てまりばな その狐がふらりと訪ねて来たのは秋空が高くなった季節のころ。熨斗のかけられた酒瓶を抱え、銀時はやけに上機嫌だった。
たまにテメーのツラでも見ておこうかと思ってさ。白と黒の着物を着た九尾の狐は突然土方の塒にやってきて、ひとばん、酒を飲んでいった。
よく晴れた良い月の夜のこと。中天に浮かぶまあるい月と、アケビやナツメやヤマメを肴にふたりで酒を酌み交わした。話すことは他愛もないことばかり。何処そこの山の主が隣山の狒々と掴み合いの喧嘩をしたとか、この春、小物妖怪の小競り合いで山間の桜の園が荒らされたとか、麓の里の祭に忍び込んで齧った鼈甲飴が美味かったとか。
銀時はよく喋り、よく飲み、少しだけうたた寝をして明け方に帰っていった。
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