適材適所「雨竜くん、今日の会食はお酒を伴いますので同行は不要ですよ」
嫌悪感が滲み出ないようになんでもないような顔をして雨竜に告げる。雨竜は幸運なことに気づかなかったようで「はい、お気をつけて」といつものように言葉を返してきた。
先方が指定した待ち合わせ場所に向かうと、ちょうど会食相手の女性社長と秘書の男が車から降りてくるところだった。
「良いタイミングでしたね、今夜はご招待いただきありがとうございます。秘密の場所、とは?」
向こうが指定してきたのは待ち合わせ場所のみで、肝心な会食をおこなう場所はついぞ明かされなかった。ビジネスにおいては優秀であり学ぶべき点も多いが、サプライズであったり、突拍子もない提案を挙げてくることもある少し癖のある女性だった。
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