シンプル黒の組織が壊滅して、僕は連絡役の任を解かれた。肩の力が抜けるような安堵と同時に、ひどく静かな日々がやってきた。
家に帰って布団で眠れる。休日には洗濯物を外に干す。ベランダに揺れる洗濯物を見ていると、ああ、普通の暮らしってこういうことだったんだなと気付く。
カレンダーに赤丸をつけて「休み」と書き込むと、変に胸が空いた。こんなにも、自分には時間があったのかと驚く。
それでも――ときどき思い返す。
あの人の隣で過ごした、濃くて長い日々を。
最初の頃の降谷さんは、とても怖かった。
ニコリともしない。指示は端的で的確、こちらの動きもすべて見透かされているようで。自分はただ歯車のひとつにすぎないんだと、何度も思わされた。
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