好きな匂い。人間誰しも個人の匂いってあると思うんだ。柔軟剤だったり、ボディーソープだったり、まあ色々。その中でも、おれの好きな匂いがある。今まで匂いなんてそんなに気にしたことはなかったけど、ふわっと香る優しくて甘い匂い。鼻先を掠めて、釣られるようにして匂いを辿っていくと、その先にいたのは司だった。前は隣に居てもあまり匂いはわからなかったのだが、今日はやけに鼻が利くらしい。風に乗っていい匂いがする。
「司〜!ちょっといい?」
「レオさん、どうかしましたか?」
「うん、そのまま。」
振り返る司を抱きしめた。首筋からスンスンと匂いを嗅ぐ。やっぱり、辿ってきたのは司の匂いだ。なんの匂いなんだろう?花…とはちょっと違うし…石鹸とも少し違うような…?
「ちょ、ちょっと」
「あぁ、ごめん。」
「一体急になんなのです?人の匂いを嗅ぎまくって…私、そんなに臭いますか」
「違うよ、そうじゃなくって。」
「では、どうしたのですか?」
「いい匂いがするなって思って、匂いを辿ってきたら司だったんだよ。」
「レオさん、犬かなにかですか」
「なぁ、司はなんでそんなにいい匂いがするんだ?」
「そう言われましても…。私、自分の匂いはあまりわかりませんし…。」
「そういうもんか。」
「はい。ちなみに、レオさんの匂い、私は好きです。」
「おれ?どんな匂い?」
「なんだか、落ち着くような…。そうですねぇ…おひさまみたいな匂いがします♪」
「そっかぁ〜!おひさまかぁ♪」
「つかさは、どんな匂いがしますか?」
「もうちょっとで思い出せそうなんだよなぁ〜!なぁ、もう少し匂い嗅いでもいい?」
「いいですよ♪」
司を抱きしめて、顔を埋めた。しばらくして、やっと思い出した匂いの正体。
「わかった!」
「なんの匂いですか?」
「司、ふわふわの赤ちゃんの匂いがする♪」
「あ、赤ちゃんですか?」
「うん、ちょうどほっぺもこんな感じでふわふわプニプニで気持ちい…♪」
「ふふっ♪レオさんくすぐったいですよ♪」
「おれ、司の匂い大好き!」
「じゃあ、特別に今日は一緒の布団で寝ますか?」
「いいの?やったー♪」
「つかさも、その…レオさんの匂いに包まれて寝たいなって…。」
「うん♪」
その夜、お互いに好きな人の匂いに包まれて同じ布団に入り眠りについた。司はいつもより寝付きも良くて、気づけば夢の中。好きな人の匂いだから好きなのか、それとも好きな匂いが好きな人からしてくるのか…。答えはわからないけど、おれの好きな司は赤ちゃんみたいな匂いがする。甘くてふわふわしているそんな司の匂い。匂いまで可愛いなんて、また司の好きなところが一つ増えてなんだか嬉しくなる。隣で赤ちゃんみたいにすやすやと眠る司の頬にちゅっと優しくキスをして、抱きしめながら眠りについた。