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    ぱん(旧ブレッド)

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    POIPOI 9

    『まだ酔ってるみたいだ』
    診断メーカーで出たお題だけど書ききれなかったやつ

    #アサ森
    reedForest

     事務室に入ると同時にドンッという衝撃を感じた。何事かと思い、前を見ると艶やかな黒髪が見えた。それだけで今アーサーに抱きついている人物が誰だか分かる。アーサーが見間違えるはずがない。
     「あ〜さ〜!」
     「……おい。」
     顔を真っ赤にしながら楽しそうにアーサーの名前を呼んだのはシンラだった。ニコニコと無邪気な笑みを浮かべている。面倒臭いことになった。アーサーは心の中でため息をつく。そして元凶であろうマキたちの方を向く。マキたちは冷や汗を垂らしながらアーサーとシンラを見つめている。
     「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
     「未成年に酒を飲ますなよ。」
     「違うんです!ただちょっとチョコレートボンボンをあげただけで!!」
     そう言うマキのデスクの上には高そうなチョコレートが置いてあった。言っていることは真実のようだ。だからこそ余計面倒臭い。
     「まさか日下部がここまで酒に弱いとは思ってもなかったな。私らは何ともないのに。」
     「コイツはお菓子とかに入ってる洋酒でも酔うぞ。」
     「あーさー!おれにもかまえよ〜!」
     「はいはい。」
     ぎゅうぎゅう抱きついてくるシンラに心を無にしながら接する。想い人にここまでくっつかれてよく手を出さないと思う。アーサーはいつもの事ながら自分の理性を褒め称える。ぽんぽんとシンラの背中を叩いてあげるとくふくふと楽しそうに笑う声が耳元から聞こえてきた。
     「……なんか手馴れてますね。」
     「訓練校の時何回かこうなったことあったからな。美味いと評判のティラミス買ってったら一口食って酔いやがった。」
     「ティラミス?」
     「駅前のケーキ屋のだ。」
     「あ〜……あそこで使ってる洋酒、他の店と比べて度数強めですもんね。」
     納得したように頷いているマキ。アーサーはあの時のことを思い出す。あの時はシンラがこんな風に絡んでくるなんて知らなくて動揺しまくった。動揺に動揺を重ねて顔を真っ赤にして固まった記憶がある。そんな様子をオグンに見られ、大爆笑されたのは今でも許し難い。
     「あーさ!あーさぁ!」
     「どうしたシンラ。」
     「おれもいるんだからな〜!あんまりむしするとちょんまげにしてやるぞ!ふふふっ!」
     そう言うと、シンラはアーサーの前髪を掴みぴょこぴょこと動かし始めた。髪の毛を引っ張られる感覚が少しだけ嫌だが特に害はないので好きなようにやらせる。嫌だと言うと余計面倒臭いことになるのは以前学んだ。
     「絡み酒ですね〜……」
     「でも私らには絡んでこないんだな。」
     マキたちは無表情でやられっぱなしのアーサーを見て苦笑いをしている。
     「俺限定の絡み酒だ。俺がいないところで酒を摂取したらふらふら歩き出すらしい。」
     「確かにアーサーを探しに行こうとしてましたね。」
     「ふへへっ!」
     楽しそうにアーサーを触っているシンラをなるべく認識しないように平常心を保つ。無邪気な好意は時として残酷であるということをシンラは嫌という程教えこんできた。
     「とりあえずコイツを部屋に置いてくる。」
     「えー!もっといっしょにいたいー!」
     「後でもっと構ってやるから。」
     「むぅ……」
     唇を尖らせて
     「ほら行くぞ。」
     「……」
     「おいコラ登るな!」
     「やだ〜!もっといっしょにいるー!」
     「……これ酔い冷めたら日下部死ぬだろ。」
     「私がチョコレートボンボンを勧めたせいで……!!」
     「大丈夫だろ。酔ったら記憶なくすタイプだし。」
     「そうなんですね。」
     「まぁ記憶なくすから懲りずに酒を摂取するんだけどな。」
     「ダメじゃねぇか!!」
     「あーさー!おれはまだいっしょにいるからな!」
     「今はいい子だから眠っとけ。」
     「ぐぅ……」
     「「寝た!?」」
     「じゃあ置いてくる。」
     「あ、はい……」



     「あーさ!」
     「なんだ。」
     「あーさー!」
     「どうした。」
     「すき!」
     「俺も好きだぞ。」
     「へへっ、りょーおもい!」
     「そうだな。ほら、酔いが冷めるまで寝とけ。」
     「うん……」
     「……」
     「……」
     「……そういうことはシラフの時に言いやがれ悪魔。」
     「……」
     すやすやと健やかな寝顔を晒しているシンラ。返事があるはずなかった。
     「はぁ……マジでどうしてやろうかコイツ。」
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