹴したためだ。気合いを入れて淹れたコーヒーはまだ目の前で湯気をたてている。非常に勿体無い。がっくりと肩を落としたノイマンの様子を気にする風もなく、ハインラインはコンコンと机を叩くと「コーヒー」と一言短く呟いた。ノイマンはもちろんーー無視した。ぷいっと彼から顔をそらす。

    探偵事務所の中はその入り口の扉を開けるとまず目に入るように開放感ある大きな窓が設置されている。天井には質の良い照明。入り口から入って左手側、壁を背に探偵の定位置である机が鎮座されていた。窓を背に部屋の中央に探偵とは別の来客用の机。その長編の脇に黒革のソファがそれぞれ依頼人と探偵が向かい合えるように置かれている。残念ながら今日この黒革のソファに座ったのはノイマンだけであり、ハインラインの目の前には中央縦長に伸びた机とその上に二つ置かれたコーヒーカップ。さらに机に頬をベターと貼り付けている助手が否が応でも入ってくる。しかしそんなこと気にしないのが彼だ。

    「Mr.ノイマン。コーヒーを入れてくれ」
    「さっきお客に入れた余りだったらたんまりありますよ、所長」
    「………私は君の雇用主のはずだが?」
    「うぐっ………」

    痛いところをつかれて呻く。淹れさしではなく、新しいのをわざわざ淹れてくれと言われて断ったらこうだ。机に突っ伏したまま、背けていた顔を雇用主に向けて最後の抵抗を試みる。

    「まだ、さっき淹れたのたくさんあるんですけど…」

    その言葉に僅かに片眉をあげたハインラインにノイマンは早々に降参を示すように上半身を起こし、両手をあげた。一見するとわかりにくいが、半年も一緒にいればほんの少しの表情の違いで感情の機微くらい把握できる。

    「分かりました、淹れます淹れますよ。全く…こんな立地の良い場所で依頼人もほぼいない状況で経営が成り立っているのが不思議でこのまま雇ってもらえるか不安で仕方がない助手に対して容赦ないですね、所長」
    「君が私の気分を害さなければこのまま雇えると約束しよう、Mr.ノイマン」
    「どうだが……コーヒーだってそこらの安売りではなくこだわっているようですし…。というか探偵と言えば普通は繁華街の中の雑居ビルの一室とか。そんな感じかと思うのにこんな……こんな優雅な……経費いくらかかってるんですか?」
    「さぁ?」
    「さぁ?さぁって……え!?家賃だってばかにならないはずなのに!?経営大丈夫なんですか?……本当にいくらか把握していないんですか、ここ」

    大通りから一本路地裏に入ったといっても首都の大通りのすぐ近く。平米単価を想像するだけで恐ろしい。そんなノイマンにハインラインはこともなげに告げた。

    「家賃??ここは私のビルですが……」
    「………な、ん……」
    「このビルのオーナーは私です」
    「〜〜〜〜っ!!!」

    通りで商売っ気の欠片もないわけだ。納得すると同時にアーノルド・ノイマンは頭の中にここで雇われる前のことを思い出す。とある事情で軍を除隊し、様々な業種を渡り歩く日々。どの仕事も残念ながら長続きせず困窮していたところ、軍時代のかつての上官の伝手でここに雇ってもらえた。家賃、通信費、交通費。常に空腹を訴える腹、何回も着すぎて擦り切れたスーツ。辛かった日々を思い出し、ノイマンは思わず力を込めて唸る。

    「ブルジョワがっ!!資本主義が憎いっっっ!!」
    「Mr.ノイマン。なんとでも言って頂いてかまいませんが貴方は今その憎いブルジョワに雇われているのです。コーヒー、これで三回目です」
    「はい分かりました、今すぐに」

    流石に三回も言わせてしまえばそろそろ危険だ。ノイマンはソファから立ち上がり、新しいコーヒーを淹れに給湯室へと向かった。
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    あお(すっぱいまんはうまい)

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    ようこそ!AA探偵事務所へオーブ首都、オロファト。片側二車線、計四車線大動脈が走る大通り。その脇からそれぞれ細かく伸びる道路のさらに裏手側。ひっそりと隠れるように佇むようにそのカフェは、あった。近隣の会社員達の密かな憩いの場となっているそこは、マスターが入れるコーヒーの味やモーニングのセットが美味しいなど良い評判が絶えない。行列ができて連日大盛況でもおかしくないが、この店が開店してこの方、行列ができるいるところは見たことがなかった。オーナーの意向らしく、この店に関する口コミは全て削除されている。よく知らない者がいたのなら美味しいか美味しくないかよく分からないカフェ。一見が入ることはほぼなく、知っている人だけに口談で良い所だと、伝わっている、そんな場所。お客自身も、限られた人の静かな雰囲気が流れるこの店が好きなので、積極的に店の名前を、よく分からない知人に知らせることはない。むしろ商談や大切な者と重要な話をする際に使う場所になっている。それゆえか、そのカフェの二階には探偵事務所があった。探偵事務所と言ってもHPで予約して入れるわけではない。探偵の気に入った案件のみを扱うため、商売っ気の欠片もない。特定の人以外、マスターへ依頼内容を確認し、了承が得られれば、喫茶店のカウンター横の扉からその事務所へ続く階段へ登れる仕組みだ。
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