爪の根元、細くひらひらと主張する半端に剥けた皮膚は、俺の視界で僅かに存在感を増していく。
あぁ、あれに似てる。ささやかですが……なんて控えめなんだか押し付けなんだかよくわかんねえ態度のあいつ。正直自分でもよくわかんねーたとえだとは思うが、いつも俺の中に強引に押し入ってきて妙に苛つくところはやっぱり似てる。
あーもうめんどくせー、犬飼はささくれ。ささくれは雑魚看守。それでいい、だから気にすんな。どうせそのうち居なくなる。ほらな、やっぱり同じじゃねーか。
「爪、どうかした?」
背後から覗き込んできたのは紫音だった。まあ足音で気づいてたけどいちいち面倒くさくて、たった今気づいたような顔を作ってみた。紫音を相手に誤魔化せないこともわかってたが。
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