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    kikhimeqmoq

    はらす

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    桐智 2025/01/24 桐秋誕
    桐秋高三、智将高二の桐秋誕です。まだ付き合ってない。

    #桐智

    予想外のおくりもの「桐ちゃん」
    「ん?」
    「おめっさん」
    「わお、寺っち愛してる♡」
    ばーか、という明るい含み笑いと、ごそごそという布団に潜り込む音が同時に聞こえた。直後、部屋はすごく静かになった。俺たちは昼間、とんでもなくうるさい。だから、寺門が先に寝てしまうと、昼とのギャップで部屋は無音のようになる。寺門は顔に似合わず赤ん坊みたいに早く寝るのに、今日は「誕生日おめでとう」を言うために、日付変更線まで起きていたらしい。「良え奴」っていうのはこういう奴のことを言うんだろう。大事なツレだ。マジで愛してる、って卒業式には必ず言うと決めている。
    日が変わると同時に、メッセージをくれる奴らもいる。みんな良え奴や。ボーイズ時代の仲間、クラスのツレ、なんとなく仲良くしている生徒会の連中。野球部の中では、こういうメッセージを送らないことになっている。その代わり、朝になると「おはようございます」と言わず「おめでとうございます」と挨拶してもらえる。三年生だけの特権だが。
    糸目の狐が「ありがとう」と手を挙げているスタンプを返していく。ボケたメッセージにはつっこみを、小ボケのメッセージには大ボケも添えて送る。愉快な奴らに顔を緩ませながらメッセージを返していくうちに、予想外の送信者に気がついた。
    「桐島さん、今日、誕生日ですよね?」
    一行だけ送られてきた事務的なメッセージは他校のキャッチャーだった。嫌な気持ちはなかった。いや、むしろ、少し期待していたところはあるが、それを認めないようにしていた自分がいた。
    夏の大会が終わった時に連絡先を交換した。野球のこと、進路のこと、どうでもいいネタを送り合ううちに、外で会うようにもなった。最初から薄々感じてはいたが、こいつは俺と性根が似ている。それでいて一筋縄ではいかない洞察力があり、話していても面白かった。
    俺と同じくらい、こいつも俺のことを良い奴だと思っていてほしかったが、期待は裏切られるものだ。落ち込むくらいなら最初から期待しない方がいい。各種の方法で自分に暗示にかけ、当日にはすっかり忘れていたが、心の奥では、俺はこいつから誕生日祝いがほしかったんだろう。
    ほしかったメッセージが予想外に送られてきたことに動揺し、考える余裕もなく、俺は脳直で返事をした。
    「違うで」
    「えっ?」
    要の方も予想外だったんだろう。俺の嘘回答に動揺したのか、要は思ったままを返信してきた。熟考してから返信する要にしては珍しい。
    「前に一月二十四日って言ってましたよね?今日、お祝いのメッセージを送ったら駄目なやつですか?」
    お、祝ってくれるつもりやったんや。
    自然とにやにやとした顔になる。やばい、寺門が寝ていて助かった。こんな緩んだ顔を見せられるわけがない。
    にやにやと要のメッセージを眺めていると、「お祝いの~」|の部分は送信取り消しとなって消えていった。
    恥ずかしかったんか?面白いやつ。
    「なに?誕生日が分かったら、祝ってくれんの?」
    「まあ、分かったらですけど」
    「本当の誕生日を教えたるから、来週会おうや」
    要からの返信はなかった。
    本当の誕生日、と中坊みたいなワードを書いてしまったことに恥ずかしさを覚え、自分も送信取り消しにしたくなったが、それでは「来週会おう」も消えてしまう。どうしよう。誘いたくない、と思われるのは、ちょっともったいない。はあ、それにしても「本当の誕生日」なんていう厨二ワードは宇部に食わせて消してしまいたい。
    「分かりました」
    思いがけず素直な返事がきて、ほっとする。俺のつまらないボケのせいで、遊びのチャンスを台無しにしたかと死にたくなっていたから。自分がスベッたせいで誕生日に死にたくはない。
    ――というか、俺はそんなにも要と出かけたかったんか?
    知らぬふりをしていた己の願望に呆然とする。いや、ちょっと、これ、どないしようかな。自分自身に戸惑う俺の手の中で、ブブッとスマホが震えた。新しいメッセージだ。
    今度は誰や。なんや要か。続きがあるんか。嬉しいやんけ。
    「本当の誕生日とかいらないんで、普通に誕生日を教えてください。では、また週末に」
    なんやねん!ボケにツッコむんやったら最初からツッコめ!笑いはスピードやぞ!今度教えたる!覚えとけ!
    要に聞こえない文句を呟きながら、俺は糸目の狐のしているスタンプを選ぶ。スタンプを送信しながら、週末に何を着て要に会おうか考え始めていた。



    俺が人生で初めてキスをしたのは、その週末のこと。
    それは予想外の贈り物だった。



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    kikhimeqmoq

    DONEチヒ隊 2025/01/19 チヒロと巻墨

    61話、カフェでランチを食べた後に京都へ向かうチヒロと巻墨の小話。63話で巻墨の名前が判明して嬉しくて書いた。チヒ隊かどうかは微妙な感じで特に何も起こらない。
    豪快に京都へ「車で行くんですか?電車の方が早くないですか」
    店を出てさっそく駅に向かおうとした千紘を巻墨は引き止め、車で移動すると告げた。
    「車の方が安全だろ。装備もしてあるしな」
    隊長は得意げに説明した。斜めに切り上がった口端が車への自信を表していた。可愛らしいな、と千紘は感じたが黙っていた。それより装備ってなんだ?
    「装備とら?」
    「武器や小道具が車に隠してあるんですよ」
    炭がすかさず説明した。
    「へえ」
    さすが忍びだ、と千紘は感心した。その評価が伝わったのか、隊長は満足げに頷いた。こくり。
    「じゃあ、車を出しますから、ちょっと場所を開けてください」
    炭の依頼に千紘は振り返った。駐車場はどこだろう。きょろきょろと周囲を見渡す千紘の肩を、杢は長い腕で掴んだ。最初は肩を強く掴まれたが、すぐに柔らかく抱きかかえられ、店の脇へそっと移動させられる。杢の腕も身体も熊のように大きく、肩を抱かれただけなのに、千紘は全身を包まれた気持ちになった。なんだか温かい。杢と千紘は、歳はさほど離れていないと聞いた。実際、杢は隊長や炭よりも若者らしい軽い発言が多い。しかし、なんとはなしに信頼したくなる安定感が杢にはあった。身体の大きさだけではない。ほどよい雑さと丁寧さのバランスが好ましあのだと思う。
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    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
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