2/14その日、空座第一高校はどこかそわそわした雰囲気が漂っていた。
「あー、わり」
それは雨竜も例外ではなく、いつもより遅くなってしまった登校に、速足で下足室に入ると、途端にそんな声が耳に入ってきた。聞き慣れたその声に、思わず足を止める。室内に入ったといえど開けっ放しのドアからは冷たい風が入ってきていて、マフラーを口元まであげた。
「今年はそーいうのナシ」
「えっ」
声の主は、一護と啓吾だ。
なんとなく出ていくのが憚られてそっと様子を伺えば、どうやら啓吾が買ってきたチョコレートを一護に渡そうとしていたところだったらしい。コンビニでも売っている個包装になっているよくあるチョコだ。
「別にチョコいっこくらいいーだろ。他のやつにやれば」
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