朝の水やり 閉じた瞼の奥に淡い光を感じ、微睡に揺蕩っていた意識がゆっくりと覚醒する。その緩やかな流れに身を任せ、ゆうるりと瞼を開く。
ぼんやりとした寝ぼけ眼の先、窓越しに差し込む淡い朝焼けに誘われるように、暁人は寝台を静かに抜け出した。未だ夢の中に留まっているらしい己が相棒を起こしてしまわないよう、細心の注意を払って。
カラカラと、静かに窓サッシをスライドさせてこじんまりとしたベランダに出る。真昼間ならウンザリするほどの暑苦しさに包まれる夏特有の空気も、早朝にあたる今の時間であればその鳴りを潜め。涼やかな風が、少し寝癖の付いた暁人の髪を撫で去って行く。
夏の暁、旱の朝曇。
東の空が白く明らみ、空全体を覆っていた闇夜は西の彼方へと追いやられていた。空にかかる靄のような曇り雲は、今日も厳しい暑さに見舞われることの証であろう。
2024