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    ミヤシロ

    ベイXの短編小説を気まぐれにアップしています。BL要素有なんでも許せる人向けです。

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    ミヤシロ

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    クロシエでホワイトデーSS。
    今日は72話の放送日。シエルがどうなるかわかりませんが、せめて二次創作の世界だけでも二人が穏やかに過ごしてほしいものです。

    #クロシエ

    ずっと一緒に バレンタインデーのお返しがどちらも同じ菓子と判明して、クロムとシエルは同時に愕然とした。
    ((かぶった……))
     この日は3月14日、ホワイトデーだ。一ヶ月前のバレンタインデーのお礼として菓子を渡す習慣は、やはり日本の商業主義によって世間に浸透した。チョコレートが定番の先月と違いホワイトデーで購入する菓子は多種多様だ。キャンディだったりマカロンだったり。二人は菓子を差し出し直後絶句する。シエルがクロム宅を訪問し眩い笑顔と共に見せたのは、クロムが大切な人の訪れに合わせて示したのは――どちらもバームクーヘンだった。
     誰もが知る有名なメーカーのロゴが、菓子箱を入れた紙袋に書かれている。ロゴを見ただけで中身がバームクーヘンと察した二人は、特にシエルは己のチョイスを強く呪った。
    (マカロンにしとけばよかった…!)
     あるいはキャンディだろうか。ホワイトデーの菓子は数多あって、彼等は同じ品を選ぶなど考えもしなかった。幸いメーカーは異なり完全一致というわけではない。
    「そう落ち込むな」
    「はいッス……」
     クロムは涙目になったシエルの肩を抱いてなだめ、
    「上がってくれ。コーヒーを用意するから待っていてくれ」
    「は、はい!」
     少年をリビングへといざなった。以前トロフィーをぶちまけ滅茶苦茶になった部屋は今ではすっかり整理されている。一人用のソファは処分し、代わりにテーブルと、ゆったりとした二人掛けのソファを買った。彼等が二人でくつろぐのもそう珍しくはなくなった。彼等はバレンタインデーにはチョコを、一ヶ月後にも菓子を贈り合うほどに親密な関係になった。
     
     菓子は食べやすいサイズに予め分けられていて、二人は互いが用意した菓子を両方とも皿に載せる。クロムが淹れたコーヒーが芳香を漂わせ、リビングを落ち着いた香で包み込んだ。落ち込んでいたシエルはいつもの元気を取り戻し、そんな彼を見てクロムもまた微笑する。二人はかつての歪な関係はまるでなく、互いを尊重し想う気持ちのみがあった。
    「まさかかぶるとは思わなかったな」
    「そ、そうッスね…」
     少年の横顔は悄然とし、まるで雨に打たれた子犬のよう。シエルはバトルでは勇ましい姿を見せるが、普段はよくなついた豆柴のように愛らしかった。彼に笑顔になってほしくてクロムは胸の内を打ち明ける。少しだけ恥じらいがあるものの、少年を想う気持ちに偽りはなかった。
    「だが、嬉しくもある」
     己が相手と同じ心でいるという事実を視覚化され、クロムは満更でもない。彼はこの日に贈る菓子の意味を知った上でそれを選択した。
     バームクーヘン。
     直訳すれば“木のケーキ”と呼べるそれは、専用のオーブンを用い熟練の菓子職人によって作れられる。樹木の年輪を連想させるあの焼き目は、菓子職人の腕前を示す指標にもなった。愛する人と歳月を重ねていく。“幸せが続きますように”という意味がこの日のそれには込められていた。
     愛する人と。
    (シエルと)
    ――ずっと一緒に。
    「君と同じことを考えていたと知れて、嬉しかった。ありがとう、シエル」
    「クロムさん……!」
     端正な顔をほころばせる青年にシエルの目が輝きを灯す。
     頬を紅潮させる少年に、青年が心からの微笑みを見せた。
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    ミヤシロ

    DONEバーンと石山のお話。
    また香水のお話です。先月クロムの匂いがどうのと騒いでいましたので、つい書いてしまいます。実は現在も香水ネタでお話を考えていたり。
    彼の香りは 石山タクミが不死原バーンと会う約束をしたその日、バーンは珍しく遅刻してきた。
    「すまない。待たせてしまったね」
     いつもは早い時間に二人とも待ち合わせ場所に到着しているか、あるいはバーンの方が早いくらいだ。石山は“珍しいな”と意外に思うものの、相手に怒りや苛立ちを覚えはしなかった。バーンはベイバトルの時間には度々遅れていたが、石山との約束の時間を破ったことは今日以外に一度もない。そもそもほんの数分の遅れであってバーンが謝るほどでもないのだ。石山は謝罪をさらりと受け入れ相手が向かいに座るのを見つめる。優美な男性の所作は美しかった。
     二人はバーンがマウンテンラーメンを買収して以来定期的に顔を合わせ、互いの近況を報告し合う間柄となっている。彼等の関係は実に良好で、石山のまとう空気も彼が出せるものの中では穏やかである。彼は引退の窮地を救われたがゆえバーンに少なくない恩義を感じている。たかが数分の遅刻で文句を言う気は毛頭なかった。
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    ミヤシロ

    DONEペンドラゴンのお話。アニメ71話の内容を含みます。
    お話を書くにあたって香水を購入しました。某ショップではお試し用が販売されていて便利です。
    Velvet Orchid(Tom Ford)、Mojave Ghost(Byredo)、Arancia di Capri(Acqua Di Parma)
    Velvet~は男性でも使えるらしい。かなり強め。クロムには甘すぎるかも。イメージ香水って難しい。
    夢か現か 気がつけばクロムはベッドに寝かされていた。
     瞬きをし、ぼんやりとしたまま目を開けると、記憶にない天井が翠の双眸に映る。“お目覚めですか”と声を掛けられそちらに視線を遣れば、線の細い若い男が背を向けて本を読んでいた。穏やかだが隙のない男とは面識がなくクロムは相手の名を知らない。男と会話を交わすものの彼は疲労困憊のあまり意識を保てず、すぐさま再び昏睡状態に陥った。
     その後どれほどの時間が過ぎただろうか――再度憶えなき天井を見、クロムはようやく己が連れ去られたのだと理解した。
     頂上決戦で倒れた彼は担架に運ばれ、本来ならばXタワーの医務室に搬入されるはずだった。だが正体不明の者の手に落ち、彼は世間的には行方不明という扱いになった。常人ならば事実を知ったならば恐慌をきたすであろう。あるいは警察に訴え出るか。しかし彼は平然とした表情でもって異常事態を受け入れ、得体の知れぬ者に対しても感情の揺らがせはしなかった。
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