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    高間晴

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    高間晴

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    敦太800字。ホットミルク。

    ##文スト
    #敦太
    dunta

    牛乳に、魔法を一匙 敦君の寝付きの良さと云ったら、私にとっては驚きの一言だ。布団に入ったかと思えば、何時の間にか寝息を立てている事が多い。其れも、眠れる時に眠っておかなければ身が持たないという、孤児院育ちの所以だろうか。
     でも、今晩は珍しく眠れないらしい。灯りを消した後に私の隣で何度も寝返りをしていたが、やがて諦めたのか上半身を起こしたようだ。衣擦れの音で私は目を開ける。
    「ん。眠れないのかい?」
    「はい……今日の昼間に昼寝しちゃったからですかね」
     そう云えば、今日借りてきた映画のDVDが吃驚する程つまらなくて、観ながら二人して寝落ちしちゃったっけ。目を覚ましたら再生が終わっていた。
     私は起き上がると灯りをつけた。
    「よし、良い物を作ってあげよう。ついておいで」
     台所へ立つと、彼は後ろからついて来た。冷蔵庫を開けて牛乳を取り出すと、手鍋に注ぎ入れて火に掛けた。
    「適当に温まったら火を止めてくれる?」
    「あ、はい」
     彼が鍋の様子を見ているのを目の端に置いて、私は食器棚からマグカップとスプーンを二組持ってくる。丁度敦君が火を止めたところだった。私は牛乳を注ぎ分けると、何時も菓子や茶葉の類を入れてある棚を開ける。
    「えーと、あ、あった」
     目当ては硝子の小瓶に入った蜂蜜。此れも敦君と二人で、紅茶に入れたら美味しいだろうなとか云って買ってきた物だ。蓋を開けると、とろりとした黄金色の其れをスプーンで一匙ずつ牛乳に入れる。
    「後は良くかき混ぜて出来上がりだよ」
    「小さい頃読んだ外国の御伽噺に出てくるやつだ……」
     二人でマグカップの湯気の甘い香りを楽しみながら混ぜると、やがて待ち切れなくなった彼が口をつけた。一口飲んで、ふわっと小さく息を吐く。
    「美味しい……」
    「良かった」
     私も自分のを一口飲むと、温かくて甘くて、優しい味がした。久しぶりに飲んだけれど、まるで何も心配しなくて良い乳飲み子に戻った様な心地だ。彼も私も、そんな時代が有ったのかは謎だけれど。
    「飲み終わったら布団に戻ろうね」
     そう云うと、彼は素直に頷いた。虫歯だとか後片付けだとか、そんな面倒は明日の自分達が何とかしてくれる。
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    高間晴

    DONEチェズモクワンライ「お酒」。
    モさんの好きそうなカクテルを作ってくれるチェズの話。
    ■幸せのカクテルレシピ


    「モクマさん、あなたが気に入りそうなカクテルがあるんですが、一緒に飲んでみませんか?」
     夕食が済んで、食洗機に食器を入れながらチェズレイが訊いた。モクマはキッチンの上の棚から晩酌用のどぶろくの瓶を取り出そうとしていたが、それを聞いて顔を輝かせた。瓶を戻し棚を閉めると、夕食の片付けを終えた青年の傍に近寄ってきて、興味津々に訊いてくる。
    「えっ、なにそれ。そんな素敵なものがあるの?」
    「はい。あなたとこうして一緒に暮らすようになってから、私もアルコールに興味が湧きまして。ネットで調べてみたらいいカクテルのレシピを見つけたんですよ」
     チェズレイはキャビネットから、コーヒー豆のキャニスターを取り出す。
    「ん? コーヒー淹れるの?」
    「ええ。これから作るカクテルはコーヒーを使うので」
     チェズレイがまずはケトルに水を入れ、コンロで沸かし始める。その間そわそわした様子でモクマはキッチンのシンクの縁に手をついて、すぐ隣のコンロ前のチェズレイを上目遣いに見つめる。
    「おじさんが気に入るお酒で、コーヒーってことは……カクテルにするお酒はなんかミルクっぽいお酒なの?」
    「さ 2225

    ▶︎古井◀︎

    DONE横書きブラウザ読み用!
    猫に出会ったり思い出のはなしをしたりするチェモのはなし
     やや肌寒さの残る春先。早朝の閑静な公園には、ふたりぶんの軽快な足音が響いていた。
     現在、チェズレイとモクマが居を構えているこの国は、直近に身を置いていた数々の国の中でも頭一つ飛び抜けて治安が良い。借り受けたセーフハウスで悪党なりに悪巧みをしつつも優雅な暮らしをしていた二人が、住居のほど近くにあるこの公園で早朝ランをするようになって、早数週間。
     毎朝、公園の外周をふたりで一時間ほど走ったり、ストレッチをしたり。そうするうちに、お互いに何も言わずとも自然と合うようになった走行ペースが、きっちりふたりの中間点をとっていた。
     数歩先で軽々と遊歩道を蹴るモクマに、チェズレイは平然を装いながら素知らぬふりでついていく。『仕事』が無い限りはともに同じ時間、同じような距離を走っているはずなのに、基礎体力の差なのかいつもチェズレイばかり、先に息が上がってしまう。
     今日だってそうだった。そしれこれもまたいつも通り、前方を走っている相棒は、首だけで振り返りながらチェズレイをちらりと見遣っただけで、仮面の下に丁寧に押し隠した疲労をあっさりと感じ取ってしまい、何も言わずにゆったりペースを落とした。
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