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    高間晴

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    高間晴

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    敦太800字。雪の夜。

    #敦太
    dunta
    ##文スト

    雪の夜 しんしんと雪の降る夜。部屋の灯も消したので真っ暗な中。敦と太宰は二人で布団に潜り込んで小さな声で話していた。今夜は敦が孤児院時代、好きになった女の子の話をしている。
    「――それで?」
     太宰が敦の話の先を促す。
    「……僕は、その女の子に点数稼ぎのために売られたんです。食料庫へ忍び込んで、せっかく来客用のお菓子だった、チョコレートを手に入れてきてあげたのに」
    「へえ」
     敦は、太宰になら孤児院時代の話を素直に話せるようになっていた。別に親身になって聞いてくれるとかではなくて、ただ相槌を打ちながら静かに聞いてくれるからだ。否定も肯定も、称賛も慰めもない。敦にはそれがただ心地よかったから。話すと胸の中でつかえていた辛い過去の出来事が、楽になっていくのが自分でもわかる。
    「あの時こっそり二人で食べたチョコレート、美味しかったな」
    「だろうね」
     太宰は敦の頭を撫でる。その手のひらは体温が少し低くて、敦はそれが好きだった。
    「その女の子、勿体ないことをしたなあ」
     珍しく太宰がそう話の感想をもらしたので、「どうしてですか」と訊き返す。
    「いま敦君と一緒にいる私がこんなに幸せだからさ」
     それを聞いて敦は目を丸くする。それから太宰の頬に触れた。
    「僕だって太宰さんといられて幸せです。仮にあの子と恋人同士になってたら、太宰さんとは出逢えなかったでしょうから」
     そこで敦はいいことを思いついた。
    「太宰さん。もうすぐバレンタインですから、今度、僕とチョコレートのお菓子でも作りませんか」
    「ああ、いいねえ。私ひとりだったら出来ないけど、敦君は料理上手だから」
     二人、額を突き合わせて小さく笑う。
     何を作ろうか。ブラウニー、トリュフ、ガトーショコラ……。
     そうして二人は寄り添って体温を共有しながら眠るのだった。夜は音もなく更けていく。
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    高間晴

    DONE手作りの栞とファーストキスのチェズモクの話。■眠れない夜、君のせいだよ


     何、読んでんだろ。
     チェズレイはよく本を読む。今日もリビングのソファで読書をしている。それをモクマはソファの背中側に回り込んで、膝の上に開かれたハードカバーのページを見てみる。だが、数行読んだところで、何のことなのか頭がこんがらがるような感覚に襲われたので読むのをやめた。
    「どうしました、モクマさん」
    「いんや。お前さんやっぱ頭脳派だな~って思って」
     チェズレイは薄く微笑むと栞も挟まず本を閉じてしまう。それを見てモクマは目を見開く。
    「ありゃ、お前さん栞挟まないの?」
    「ええ。どこまで読んだかは覚えていますので」
    「は~……じゃあおじさんの作った栞、いらないかあ」
    「栞?」
     チェズレイが小首を傾げてきたので、モクマは背後に持っていた手作りの栞を差し出す。受け取って、チェズレイはまじまじと見つめる。紫色の花を押し花にして作った栞を指差してモクマが説明する。
    「お前さんよく本読んでるみたいだから、どうかな~って思って作っちゃった」
     そこでモクマは少し照れくさそうに笑う。
    「昔におカンやイズミ様が作ってたのの見様見真似だけどさ、なかなかうまく出来てる 2411