お題「愛」ダブルのベッドから身体を起こす。
鏡には、まだどこか眠たげな顔が映っていた。鏡の中の自分がにい、と口角をあげる。
しかし、顔は微笑んでいても、朝の冷えた空気がこわばった身体に染みた。
良くない目覚めだ。
アラスターがいた時は、珈琲の香りですっきりと目が冷めていたのに。
しかし一方で、珈琲の香りがしない生活にも慣れてきた。
ーーーアラスターがいなくなって7年近くになる。
生前も私を一人遺していったアラスターは、また私を置いていなくなってしまった。
一人にしては大きい部屋を見渡す。
しばらく聴いていなくて、すっかりねじの固くなったラジオのダイヤルを回す。
聴こえてきた天気予報によれば、今日は地獄でも珍しいほどの寒さらしい。
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