書きたいとこだけ そのろく 楽屋に二人きりになるその瞬間、ただ隣に座っているだけだった距離をそっと詰めた。ペンを持っていた手をいつも掴んでる腰へと回す。おれに気付いたこいつの身体がびくっと跳ねることも構わずに顔を寄せると、ぎゅっと目を瞑られた。
おれの顔が近付いたら、キスされるってもうわかっちゃってる。しかも恥ずかしいからなのか、ぐっと眉間に皺を寄せちゃってさ。可愛くって仕方がないから、二人になったらついキスを仕掛けてしまうんだ。
「ん……」
最初は軽く、でもすぐくっつけるだけじゃ足りなくなって唇の表面を舌でなぞれば、そっと口が開かれる。中に舌を差し入れると閉じたままのまつ毛が震えるのがこいつの癖。それを見るのも好きだから、おれはいつもキスする時に目を開けてる。舌で気持ちいいところをなぞるたびに、ふるふる震えるまつ毛を見るのがたまんない。それと真っ赤に染まった耳と頬も、おれとのキスで変わっていくのがぞくぞくする。
とん、と胸を叩かれた時が息が苦しくなった合図だから離れるしかない。正面を向いているのに横を無理やり向かせている体勢も辛いだろうし。離れきれなかった銀糸がまだ繋がっていて、ようやく切れた。
「ふ……ぅ、」
「きもちかった?」
「……ぅ……はい……」
まだ近い距離でそう言うと、ようやく見えた菫色の瞳が見えてつい嬉しくなる。けれど視線を合わせるのは恥ずかしいのか、おれのほうを向いてはくれないらしい。おれだけを見てくれる濡れた瞳も好きなんだけどな。
「もっかいしていい?」
すり、とまだ赤い耳に触れると身体が震えて、こいつをもっと欲しくなる。楽屋だからこれ以上はしないけど、いつでも求めたくなるくらいにスオ〜の味は甘くて癖になってしまうんだ。
「……お時間が、まだあるなら」
いいって素直に言えないところも、可愛くって大好きだ。なら遠慮なく頂きますか。くすりと小さく笑ってから、再び閉じられる瞳を見ながら、桜色の唇に噛み付いた。