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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【デート】

    先週の「花」を少し引きずっているようなお話……

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #腐女子向け

    【飯P】なにをすれば 駅前広場のベンチに腰掛けて、僕らは行き交う人々を眺めていた。晩春のそよ風は間延びして、午後の雑踏を殊更に穏やかなものに見せている。
     「いっぱい買っちゃいましたね」
    「花壇も鉢もたくさんある、まだ足りないくらいだ」
     僕らの足元には、デンデに頼まれた花の苗と球根、それから種が、手提げ袋四つ分もある。見ている内にあれもこれもと手が伸びて、店を梯子し、思った以上に時間もかかってしまった。
     メモにあった百日草は、ずいぶん迷った。「色は、二人の好きなものを」と書き添えてあったが、百日草の種だけで一つの棚が埋まっているほど、実にさまざまな色のものが置かれていた。
     「これはどうだ?」
     ピッコロさんが指したのは、濃いオレンジ、ピンク、黄色、白の花の写真の載ったパッケージだった。
     「ちょっと……派手じゃないですか、神殿には」
    「派手な方が、お前もデンデも喜ぶだろう?」
     神殿に住むデンデだけでなく、僕の目線まで気にしてくれている……くすぐったくも嬉しく、結局その「はなまつり」と名付けられた種を二袋、購入した。
     「手伝ってもらえて助かった。苗を売る店も、一人では分からなかったし……」
    「お役に立ててよかったです」
     買った水とコーヒーを、僕らはそれぞれに飲む。街中にピッコロさんと並んでいるのは、なんだか不思議な気がした。
     広場には、こでまりの木が等間隔に植えられ、小さな白い花が、まさに手鞠のごとく集まって咲いていた。駅へ向かう男女は、肩を寄せ合って、あるいは手を繋いで、街路樹など気にも留めず通りすぎていく。
     ビルに掲げられた街頭ビジョンに、旅行会社の広告が映し出されている。眩しく白い砂浜、涼しげな高原、テーマパークに、花火大会……これからの季節のデートスポットだ。
     「行くか」
    「そうですね。デンデに早く見せなきゃ」
     ピッコロさんが立ち上がるので、僕もそれに倣う。苗と球根の入った手提げ袋は、今日が充実していたことを示すように重かった。

     買ってきたものを渡すと、デンデは予想以上に喜んだのち「お茶を淹れる」と奥に引っ込んでしまった。僕は手持ち無沙汰になり、地上を見下ろしているピッコロさんに並ぶ。
     「疲れたんじゃないですか、人混みで」
    「少しな」
     晴れた空は色を濃くして、季節が変わりかけていると感じさせる。街頭ビジョンに映し出されていた、夏のリゾート地を思い出した。あんなに華やかな場所ではなく、ホームセンターと花屋を見て回っただけだ。それでも、神殿や山野ではないところでピッコロさんに会うのは、なんとも気分の高揚する時間だった。
     「……ピッコロさん」
    「なんだ?」
    「今度は……おつかいじゃなくて、僕と……デート、してくれませんか」
     漸く絞り出した言葉だった。目が合ったピッコロさんが口を開きかけて、閉ざす。なかなか返事がなく、瞳から感情が読み取れない。
     沈黙に耐えかね、言葉を重ねようとしたその時、ピッコロさんが戸惑うように口を開いた。
     「そんなことを言われると、困る」
     困る……僕にとっては新鮮で楽しく、浮き足立つようなおつかいだったが、ピッコロさんにとっては、違ったのだろうか。落胆と脱力が、同時に脚を這い上がりはじめる。
     途端、ピッコロさんは至極落ち着き払って、言った。
     「おれは今日いちにち、そのつもりだったんだが……これ以上、なにをすればいいんだ?」
     言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
     僕は顔を上げ、ピッコロさんを見つめる。涼しげな目が、確かに困ったように、午後おそい陽射しに揺れていた。僕は笑顔を抑えきれず、思わずピッコロさんの手をとる。
     「デートの終わりには、今日は楽しかったねって、こうします」
     ちょっと伸び上がって、頬に軽く口付ける。一瞬、驚いたようだったが、微笑んで同じように返してくれた。
     「お買い物、楽しかったですか?」
    「ああ、お前がいたからな」
     何か言いたかったが、湧き上がる幸福感で上手く言葉が出なかった。
     今日は遅くなってしまったから、買ってきた苗や種を植えるのは明日だろう。遅霜の不安もなく、植え付けにはいちばん良い時期だ。
     二人で選んだ「はなまつり」を植えるのが楽しみで、僕はピッコロさんの手をぎゅっと握りしめた。
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    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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