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    ゆきうさぎ

    後書き、下品なやつ、軽い小話などを置いてます。

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    ゆきうさぎ

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    pixivの公式企画のために、テーマ「香り」で書いてみたものの、諸事情によりボツにしたものです。
    受けだけに媚薬的な効果のある香水の話。

    #腐向け
    Rot
    #高村薫
    #リヴィエラを撃て
    #二次創作
    secondaryCreation

    その香り、危険につき ロンドン、メイフェア。春の夕刻。
     エードリアン・ヘアフィールドは、猫のエドガーを片腕に抱えたまま、届いたばかりの小包を開封していた。自身がオーナーを務める香水ブランドの、開発中の新作だった。
    「えらく派手な箱だな」
     彼はうんざりして小さくため息をつく。香水部門はどうやらまた妙な企画に手を出したらしい。外箱を開けて取り出してみると、試作品の小瓶のラベルには、小さな文字でこう書かれていた。
    “Selective Aphrodisiac – Only effective on receptive temperament(選択的媚薬―受容的な気質にのみ効果あり)”
    「何だそれ?」
     エードリアンが眉をひそめながら蓋を取った瞬間、
    「ミャウ!」
     突然、エドガーが香水瓶に飛びかかり、猫パンチを食らわせた。
     パシャッ。中身が数滴、エードリアンの白いシャツに飛び散る。薔薇とジャスミンのような、濡れた花弁を思わせる香りがふわりと立ち上った。
     そこに執事が現れ、客の来訪を告げた。
    「シンクレア様がお見えになりました」
    「ああ……ここへ通してくれ」
     この後、ノーマンとディナーに出かけ、今後の演奏会や演奏旅行の予定について、諸々の打ち合わせをすることになっていた。香水がかかってしまったシャツを着替えようかとも考えたが、まあ、いいか、と思い直す。
     執事に案内されて書斎に入ってきたノーマンは、何かに気づいたように足を止め、深く息を吸い込んだ。
    「君……何だかすごくいい匂いがする」
     青い瞳がふいに潤んで、まるで子猫のような眼差しに変わった。彼はふらふらとエードリアンに近づくと、シャツの襟元に顔を埋めた。
    「ああ、何だ、この匂い……。あたま、ぼーっとする……」
    「おい、ノーマン、離れろ」
     まさか、香水の効果か? エードリアンは慌てて相手を引き剥がそうとしたが、時すでに遅し。ノーマンは離れず、反対にその腕がするりと背中に回った。耳元に聞こえる彼の呼吸が甘く乱れている。これはまずいぞ。実にまずいことになった。
    「エードリイ、何か変だ……、身体が熱い……」
     ディナーの予約はキャンセルすることにした。もつれ合うようにしてソファに倒れ込んだ二人の隣で、エドガーが一つくしゃみをした。
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