最悪だ。よりにもよって、バスの後部座席しか空いていない。
これが一人だったらルンルン気分で三人掛けのシートに座ったかもしれないが、既に先客がいる。それも凪と玲王が。
「…………」
「…………」
凪の横に座る。その奥の窓側には玲王がいた。いつもの二人なら三人掛けのシートなんて選ばない。だから、何らかの理由でバスに乗り込むのが遅れたのだろう。だとしても最悪だった。凪からの視線が痛い。
「な、なんでしょう……」
「別に」
ついつい敬語になる。髪を毟られた恐怖からか、頭頂部の毛がぞわぞわと逆立った。小さく体を丸めながら荷物を足元に置く。
『全員、揃いましたね? それでは出発します』
アナウンスが流れる。やがて俺たち、日本代表選手を乗せたバスが走り出した。すぐに見慣れた風景が遠ざかっていく。
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