初めてその女を見た時、塑像かと思った。長い手足、色白の肌、体を繭のように包み込む桜色の髪。重たく垂れ込む曇天が空気を甘く湿らせていく。やがて空がその役割を思い出したかのように、ひとつ、またひとつと雫を落とし始めた。次第に重たくなっていく水音にも怯まず、女はぼんやりと立ち続けている。自分はと言えばぬくぬくと暖かい部屋の中から女を見下ろしていて、なんとも言いようのない罪悪感を覚えている。女がほとんど裸と言っていいような格好だったせいもあるだろうし、季節が冬だということもあるだろう。どちらも自分のせいではないけれど、窓の向こう側とこちら側とで世界はくっきりと隔絶していて、こちら側は守られた暖かな世界だということが引け目を感じさせた。
「ソフィ、どうしました」
この暖かで柔らかな世界。その象徴たる白き魔術師の声に、少女はゆっくりと振り返る。