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    ritsuka_nora

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    ritsuka_nora

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    書き殴り。🍭と🐴が割と仲良しで📿待ちしてる。

    #空左馬
    emptyLeftHorse
    #腐
    #乱数
    randomNumber

    「サマトキサマって、年下に甘いよねぇ」
    藪から棒な言葉だと分かっていても言っちゃう。半殺しにするとか、なかなかの暴言吐きかけたボクにすら訪ねてきたからってお茶出すし、飴もくれる。笑顔を振りまけば事務所に残ってた舎弟さんらもちょっと笑ってくれる。教育が行き届き過ぎていて怖いくらいだ。ここ、ヤクザの事務所だよね?ホワイト企業の間違いかな?
    「……違法マイクの効果が切れるまで、だ」
    「またまた〜、ほぼいつもこうじゃん?」
    唸りそうな勢いの左馬刻は、定位置のでっかい机の前。ソファにいるといつも以上に見上げる形になるけども、怖いとか圧迫感あるとかは一切無い。
    「クーコー、もうちょっとでヨコハマ着くんだよね」
    その少しの時間では違法マイクの効果は切れない。寂雷だって診察したし、マイクの性能調べたイチローやウサちゃんも三日はかかるって言ってた。死に直結するような効果ではないものの、左馬刻みたいなタイプにはストレス過ぎるものだ。
    「本音しか言えなくなる、って誰得な違法マイクなんだろーね☆」
    ボクには面白いからいいけどさ。楽しそうだもの。ゲンタローとかに使ってみたい。怒られるかもだけど。
    見栄とか、プライドとか、メンツだとかが大事なヤクザさんには迷惑極まる代物だってわかるよ。分かるから護衛に来たんだ。クーコーが着けば問題なくボクも解放される、ほんのわずかな間の用心棒。美味しいお茶と、お菓子貰えるし役得って思ってしまう。ごめんねぇ。
    「もう、いい加減クーコーにヨコハマに住んでもらえばいいじゃない。何かあるとすぐすっ飛んで来てくれるって言ってもさぁ」
    「来てくれる、から、大丈夫なんだよ」
    おや、おやおや。おやおやおやぁ。左馬刻ともあろう人が。本音オンリーだとこうも可愛いこと言っちゃうの。
    「オメーが羨ましいって、思ってばかり、だがよ、先生はシンジュクに居るし」
    「そー?」
    「空却が、慌ててヨコハマに向かって来てる、って、聞くと、安心する」
    わぁ、可愛い。可愛いから撫でちゃおう。机に飛び乗り左馬刻のサラサラの髪を撫で回す。普段なら怒鳴られて振り払われる行為だけども、気が滅入っているのかリアクションが無かった。
    「サマトキサマは愛されてるね、ナゴヤから新幹線飛び乗って来てくれるってすごいじゃん」
    なでなでしてたら左馬刻が机に突っ伏した。え、何、かわいい。
    「恥ずかしいことさらっと言うな……」
    「……照れちゃった?」
    突っ伏して顔を見せない左馬刻の耳が赤い。首の後ろのあたりも赤い。色が白いからすごく目立ってる。舎弟さん達も部屋の中にはいないし、たまにしか見れないこういう姿の時は甘やかしとこう。たくさん傷付けてしまったこの青年は普段甘やかさせてくれやしないもの。
    「東都にも、お寺とかいっぱいだよね。修行ってやつは出来るんじゃないの?」
    「何処ででも、できるのは、できる」
    言葉を区切り辿々しくしゃべるのは多分、マイクの効果に抗いたいんだと思う。思うから邪魔しない。茶化さない。
    「アイツの親父さん、会ったことあるよな、お前」
    「あるよー?」
    とっても、お坊さん!っていでたちだった記憶。あまり会ったことはないが、お坊さんってみんな声が良いとも思う。
    「空却を、秒で簀巻きにできんだよ、親父さん」
    「わあ、ばいおれんす」
    思わず言ってしまったけども、クーコーってめちゃくちゃケンカ強いよなと思い返す。男だとか力があるとかは抜きに、腕っぷしのある19歳をふんじばれるお父さん、すごいな。……え、すごい。
    「せっかく、手本がいるんだ、すげぇのが」
    「……」
    左馬刻がもぞもぞと腕で顔を隠す。どんな表情をしているかよくわからない。
    きっと、そばにいてほしいんだろうなぁ。左馬刻、とっても寂しがりだもん。甘やかして守る相手をほしがるもん。それと同時に、甘やかしてもほしがるもん。左馬刻はとっても愛されているけども、クーコーはすんごい重量級の愛情を向けられているなあ。
    「しんどい時くらい、甘えても怒られやしないと思うよ☆」
    むしろ喜ばれたり、凄まじく甘やかされたりするんじゃないのかな。寂雷だって、ごく稀に疲れたからって電話してくるし。寝なよと言っても寝ない三十五歳児は、ちょっと、可愛い。
    「……、考えとく」
    違法マイクにやられてなかったら、これくらい平気だと左馬刻は嘯いてたろうな。
    「そろそろ新幹線、駅に着くよね。お迎え行く?付き合うよ!」
    「……行く」
    「オッケー、お出かけ!」
    腕っぷしなら左馬刻が強い。ラップだったら今だけ、ボクが守れる。
    でも、両方をがっつり賄ってしまう恋人が隣にいたら不安も小さくなるはずだ。左馬刻の手を引っ張って事務所を出る。
    「おい、乱数、引っ張んなや」
    「早くクーコーに会いたいもん、タクシー捕まえちゃお」
    「……おう」
    ボクがそばにいた間にほんの少し移った香水の匂いとか、左馬刻は気づいてなさそうだ。お菓子の匂いも、きっと気付いてない。
    「……んだよ」
    「ううん、なんでもなーい!」
    タクシーに左馬刻を詰め込んでボクも乗り込む。クーコーも、すぐにすっ飛んでくるくらいに心配なら手元に置けばいいとか、思っちゃうんだよなぁ。ボクとしては。
    「早く上書きしてもらいなよー」
    二人とも苦労してるねぇ。頑張ってよ。たくさん幸せにおなりと願ってしまうんだから。
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