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    あすと

    @aaast

    成人向け🔞NSFW / 全員受けで全員攻め

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    あすと

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    敬語禁止された犬飼とタメ口禁止された囚人たちの話[昼]

     さて、それから数時間が経過しました。昼です。それだけの時間があればすでに慣れている頃ではないかと思いでしょう。ですがそうはいきませんでした。なぜなら……。
     
    「え、と……ご飯、美味しいね!」
    「……」
    「……」
    「……」
    「この煮物、好きなん……だよねー僕……」
    「……」
    「……そう」
    「……」
     
     喋らないのです! 誰も! 私だけが一人で話しています!
     ですが当然と言えば当然です、命令通りの口調が難しいのであれば喋らなければいい、とても簡単なことです。
     ほんの数時間前はああ言ってくれたのにと少し寂しく思いましたが、そこは仕方がありません。私一人でも続けようと心に決めます。あくまで自然に違和感なく、そしてさり気なく、です。
     そして私はひとつの提案をしました。
     
    「あの、さ、僕午後から買い出しに行くんだけど、みんなも来ま……来ねえ? 今日は日差しも強くないし一緒に散歩なんてよくない?」
     
     向かいに座る土佐くん、斜め向かいの御子柴くん、隣の甲斐田くん。無言でこちらを見ている三人の目を順番に見て、それから椅子を少し斜めにして全員の顔が見える角度に調整して返答を待ちます。
     それは初めて出会った猫に手を伸ばしたとき、果たして触れることを許してくれるのか、それとも逃げられてしまうのか、そんな緊迫感があったように思います。
     ふい、と視線を逸らし、皿の上の椎茸を横にどけながら、最初に言葉を発したのは土佐くんでした。
     
    「……だりぃッス」
    「曇ってても紫外線は出てるんですけど」
    「お一人様でどーぞ、小物看守殿」
     
     土佐くんが口火を切ると甲斐田くんと御子柴くんも続きます。お互い誰が先に言葉を発するのか、探りあっているようにも見えました。
     私はこの会話を途切れさせないよう、最後に口を開いた御子柴くんの言葉をすかさず拾います。
     
    「小物……」
    「あ? なんか文句あんのかよ、排泄物看守さんの方をご所望ですかァ?」
    「小物でいい、ぜ……?」
    「はぁ……」
     
     いけない、ここで会話が止まってしまっては先程の努力さえ意味がなかったことになってしまう。
     一体どうしたら……そんな時でした、私の視界の端で何か話しかけたそうにしている甲斐田くんの姿をを捉えたのです。
     私はできるだけ自然に左を向いて尋ねます。
     
    「どうしたの紫音、何か言いたいことある感じ、じゃん?」
    「いや……一つ提案いいですか?」
    「なになに? 何でも言ってくれよ!」
    「うん、どうしてもって言うなら買い出しについていってあげてもいいんですけど、それだと俺達が犬飼さんの用事に付き合わされるだけって事になるわけですよね?」
    「そう……なっちゃうのかな……ごめん、やっぱり、」
    「まあ最後まで聞いてくださいよ。で、俺達が犬飼さんの用事に付き合うっていうならそれなりの見返り……ご褒美、貰わないと。ね、凌牙? シバケン?」
    「そうなるな」
    「あったりまえだろ、タダで人動かそうとしてんじゃねーよ。とりあえずこないだ出たグラボ買ってこい、型番あとで送っから間違えんなよお願いしまーす」
     
     確かにそうです、そうなんですけども! 彼らの想定するご褒美がどんなものであるかを想像すると、いえ想像することすら難しいというか、したくないような気がすると言うか……御子柴くんに至ってはすでに指定してきていますがあまり詳しくないのでわかりません。一体いくらくらいするものなのでしょうか……。
     困ってしまった私は、何かを言いかけて、やめて、を二度ほどど繰り返したと思います。しかし何を聞いていいのか迷ってしまい少しだけ下を向き、皿の上の椎茸とにらめっこをしました。勝てる気がしないなと思います。
     その時です。大きな影が私の視界を遮り何事かと顔を上げ口を開けた次の瞬間には、三方向から一気に私の口に何かが押し込まれたのです! 驚いて反射的に吐き出そうとした私はふと、それらの味に覚えがあることに気づきます。と、言うかそのうちのひとつと私は、先程までにらめっこをしていたような……。
     
    「……」
    「もっと欲しくなっちゃう? いっぱいになるまでなるまで入れてあげてもいいですよ、ナカに」
    「油断しすぎで草。やべーもん突っ込まれなかっただけ有難く思ってくださいねー」
     
     私は口の中の野菜たちをもぐもぐと咀嚼し、飲み込みながら考えます。いえ、答えはもう出ています、これらは彼らが苦手とする食べ物。あぁ、本当に油断大敵です。反省しました。
     話をご褒美の件に戻そうと彼らの顔を見ると、くすくすと可笑しそうに笑っています。全員が、です。
     
    「あの……それで、ご褒美って、何がいいの? 僕に出来ること?」
    「うん、犬飼さんでもヤれること」
    「タイムセールだ感謝しろや」
    「何時だ、買出し」
    「え? あれ?? 話がよくわかん、ねぇなー? うん? 僕だけわかってないの?」
     
     もしかして、と思うことがひとつだけありました。しかしそれはあまりにも自分に都合のいい見解であったので、恐る恐る、確認をしてみます。
     ご褒美、見返りは、みなさんが苦手なものを私が代わりに食べる、と言うことで合っていますか、と。
     三人は何も言いません。肯定と受け取っていいのでしょうか。
     普段ならば、出されたものはきちんと食べてくださいと注意するところですが、その言葉は目の前のお茶と一緒に飲み込みました。
     食事前に淹れたお茶は、ぬるくなっていました。
     
     
     着替える人、髪型を整える人、降り注ぐ紫外線への対策を講じる人、渋々ながらと言った空気はひしひしと感じましたが、皆さん外出のための準備を進めてくれています。
     その間私は購入予定品のリストを作り、その為に立ち寄る必要のあるお店をチェック、そしてそこまでのルートなどを確認し、万全の体制で出発時間になるのを待ちました。
     
    「みんなー! そろそろ出るけど準備出来てるー?」
    「イけまぁす……」
    「……ッス」
    「はぁ……」
     
     全員揃いましたので出発です。なんと出発予定時間丁度に出ることが出来ました。とても素晴らしい事だと思います。
     本日購入予定の商品は、トイレットペーパー、ティッシュ、この二つは近くのドラッグストアが安いです。そして麦茶のティーバッグ、プロテイン、エナジードリンク、これらは少し離れた量販店のほうが安かったと思いますが、ドラッグストアでも売っているので少し迷いました。それから煙草……は、道中のコンビニでいいでしょう。本来は規則違反なのですが……。
     
     外は蒸し暑く風もなく、快適な散歩とは言い難い天候したが、唯一太陽は雲に完全に覆い隠されていましたので、その点に関しては良かったと思います。
     
    「ねえ犬飼さん、すごい、暑いんですけど、どこまでイくんですか……」
    「この先のドラッグストアと少し先の量販店まで行こうかなって」
    「はぁ!? なんであんな遠くまで歩かなきゃなんねーんだよ! お前だけ行けよカスさん!」
    「カスさんて……ひどいよシバケン……」
    「うるせー! もうやってられっかよ! 俺はもうやめ、」
     
     ここからしばらく記憶がありません。軽い熱中症だったのでしょうか。ふと意識が戻ったときには御子柴くんはまた敬語で話してくれていました。ただ、土佐くんと甲斐田くんがなんだか疲れたような顔をしています。おそらく暑さのためでしょう。
     無理をさせるのは良くないと判断したので、近場のドラッグストアで全て購入することに決めてそうと告げ、店内は涼しいよ、と声を掛け、足早に向かいました。
     
     かごに入るものはかごに入れ、ティッシュとトイレットペーパーは両手に持ってレジに向かおうとすると、土佐くんが無言でそれらを持ってくれました。とても優しい人です。凌牙ありがとう、とお礼を言ってから振り返ると、甲斐田くんと御子柴くんが居ないことに気づきます。いったいどこへ! 焦った私は店内を早足で周り探します。二人は一緒にいました。
     
    「二人とも離れちゃだめだよ! 帰るよ!」
    「すみませーん」
    「何かほしいものでもあったの? どうしても必要なものなら……って! 何見てるんですか! そんなもの要らないでしょう!? 駄目ですよ!?」
    「るせーな俺だっていらねー……いりませーん……」
    「犬飼さん、敬語」
    「あっ、で、でも……そんな……避妊具なんて僕、びっくりして……」
    「あーそっちじゃなくてこっちです、これ」
     
     甲斐田くんが手に持ったそれを私に見せます。筒状で、ボーダー柄のパッケージ、それは、もしかして。
     
    「これをシバケンに勧めてただけですよ。必要かなって」
    「要らねーっつったろ!」
    「興味あるんでしょ? 前にこっそり見てたじゃん、これのレビュー」
    「見てねーし!!」
    「みっみんな! お店の中では静かにしよー……ぜ? それから紫音、そういうものはシバケンにはまだ早いんじゃないかなって思うんだぜ……僕……」
    「お子ちゃまにはオナホ使う権利もないんだってさ。使わなくてもイイ方法、俺が教えてあげるから我慢して」
    「これ以上お前と喋ってると色ボケのボケんとこだけうつるから話しかけんな」
     
     商品を抱えた土佐くんはため息をつきながら、さっさと行こうぜ、と言いました。そうですね。と私は返します。お互い指摘することすらなく二人の腕を引いてレジに向かいました。
     
     ドラッグストアを出て、帰り道の途中にあるコンビニで煙草を三箱ずつ買いました。合計六箱のはずですが、何故か九箱ありました。会計時の記憶が曖昧なので、間違えて買ってしまったのかもしれません。返品するわけにもいかないので持ち帰ることにします。
     本当はもう少し寄り道をしたかったのですが……内緒ですよ、実は最近少し仲良くなった猫に会いに行こうと思っていたのです。皆さんにも紹介したくて。でも次回にしたいと思いました。みなさんひどく疲れた顔をしていましたので。
     
     帰路、ティッシュとコンビニの袋は私が持ち、トイレットペーパーは土佐くんが、ドラッグストアの袋は一つをかいだくんが、もう一つを御子柴くんが持ってくれました。みなさん本当に優しい人たちです。とても嬉しく思いました。
     
     無事仮設住居へと戻った私は、購入したものを再度一つずつ確認し、領収書は失くさないように保管し、そしてそれぞれ所定の位置へと収納します。これも土佐くんが手伝ってくれました。無言でしたが。
     それから私は先程購入した麦茶のティーバッグで麦茶を作ります。煮出しでも今から作れば夕食時には冷えていると思います。もしも温かったら氷を入れればきっと美味しい、夏にピッタリの麦茶になると思います。
     
    「お疲れ様! 散歩、どうだった? 楽しかったよな!」
    「どうってこともねえッス」
    「散歩って感じじゃなかったですよねぇ……。かわいい子にも会えなかったし」
    「だっる」
    「体調やばかったらちゃんと休んでね! 凌牙、紫音、シバケン! 付き合ってくれてありがとう!」
     
     みなさんひどくお疲れのようです。ため息のような返事がみっつ返ってきて、そして寝室へ消えていきました。
     さて私も少し疲れました。先程暑さのためか何度か意識があやふやになったので、念の為に少し休もうと思い、私も自室へ戻ることにしました。
     
     と、ここまでがこの日の昼に起きたことです。一部記憶が定かではないため、正確に記すことは出来ておらず申し訳ございません。夏の暑さを甘く見てはいけないな、と肝に銘じました。
     皆様もどうかお気をつけください。
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    Replies from the creator

    あすと

    DOODLE夏の終わりの眠れないかいだくん(と誰か)の話
     別に、セックスなんてしなくたって死ぬわけじゃない。性欲なんて一人でだって満たせるし、そしたらあとは眠ればいいだけ。夢は見ない。寂しさは持っていかない。
     本当にほしいものが何なのかなんて自分でもわからない。繋がり、ほしいけど、繋がるってどういうことか本当はわからない。経験のないことは想像するしかないけど、経験がないからその材料すらも持ち合わせてはいない。仮に誰かが教えてくれたとしても、それはそいつの見解であって俺も同じとは限らない。
     だから、わからないことはずっとわからないまま、なんとなくわかった気になって欲しがり続けるしかないってこと。

     さっきまで生ぬるく感じてた扇風機の風は、今は少し寒いくらいだ。暇だな、暇だからこんなに余計なこと考えちゃうんだ。眠りたい。でも今眠ったら連れて行ってしまう。そんなのは嫌だから、目の前の背中にしがみつく。冷えた汗に頬をつける。ゆっくりと、同じリズムで震える体温。 どうして置いてくの、俺も一緒につれてってよ。一緒ならきっと、夢を見るのだって怖くない。ねえお願い、俺よりあとに眠って。置いて行かないで。俺が眠るまで、抱きしめて頭撫でてよ。子供扱いしたっていい、馬鹿にしたっていい、毎晩一緒に眠ってくれるなら、俺、誰よりもいい子になれるから。
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