8月七灰原稿進捗②二.あけましておめでとうございます
ようやく、この日が訪れた。
明日は卒業式。
──呪術師を、辞める日だ。
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何の予定も書いていない壁掛けカレンダーを外した七海は、窓の向こうへ目をやった。
今日の空は春らしい、うっすらと霞みがかった淡い色をしている。所々朧げな雲が浮かんでいるが、うららかな陽射しを遮ることなく、たくさんの草木が芽吹く地面を照らしていた。
寮の中庭には桜の木が植わっていて、二階の窓からもよく見える。三月に入ってから暖かな日が続き、桜の木の蕾はここ数日で随分ふっくらとした。今年の開花は予報通り例年よりもかなり早くなるのだろう。
そんなことを思いながらぼんやり桜の蕾を眺めていると、春の爽やかな風が七海の頬を撫でた。新鮮な空気が鼻腔を抜けて肺を満たす。
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