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    しんした

    @amz2bk
    主に七灰。
    文字のみです。
    原稿進捗とかただの小ネタ、書き上げられるかわからなさそうなものをあげたりします。

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    しんした

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    七灰原稿
    あの世で再会した七灰(28×17)の導入部分
    なんとなくいい感じに収まってしまったけど、これからふたりであの世巡りしながら昔を懐かしんだり最終的にラブラブする話になるはず。
    ※6/11
    最後の方2000字ほど加筆しました。

    夏インテ原稿(七灰)①


    いつだって、きみが先に見つけてくれた。






    真っ暗で何もない。少しずつ、自分の境がわからなくなっていく。
    これが、死なのか。
    あの世なんてものがあるとは信じていなかった。死ねばそこで終わり。仮に呪いへ転じたとしてもそれはただの思念であり、自分という個は心臓が止まり脳が働かなくなった時点で消えると思っていた。
    きっと、こうしてグダグダと思考していることも、次第に終わりを迎えるのだろう。
    だが、死ぬ直前の光景はしつこく七海の意識にのぼっていた。
    帳が下ろされた渋谷の街。五条封印というにわかには信じられない事態。奔走する最中に目にした、傷つけられた仲間の姿。蘇る十年前の記憶と、己への憤り。
    自分はさして強くない。守るべき子どもに命運を委ねなければならない後ろめたさはあったが、ただ自分に出来ることをひたすらに遂行した。
    しかし、気がつくと左半身は焼け爛れ意識も朦朧としていた。それでも、重たい身体を引きずりながら、目の前の呪いを祓い続けた。自分に出来ることはこれだけだと、ただ右腕を振るった。
    だが、これで最後だと悟った時、また心の中で彼に問いかけていた。
    ──灰原。
    もう何度目かは覚えていない。最後の最後まで縋るように彼を思い返してしまった自分には、正直情けなさが込み上げた。けれど、最後の最後に彼は前の前に現れてくれた。
    誰かが見せた幻でも己が作り出した幻覚でもなんでもよかった。彼があの頃と同じ表情を向けてくれていることが嬉しかった。
    思考が鈍くなっていく。真っ暗な中に溶けていく。
    終わる。何もかも。
    恐怖はなかった。ただ、意識には灰原の笑顔が最後まで浮かんでいた。



    閉じていた瞼がゆっくりと開いていく。
    もう開くことはないと思っていたのにどうしてと、七海の頭に疑問が浮かぶ。
    ぼやける視界は薄暗く、地面は所々隆起しているらしく少し足元はおぼつかなかった。鼻腔をくすぐるのは腐食した土の匂いで、辺りを包む空気は温く湿り気を帯びていてじわりと背中に汗が滲んでいくのがわかった。
    何度か瞬きをして、ぐっと目元に力を入れる。不明瞭だった視界が鮮明になっていき、目の前に広がる景色を確認することができた。
    密集するように生えている背の高い木々。どうやら昼間のようだが、鬱蒼と生い茂る葉で青い空は随分と遠くに感じた。
    辺りを見渡すと、ここが平坦な森ではなくなだらかに傾斜している山中で、少し離れたところに石段があることに気がついた。不揃いな石を積んで作られた石段はかなり古く苔に覆われているが、定期的に人が行き来しているのか足跡の形に石が凹んでいた。
    石段の伸びる先へと視線を移した時、七海の背筋にゾワッと寒気が走った。
    視線の先にあったのは小さな祠だった。石段同様に古ぼけてはいるが、手入れはされているようで、真っ白な紙垂が風もないのに何故か小さく揺れていた。
    微かに滲んでいた汗が急激に冷えていく。自分は死んだという認識を持っているはずなのに、脈は早くなって呼吸も浅くなっていくのがわかった。
    ここを、知っている。
    高専二年の夏に赴いた、名前も覚えていない片田舎。灰原と二人での、最後の任務だった。
    忘れたいと思ったことはなかった。ただ、思い出すにはあまりにも辛く、十年以上も心の奥深くに押し込めていた。
    祓う対象はただの二級呪霊と聞いていた。しかし、祠の前に着いた時、対象が知らぬ間に巣食っていた呪霊ではなく、この地で古くから祀られていた神であるとわかった。ただ、その時には何もかもが遅かった。
    湿った土の匂いに、血の匂いが混じっていく。いつの間にか、シャツもスラックスも赤黒く染まり、両手も血まみれになって、そこからボトボトと滴る血肉で足元に血溜まりができていた。
    全て終わったと思ったのに、やはり自分はあの日から抜け出すことはできないのか。そんな半ば諦めのようなものが七海の胸に込み上げる。おそらくここは地獄というもので、この先ずっと、きっと永遠と言っていい時間ここにいるのだろう。死んだらそこで終わりだなんて、随分と甘い考えだったようだ。
    せっかく、彼の笑顔で終われると思ったのに。
    小さく息を吐いた七海は、瞼を閉じて死に際に見た灰原の笑顔を思い浮かべた。
    ──…………!
    その時、何かが聞こえたような気がした。
    「──……っ!」
    人の声だった。
    聞き覚えがあることは、気のせいだと思いたかった。きっと、これも自分が作り出したものだろうと、自分の浅はかさに嫌気がさした七海は耳を塞ごうとした。
    しかし、それは叶わなかった。
    「七海っ!」
    すぐ後ろで名前を呼ばれ、それと同時に腕をきつく掴まれる。恐る恐る振り返ると、そこには記憶の中にあるものと同じ笑みを浮かべる彼がいた。
    ──灰原。
    「こっちだよ!来て!」
    だが、頭に浮かんだ名前を口にする前にグイッと腕を引かれ、灰原と共に駆け出していた。
    腕を掴まれたまま、深い山の中をひたすらに進む。血の匂いは薄まっていくが、あたりは薄暗くまとわりつく空気はじっとりして身体は重かった。しかし、目の前を走る灰原の周りは不思議と明るく、少しずつ呼吸がしやすくなるように感じた。
    あの頃と全く変わらないさらりとした黒髪が、走りに合わせてなびいている。
    どうして、灰原が。これも、都合のよい幻覚なのだろうか。
    そう思いながらも、記憶の中にあるよりも小さく見える背中を七海は必死に追いかけた。


    景色は少しずつ変わっていった。深い山中から抜け出していくように、木々の間隔が空いていく。ほんの僅かしか見えなかった青空も頭上いっぱいに広がり、灰原の周りだけでなく視界全体が明るくなっていく。
    いつしか地面の傾斜もなくなって、踏みしめる足元も石や木の根の隆起した地面ではなく柔らかな砂地に変わり、革靴では少し走りにくくなる。腐葉土の匂いも血の匂いも消え、微かに鼻をくすぐるのは潮の匂いのように感じた。
    この足元の感触も、匂いも覚えがある。
    そう思った七海は走りながら記憶の引き出しを探った。しかし、視界が急激に開け、七海は目を眩ませた。
    「よかったー!戻ってこれた!」
    灰原が弾んだ声を上げている。
    戻ってこれたとはどういう意味だ。いったい、灰原は今までどこにいたんだ。そもそも、どうして灰原が自分のところに来たんだ。
    疑問ばかりが浮かび、頭が上手く整理できない。灰原が徐々にスピードを落としていくのがわかり、サクサクと砂を踏みしめる音が耳に届く。反射的につぶっていた瞼をゆっくりと開けた七海は、目の前に広がる景色に思わず息を飲んだ。
    視界いっぱいに広がる、鮮やかな青と白。
    足元は真っ白な砂粒の砂浜で、透明度の高いコバルトブルーの海は穏やかに波を行き来させている。見上げた先の空はどこまでも高く、眩しい太陽のそばには柔らかそうな薄い雲がふわふわと浮かんでいた。
    「ここは」
    「南の海だね!」
    「南の海……」
    「たぶん沖縄かな?僕、南の海とか沖縄くらいしか行ったことないし」
    灰原の口から出た地名に、探していた記憶の引き出しが勝手に開く。
    沖縄。高専に入ってから初めての遠征任務地。本当は空港内だけで過ごすはずだった。それが、急遽滞在が伸びたせいで、沖縄が初めてだとはしゃぐ灰原に近くのビーチまで半ば無理やり連れられた。ここはあのビーチによく似ている。
    「どういうことだ。さっきまであの場所にいたのに。そもそも、どうしてきみが。ここは……地獄じゃないのか?」
    あの世なんて信じていなかった。ただ、もしそういった類が存在するのなら自分が行くのは地獄で、現にさっきまでいたあの任務の場所はそうだと思っていた。こんな綺麗な場所に来られるなんて、ましてや灰原ともう一度会えるなんて、想像したこともなかった。
    いま起こっている何もかもがわからない。
    目の前で、灰原の黒い瞳がキョトンと丸くなる。よくそんなにも感情が現れるものだと、あの頃何度もそう思いながら見つめていた瞳と全く同じだった。
    もし、これも己が作り出した幻覚だとすれば、どこまでも未練がましい自分が嫌になる。けれど、また灰原に会えたことは嬉しいと思ってしまう。
    この十年、いや、十五の春に出会った時からずっと、彼に焦がれていたのだから。
    ぐっと眉間に皺を寄せた七海はいまだに掴まれていた腕を軽く引き、そのまま静かに灰原を抱きしめた。
    あの頃、いつもそばにいたくせに、こんなふうに触れたことはなかった。友人にはしない触れた方して、何が変わってしまうことを怖がっていたからだ。
    そのまま動けずにいると背中にそっと灰原の手のひらが触れ、七海は無意識のうちに腕へ力を込めていた。
    さっきよりも強く抱きしめた灰原は記憶にあるよりも小さく思え、流れた月日の長さを実感して胸が締め付けられる。しかし、腕の中の灰原が微かに肩を震わせていくことに気がついた七海は慌てて腕の力を緩めた。
    「灰原……?」
    七海は不安げに声をかけた。しかし、俯いていた灰原は、もう我慢できないといった様子でぷはっと息を漏らして笑い始めた。
    「っ、何かおかしいんだ」
    「ごめんごめん!だって、七海地獄とか信じてなさそうだったからさ!」
    大きく口を開けて笑っていた灰原に、軽く背中を叩かれる。あやされているようにも感じて気恥ずかしくなったが、そういえばあの頃もこんなふうに機嫌をとられていた気がして、七海の口からは不思議と安堵の息がこぼれていた。
    「ここは地獄じゃないよ」
    「まさか、天国なんて言うんじゃないだろうな」
    「んー、天国とも違うと思う。まあ、あの世っていうのが一番しっくりくるのかなぁ」
    「あの世、か」
    そんな場所信じていなかったはずが、灰原が言うならそうなのだろうと簡単に納得してしまう自分に苦笑が込み上げる。
    すると、ニコニコ笑っていた灰原は、スッと目元を細めて静かに口を開いた。
    「七海のこと、ずっと見てたよ」
    灰原の言葉に七海は小さく身体を固めた。あんな情けない自分を灰原がどう思っていたのかと考えると、胸の奥が苦しくなる。
    「そうだったのか」
    「うん。七海、いっぱい頑張ってたね」
    「……そうだろうか」
    灰原が死んで一度全てから逃げたくせに、曖昧な理由で戻ってきて。それからも、尤もらしい言葉を口にしながら、実際には迷いながら歩んでいた。灰原から託されたというのに、自分は何がしたかったのか、死んでからもわからないままだ。
    「私は逃げたんだ。戻ってきてからもずっと迷って、結局最後まで、よくわからないままただ右腕を振るっていただけだ」
    一度、己の死を悟って悔いはないと口にしたことがあった。確かにあの時、自分のできることを精一杯したという気持ちは少なからず持ち合わせていた。だが、心の片隅では、やっと解放されるのかという安堵が滲んでいたような気もするのだ。
    「私は、中途半端な人間だよ」
    「僕はそうは思わないけどな」
    「どうして……」
    「だって、一回高専を離れたのもまた戻ってきたのも、七海がたくさん考えたり悩んだりした結果でしょ?それに、呪術師として歩み続けた理由を七海はちゃんと持ってるって、僕は思ってたよ」
    理由。そんなものあったのだろうか。
    七海が困惑していると、灰原はにこりと笑ってこう言った。
    「人を助けたい。あの頃の七海と、変わってない」
    あの頃というのは、灰原がそばにいて、まだこの世界に対して希望を抱いていた時のことだろう。あの頃と比べると、自分も自分を取り巻く環境は随分と変わってしまった。けれど、灰原の言う通り、あの頃抱いていた前向きな気持ちが少しでも残っていたのなら、あそこまで足掻いた自分に対して労いの言葉を投げかけてやれる気もした。
    「変わってない、だろうか」
    「うん。困ってる人を見て見ぬふりできないとこも、優しいのを表に出さないとこも、誰かのために無理しちゃうとこも、なーんにも変わってない」
    「私はそんな奴だったか?」
    「僕、あの頃からずっと七海のこと見てたんだけど?」
    そう言って、灰原は何の迷いもなさそうに笑った。
    一緒にいた頃、自分のことを一番に理解してくれているのは灰原だと思っていた。死してもなお見守ってくれていたことも、こうして言葉をくれることも本当に嬉しくてたまらない。
    「理由になってない気がする」
    「僕はそう思ってるからいいの!」
    素直な言葉は返せなかったが、それでも灰原はあの頃のように笑ってくれている。
    「七海、ほんとにお疲れさま」
    少し背伸びをした灰原の腕が背中に回り、そっと抱きしめられる。それから、ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。
    「いっぱい、頑張ったね」
    灰原の穏やかな声色に、瞳の奥が熱くなっていく。それに気がついた七海は、記憶の中にあるよりも低い位置にある首すじへ顔を埋めてぎゅっと強く抱きしめ返した。



    「疲れたでしょ?」
    そう言った灰原に連れられたのは『氷』や『焼きそば』などののぼりが立つ年季の入った木造の小屋だった。
    「海の家があるのか」
    間口が開けた小屋の中にはテーブル席と小上がりの座敷があり、入り口近くの壁には子ども向けの丸い浮き輪やイルカの形をしたボートが積まれていた。
    「海には必須じゃん?沖縄行った時もあったし」
    「確かにそうだが」
    灰原の言うとおり、高専一年の春に赴いた沖縄のビーチにも海の家はあった。しかし、七海の記憶の中にあるのはもう少し若者を意識した洒落た作りの建物で、この店は海水浴場にある家族向けの店のように思えた。
    キョロキョロと中を見渡す七海をよそに、灰原は厨房へと入っていく。あとを追うと、灰原は勝手知ったる様子で業務用のガラス扉の冷蔵庫を開け、コーラの瓶を二本取り出して得意げな笑みを浮かべた。
    小屋の前のベンチに並んで座り、ぼんやりと海を眺めながらコーラの瓶を傾ける。疲労感も喉の渇きも意識していなかったが、よく冷えた炭酸が喉を通る感覚は心地よく、中身はすぐ空になった。
    やって来た時は空の高い場所にあった太陽はいつのまにか水平線の向こうへ半分ほど姿を隠し、空も海も砂浜も目に映るもの全てが鮮やかな橙色に染まっていた。ここへ来てからさほど時間が経っていたと思っていなかったせいか、七海は目の前の光景がどこか夢のように感じた。
    「ここは不思議な場所だな」
    「まあ、あの世だしね」
    「灰原はずっとここにいたのか?」
    「ずっと、ってわけじゃないよ」
    「他にもどこか場所があるのか?さっきの、あの任務で行った山や、もしかして別の任務で行った場所も」
    七海が質問を重ねると、灰原は困ったように笑って口を開いた。
    「ここは夏の場所なんだ」
    「夏の場所?」
    ちょっと説明が難しいんだけど、と前置きをした灰原はゆっくりと言葉を続けた。
    「ここはね、時間は流れてないんだ」
    「どういうことだ?」
    時間が流れていないと言われても、現に空は夕方から夜へと変わっていっている。そんな七海の考えも予想できているのか、灰原はもうほとんど水平線に隠れてしまった太陽を指差した。
    「太陽さ、ああやって海に沈んでいってるけど、昇る時も海から昇ってくるんだよ?」
    「それは……不思議だな」
    「あの世だしね!」
    ついさっきと同じやり取りになり、灰原はニコリと笑っている。頭では理解はできないが、灰原が言うのならそうなのだろうと納得してしまう自分に、七海も小さく笑みをこぼした。
    「ここは自分のイメージが反映されるみたいなんだ」
    「じゃあ、ここは灰原の夏のイメージ、ということか?」
    「そうだよ!夏と言えば海!海と言えば沖縄って感じ!」
    イメージが反映されるのなら、この海の家の雰囲気があの時の沖縄と違うことも納得がいく。ベースは沖縄らしいが、きっとこの海の家は灰原が子どもの時に行ったことのあるどこかの海水浴場にあったものだろう。
    「あとね、陽が沈んでいったのも、七海にここの夕陽見てもらいたいなぁって思ったからなんだよ!」
    「そんなこともできるのか」
    「うん!沖縄で見た夕陽、僕ずっと好きだったから」
    灰原のイメージする夏はこんなに明るくて鮮やかで眩しいのに、自分の中での夏がさっきまでいた暗く澱んだ血の匂いがする場所だったことに少し自嘲してしまう。
    灰原を失ってから、なんとか心の奥底に押し込めた記憶。結局、生きている時も死んでからも、自分はあの日から抜け出せなかった。だが、あの日とは違って灰原が連れ出してくれた。手を引いて、また綺麗な場所に連れて行ってくれた。
    「私も、好きだったよ」
    「ならよかった!」
    あの日の夕陽を好きになった理由は、隣で灰原が楽しそうに笑っていたからだ。そしていまも、灰原は隣で笑っている。それがとても嬉しくて、七海は夕陽ではなく灰原の横顔をじっと見つめていた。


    太陽がすっかり沈み橙から深い藍色に変わった空には、いつのまにか丸い月がぽっかりと浮かんでいた。知っているよりも月明かりは眩しくて、夜の海のはずが真っ暗にはならず、白い砂浜はぼんやりと幻想的に光っているようにも思えた。
    「ここが夏の場所なら、他の季節の場所もあるのか?」
    「もちろん!春も秋も冬も全部あるよ!」
    イメージが反映されるのなら、灰原と一緒に過ごしていた日も再現できるのだろうかと、そんな考えが七海の頭に浮かんだ。
    「七海も行ってみる?あ、でも疲れてるならここでゆっくりしてもいいし」
    隣へ顔を向けると、灰原はあの頃のままの姿でこちらを見ている。
    一緒にいた頃、灰原に話したかったことはたくさんあった。灰原を失ってから考えたことも、たくさんある。
    「いや、行きたい。一緒に行ってくれるか?」
    「当たり前じゃん!」
    そう言って、灰原は勢いよく立ち上がった。はにかんだ笑みを浮かべている灰原にフッと頬を緩めた七海は、ゆっくりと立ち上がって隣へ並んだ。


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