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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【アイス】

    ヤバ🍚路線と迷いましたが情緒に振りました。ヤバ🍚は上手な方がいるからそっちで浴びるぜ。

    #飯P
    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】ラムネのバッグを見なかった 悟飯の小さな手が差し出すアイスキャンディは、表面が既に溶けはじめている。
     「ラムネと、レモンです。どっちがいい?」
    「……悟飯、おれに食事は必要ない」
    「食事じゃなくて、嗜好品ですよ。風味のついた水です」
     棒の先から、溶けたアイスがひとしずく滴って、青々とした芝に染み込む。
     悟飯はよくこうして、菓子だの、果物だのを二つ持って訪ねてくる。ピッコロは、水しか要らないと何度も説明しているのだが。
     「持って帰れ」
    「溶けちゃいますよ」
    「だったらお前が二つ食べろ、いつものように」
    「一本食べてる間に、溶けちゃいます」
     日陰も暑い、夏の午後だった。溶けかけたアイスと、更に突きつける悟飯に根負けするように、仕方なくピッコロはアイスを受け取った。薄黄色のアイスから垂れた水が手を汚し、ピッコロは眉根を寄せる。
     「レモンが好き? よかった、僕ほんとうはラムネがよかったんです!」
     ピッコロに好きも嫌いもなかったが、悟飯は上機嫌だ。今度はピッコロの手を引いて草の地面へ座らせ、隣に自分も座り込む。
     枝葉の影が、静かに地面を塗りつぶしていた。蝉の声はどこか遠く、雲の塊はゆっくりと流れていく。口に入れたアイスの冷たさに毒気を抜かれ、ピッコロは何かを言おうという気もなくなる。
     確かにこれは、風味のついた水と呼べるかもしれない。それも、特別に冷たく、ほんの少しだけ身体を冷やしてくれる水だ。水で生きるピッコロにとっては、食べ物に手を伸ばす数少ない理由になりうる味だった。
     並んで無言で齧る内、アイスはあっという間になくなる。手の中に残った棒の、かすかな木の香り。
     「……これはなんだ?」
    「あっ、当たりだ!」
     悟飯が目を輝かせ、握っていたアイスのパッケージを広げた。
     「すごい、僕、一度も当たったことないです。その当たり棒を送るとね、このラムネのバッグと交換してもらえるんですよ! いいなぁ!」
     パッケージには、手提げの小さなバッグの写真があった。水色の透明なビニールに、白と青で気泡の模様が入っている。悟飯は「あたり」と印字された棒と、パッケージのバッグを見比べて、すごいすごいと目を輝かせている。
     「お前にやる」
    「えっ……いいんですか」
    「おれは荷物は持たない、必要ない」
     悟飯は立ち上がって、棒を手に喜んでいる。大事そうに当たり棒をためつすがめつする様は、我知らずピッコロの心を和ませた。

     神殿の前庭で、悟飯は一人、アイスを齧っている。ハイスクールであったことを話しに来たのに、話すそばからアイスが溶けはじめたのだ。身体はほとんど大人になったのに、なんとも落ち着きがない。
     陽射しは強いが、風は心地よい。見るともなしに見ていたピッコロが、ふと思い出して口を開いた。
     「……そういえば、あのラムネのバッグ。一度も見なかったな」
     アイスの最後の一口を飲み込んで、悟飯は不思議そうに顔を上げた。
     「え? だって僕、交換してませんし」
    「なんだと? あんなに喜んでいたのに、無駄にしたのか」
    「違いますよ」
     悟飯は笑って、肩掛けのスクールバッグから長財布を取り出す。布に包まれた何かを摘まみ出し、ピッコロの前でそっと開いた。
     「ほら、ちゃんと大事に持ってます」
     包まれていたのは随分と色褪せた……「あたり」と印字されたアイスの棒だった。
     「ピッコロさんが初めて、僕が持ってきたものを一緒に食べてくれた……記念ですよ。交換なんか、するわけないじゃないですか」
     大切そうに当たり棒を眺めて、悟飯は再びそれを財布へ仕舞いこむ。ピッコロは言葉に詰まり、ただ視線を逸らして、そうか、と呟いた。
     悟飯は財布をスクールバッグへ戻し、今食べたアイスの棒を眺める。
     「僕、未だに一回も当たったことないです。たったの一回で当てたピッコロさん、運がいいですよ」
     無邪気に微笑んで、悟飯はスクールバッグを軽く撫でる。
     夏の陽射しの下、何年も前の棒きれは、悟飯の荷物の中で沈黙している。ピッコロは答えなかったが、胸の底に甘く蹲る「あたり」が自分にとって一体なにを指すのか、静かに考えていた。
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    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
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    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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