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    Lupinus

    @lupi_eggplant

    テキストを投げ込むスペース/主刀/ファンチェズ

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    POIPOI 46

    Lupinus

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    男さにわ×鬼丸くん(さに鬼)の現パロのようなもの 髭切先輩の紹介で粟田口へやってきた主人公が鬼丸さんと出会い、事情を話して鬼を切ってもらうことになるまで 書きたいところだけ書いているのでシーンが飛びます
    ◆さに鬼現パロ設定【https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1092520&TD=3153950】の具体的な話
    ◆全体が書かれる予定はないです

    ##主刀

    携帯端末が表示する地図はどう見てもここで行き止まりになっている。航空写真に切り替えても、うっそうと生い茂る森が表示されているだけだ。
     なのに目の前には、古いながらもしっかりとした造りの石段が確かに続いている。先輩手書きの地図とも場所は一致している。

    +++

     手近な無人駐輪場に自転車を置いて石段を登り始める。頭上には木々が覆い被さり、昼でもうすぐらいトンネルを作っている。航空写真では、ここに道があるとはとても判定できないだろう。
     見通しの利かない石段は十数歩登ったところで唐突に途切れた。頭上にぽっかりと開けた空からの明るい日差しが照らすのは、築百年をとうに過ぎたのではないかと思われる古民家だった。
     かやぶきの屋根、黄ばんだ障子紙、補修の目立つ木製の玄関口や雨戸。政令指定都市の中心部とは思えない静けさの中に、かん、と何かを打ち付ける高い音が響いた。町中では聞き慣れない音に周囲を見回すと、小ぶりの斧を左手に提げた青年が立っていた。
    「客か」
     人の気配を感じたのか、こちらに顔を向けるよりも先に発せられる声は、静寂の中でもひときわ低く穏やかに聞こえた。
     飛び抜けて長身には見えない。ジーンズにTシャツのラフな装いは、町中ですれ違っても何の印象も残さないだろう。しかしすらりと引き締まった無駄のない体型、そしてシャツの上からもわかる鍛え上げられた背中には言い知れぬ威圧感がある。
    「あ、あのっ……!?」
     呼びかけた声に振り向く青年の側頭部に、ねじれた角が一本生えている。
    「髭切から話は聞いてる。鬼に狙われているらしいな」
     異様な光景に目を瞬かせると、そこには角などどこにも見当たらないありふれた風体の青年が立っていた。
     特徴と言えば、左目につけた白い眼帯。そして色の薄い髪の毛と、眼帯をしていてもそれとわかるほど端正に整った顔立ちくらいのものだ。
    「え。えぇっと、鬼丸さんでいいんですよね」
    「あぁ」
     短くうなずいて、青年は足下に散らばった割木を拾いあつめる。
    「上がっていけ。薪を片付けたら話を聞く」

    +++

    「あの。ま、薪割りって、こんな春先からするもんなんですか」
    「冬までによく乾かしておく必要があるからな。早いに越したことはない」
     日当たりのいい壁際に置いた金属製のラックに、割ったばかりの薪を並べながら青年は淡々と答える。会って早々家に招き入れてくれるのだから不親切な人物ではないようだが、まるで会話がないのはどうにも居心地が悪い。
     玄関のガラス戸は思いのほかするすると開いた。家の中は外見に違わぬ古めかしさだが手入れは行き届いていて、いまどき大河ドラマでしか見ないような黒い置き型電話機の上には小さな花が飾られている。

     床の間のある客間らしき一室に通されると手ぶりで座布団を勧められた。
    「茶でも入れるか」
    「あっ、いえそのお構いなく」
    「そうか」
     盆栽を火にくべる老人を描いた掛け軸の前にあぐらを組んだ鬼丸は、やはり自分と同世代の青年としか見えない。初対面の瞬間、角があるかのような印象を受けたのはなんだったのか。
     先輩の紹介でここへ来ることになったいきさつを告げると、無表情にこちらの顔を凝視していた鬼丸はようやく口を開く。
    「あいつは今でも鬼切と呼ばれてるのか」
    「え? いや、最近はもっぱら兄者ですね」
     去年の秋、先輩の弟が忘れ物の弁当を届けにキャンパスまで追いかけてきたことがあった。嵐山の寺院で華道の修行をしているという先輩の弟は兄とはまた違った意味で浮世離れしていて、兄さんでも兄貴でもなく兄者兄者と連呼して通りすがりの人々から好奇の目を向けられていた。それを恥ずかしがるでもなく平然と受け止めていた先輩は、それ以来サークル内で兄者と呼ばれるようになった。
     鬼切とはまたものものしいあだ名だが、マイペースな先輩のことだ。以前から人間離れした事件を起こして妙な名前を付けられていたに違いない。
    「あの、これ。鬼退治の代金はおいしい日本酒って聞いたんで持ってきました、聚楽第っていう洛中の蔵元の」
     リュックから取り出した瓶を一瞥して鬼丸は首を傾げる。
    「そんなものがなくても鬼が出れば切りに行くが」
    「えっ」
     放課後にわざわざ二条城の近くまで脚を伸ばし、部室の冷蔵庫に厳重に保管しておいたというのに。また先輩のうろ覚えかと困惑していると、鬼丸もどうやら同じことを考えていたらしい。
    「あいつがいいかげんなことを言ったらしいな……まぁ、もらっておく」

    +++

     無造作に置かれた白木の箱を開けると、柄から鞘の先まで一メートルはありそうな堂々たる日本刀が納められている。触れるのもためらわれるほど美しい赤に塗られた鞘を鬼丸は軽々と持ち上げる。ふだんから扱い慣れた、しかし決して粗雑ではない手つきである。
    「鬼丸国綱だ」
     紹介するような口調からすると、それがこの刀の名前だろうか。
    「鬼丸さんと同じ名前なんですね」
     それには応えず、鬼丸は刀を手に立ち上がる。
    「こんな町中で振るうわけにもいかないからな。山科あたりまで出向いておびき寄せる。となれば餌が必要だが」
     そこで言葉を止めた鬼丸の視線の先にいるのは自分である。
     鬼をおびき寄せる餌とはもちろん、鬼が好んで狙っているものに違いない。となると……
    「心配するな」
     愛想のない口元がわずかにゆるんだような気がした。
    「一匹倒せば事足りる。あんたに手を出すとどうなるかを教えてやればじゅうぶんだ」
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    recommended works

    Lupinus

    DONE男審神者×五月雨江(主さみ)の12/24
    つきあってる設定の主さみ クリスマスに現世出張が入った話 なんということもない全年齢
    「冬の季語ですね」
    「あっ、知ってるんだね」
    「はい、歳時記に記載がありましたので。もっとも、実際にこの目で見たことはありませんが」
    「そうだよね、日本で広まったのは二十世紀になったころだし」
     さすがに刀剣男士にとってはなじみのない行事らしい。本丸でも特にその日を祝う習慣はないから、何をするかもよくは知らないだろう。
     これならば、あいにくの日取りを気にすることなくイレギュラーな仕事を頼めそうだ。
    「えぇとね、五月雨くん。実はその24日と25日なんだけど、ちょっと泊まりがけで政府に顔を出さないといけなくなってしまったんだ。近侍のあなたにも、いっしょに来てもらうことになるのだけど」
     なぜこんな日に本丸を離れる用事が入るのかとこんのすけに文句を言ってみたものの、12月も下旬となれば年越しも間近、月末と年末が重なって忙しくなるのはしょうがないと押し切られてしまった。
     この日程で出張が入って、しかも現地に同行してくれだなんて、人間の恋びとが相手なら申し訳なくてとても切り出せないところなのだが。
    「わかりました。お上の御用となると、宿もあちらで手配されているのでしょうね」
     現代のイベント 1136

    Norskskogkatta

    PAST主麿(男審神者×清麿)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    今まで審神者の分は買ってなかったのに唐突に自分の時だけ買ってきて見せつけてくる主におこな清麿
    「ほらこれ、清麿のうさぎな」
    「買ったんだね」
    主に渡されたのは最近売り出されているという僕ら刀剣男士をモチーフにしたうさぎのぬいぐるみだ。面白がって新しい物が出るたびに本刃に買い与えているこの主はそろそろ博多藤四郎あたりからお小言を食らうと思う。
    今回は僕の番みたいで手渡された薄紫色の、光の当たり具合で白色に見える毛皮のうさぎに一度だけ視線を落としてから主の机の上にあるもうひとつの僕を模したうさぎを見やった。
    「そちらは? 水心子にかな」
    「ほんと水心子のこと好きな」
    机に頬杖を突きながらやれやれと言った感じで言う主に首をかしげる。時折本丸内で仲のよい男士同士に互いの物を送っていたからてっきりそうだと思ったのに。
    「でも残念、これは俺の」
    では何故、という疑問はこの一言ですぐに解消された。けれどもそれは僕の動きを一瞬で止めさせるものだった。
    いつも心がけている笑顔から頬を動かすことができない。ぴしりと固まった僕の反応にほほうと妙に感心する主にほんの少しだけ苛立ちが生まれた。
    「お前でもそんな顔すんのね」
    いいもん見たわーと言いながらうさぎを持ち上げ抱く主に今度こそ表情が抜け落ちるのが 506

    Norskskogkatta

    PAST主こりゅ(男審神者×小竜)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    小竜視点で自分の代わりだと言われてずっと考えてくれるのは嬉しいけどやっぱり自分がいい小竜
    「ね、みてこれ! 小竜のが出たんだよー」
    「へーえ……」
    我ながら冷めきった声だった。
    遠征帰りの俺に主が見せてきたのは俺の髪の色と同じ毛皮のうさぎのぬいぐるみだった。マントを羽織って足裏には刀紋まで入ってるから見れば小竜景光をイメージしてるってのはよくわかる。
    「小竜の代わりにしてたんだ」
    「そんなのより俺を呼びなよ」
    「んー、でも出かけてていない時とかこれ見て小竜のこと考えてるんだ」
    不覚にも悪い気はしないけどやっぱり自分がそばにいたい。そのくらいにはこの主のことをいいなと感じているというのに本人はまだにこにことうさぎを構ってる。
    今は遠征から帰ってきて実物が目の前にいるってのに。ましてやうさぎに頬ずりを始めた。面白くない。
    「ねぇそれ浮気だよ」
    「へ、んっ、ンンッ?!」
    顎を掴んで口を塞いだ。主の手からうさぎが落ちたのを横目で見ながらちゅっと音をさせてはなれるとキスに固まってた主がハッとしてキラキラした目で見上げてくる。……ちょっとうさぎが気に入らないからって焦りすぎた。厄介な雰囲気かも。
    「は……初めて小竜からしてくれた!」
    「そうだっけ?」
    「そうだよ! うわーびっくりした! 619

    Norskskogkatta

    PAST主般/さにはにゃ(男審神者×大般若)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    主に可愛いと言わせたくてうさぎを買ってきたはんにゃさん
    「どうだいこれ、可愛らしいだろ?」
    主に見せたのは最近巷で話題になっている俺たち刀剣男士をモチーフにしたうさぎのぬいぐるみだ。といっても髪色と同じ毛皮に戦装束の一部を身につけているだけだが、これがなかなか審神者の間で人気らしい。
    「うさぎか?」
    「そうそう、俺のモチーフなんだぜ」
    うちの主は流行に疎い男だ。知らないものを見るときの癖で眉間にシワを寄せている。やめなって言ってるんだがどうにも治らないし、自分でも自覚してるらく指摘するとむっつりと不機嫌になる。そこがこの男の可愛いところでもあるがそれを口にすると似合わんと言ってさらにシワが深くなるからあまり言わないようにはしてる。厳しい顔も好きだがね。
    そんな主だから普段から睦言めいたものはなかなか頂けなくて少しばかりつまらない。そこでちょっとこのうさぎを使って可愛いとか言わせてみようと思ったわけさ。
    主に手渡すと胴を両手で持ちながらしげしげと眺めている。耳を触ったり目元の装飾をいじったり。予想よりだいぶ興味を示してるなぁと見ているときだった。
    「ああ、可愛いな」
    主が力を抜くように息を吐く。
    あ、これは思ったより面白くないかもしれない。そ 874

    Norskskogkatta

    PAST主肥/さにひぜ(男審神者×肥前)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    おじさん審神者がうさぎのぬいぐるみに向かって好きっていってるのを目撃した肥前
    とうとう買ってしまった。刀剣男士をイメージして作られているといううさぎのぬいぐるみの、恋仲と同じ濃茶色に鮮やかな赤色が入った毛並みのものが手の中にある。
    「ううん、この年で買うにはいささか可愛すぎるが……」
    どうして手にしたかというと、恋仲になってからきちんと好意を伝えることが気恥ずかしくておろそかになっていやしないか不安になったのだ。親子ほども年が離れて見える彼に好きだというのがどうしてもためらわれてしまって、それではいけないとその練習のために買った。
    「いつまでもうだうだしてても仕方ない」
    意を決してうさぎに向かって好きだよという傍から見れば恥ずかしい練習をしていると、がたんと背後で音がした。振り返ると目を見開いた肥前くんがいた。
    「……邪魔したな」
    「ま、待っておくれ!」
    肥前くんに見られてしまった。くるっと回れ右して去って行こうとする赤いパーカーの腕をとっさに掴んで引き寄せようとした。けれども彼の脚はその場に根が張ったようにピクリとも動かない。
    「なんだよ。人斬りの刀には飽きたんだろ。その畜生とよろしくやってれば良い」
    「うっ……いや、でもこれはちがうんだよ」
    「何が違うってん 1061

    Norskskogkatta

    PAST主村/さにむら(男審神者×千子村正)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    なんだかよくわからないけどうさぎのぬいぐるみが気に入らない無自覚むらまさ
    「顔こわいんだけど」
    「……huhuhu、さて、なんででしょうね?」
    近侍の村正がいつも通り隣に控えてるけどいつもより笑顔が怖い。
    手の中には村正と同じ髪色のうさぎのぬいぐるみがある。休憩中の今は最近販売されたそれを手慰みにいじっていたのだった。
    「尻尾ならワタシにもありマスよ」
    ふわふわの丸い尻尾をつついていると村正が身体を捻って自分の尻尾をちょいちょいと触る。普段からそうだけど思わせぶりな言動にため息が出る。
    「そういう無防備なことしないの」
    「可笑しなことを言いますね、妖刀のワタシに向かって」
    刀剣男士には縁遠い言葉に首を傾げつつも村正はいつもの妖しげな笑いのままだ。わかってないなぁとやり場のない思いをうさぎに構うことで消化していると隣が静かだ。
    ちらっと横目で見てみると赤い瞳がじっとうさぎのぬいぐるみを見つめている。その色が戦場にある時みたいに鋭い気がするのは気のせいだろうか。
    「なに、気になるの」
    「気になると言うよりは……胸のあたりがもやもやして落ち着きません」
    少しだけ意外だった。自分の感情だったり周りの評価だったりを客観的にみているから自分の感情がよくわかっていない村正 828

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    桃を剥いてたべるだけのさにちょも
    厨に行くと珍しい姿があった。
    主が桃を剥いていたのだ。力加減を間違えれば潰れてしまう柔い果実を包むように持って包丁で少しだけ歯を立て慣れた手付きで剥いている。
    あっという間に白くなった桃が切り分けられていく。
    「ほれ口開けろ」
    「あ、ああ頂こう」
    意外な手際の良さに見惚れていると、桃のひとつを差し出される。促されるまま口元に持ってこられた果肉を頬張ると軽く咀嚼しただけでじゅわりと果汁が溢れ出す。
    「んっ!」
    「美味いか」
    溺れそうなほどの果汁を飲み込んでからうなづいて残りの果肉を味わう。甘く香りの濃いそれはとても美味だった。
    「ならよかった。ほら」
    「ん、」
    主も桃を頬張りながらまたひとつ差し出され、そのまま口に迎え入れる。美味い。
    「これが最後だな」
    「もうないのか」
    「一個しか買わなかったからな」
    そう言う主に今更になって本丸の若鳥たちに申し訳なくなってきた。
    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
    片端だけ口を吊り上げて笑う主に嫌な予感がする。
    「雛鳥に餌やってるみたいで楽しかったぜ」
    「…………わすれてくれ」
    差し 588