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    湯殿作ってるのは、もう風呂のときですらオジサンを外に出さないためです。
    このあと踊り子の格好をさせたい。

    捕虜ト捕虜トの踊り子

    アキレウスによって暴かれた玉座の真下、誂えられた牢にて捕えられたヘクトールは、その宣言通り捕虜として地上へと帰還させられた。
    久方ぶりの地上は目の前が真っ白になるほど眩しく、目を細めているうちに気づけば手枷足枷で身動きを封じられていた。帰還するというアキレウスに、まさか足枷を馬に括られ引きずられやしないだろうかと疑いの目をかけたが、朗々と部下に指示を出すアキレウスからそのような仄暗い企みは気配は感じられない。かと言って荷車があるわけでもなく、さて自分はどうやって連れていかれるのかと一行の動向を見るにとどまっていると、馬にまたがり忙しなく指示を出していたアキレウスから声がかけられた。
    「ヘクトール、行くぞ」
    「……いや行くぞって言われても。こちとら馬もなければ荷車もない、足ですら満足に動かせないんですがねぇ」
    「おう。だから、腕伸ばせ」
    「腕?」
    言われた通り、手枷で繋がれた腕を天に向かい伸ばしあげると、その片方をむんずと捕まれ、上方へと引きあげられた。
    僅かな浮遊感のあとに訪れたどすんという衝撃に思わず目をつぶる。暴挙を働かれ不服を訴える馬に嘶きとゆらゆらと揺れる体に恐る恐る目を開けると、立っていた場所より上半身一つ分ほど高い場所にいることを知る。
    「これでいいだろ。落ちんなよ」
    真後ろから聞こえた声に振り返ると、小憎たらしい美顔が見える。そこでようやく、ヘクトールは自分がどこにいるのか理解した。

    ――どこに捕虜を自分の馬に、しかも自分がいる鞍の上に乗せる武将がある!

    見開かれたヘクトールの瞳にアキレウスが動じる様子もなく、一行は一路アキレウスが守る国へと歩を進めた。
    到着するやいなや、アキレウスは国王に勝利と戦利品の報告すると言い、ヘクトールを抱えたまま王の謁見を申し出た。
    その言葉を聞き、ヘクトールの体がぎくりと固くなる。

    ヘクトールは、この国よりはるか彼方、どれだけ眺めても影すら見えない東の果て国の第一王子だ。
    国を弟へと任せ、西へと赴いた理由は広域貿易と販路拡大に伴う障害排除。その過程で、わざと弱小国に捕われ、あの手この手で看守を、果ては国王すら騙しあげ、自身の持ちうる戦略と戦術でいくらかの勝利を手にさせた。全ては、自国の貿易を有利に進めるため。乗っ取った弱小国を傀儡とし、東での販路を牛耳るつもりだった。
    企てた計画はすこぶる順調だった。
    東の中でも武力・経済ともに高度な発展を見せているアキレウスの国が出張ってくるまでは。おかげでまんまと負けを見ることになり、計画以前に自身の身の安全すら危ぶまれる結果に陥ってしまった。

    転がされた玉座の前。
    金銀財宝で飾られた絢爛豪華な椅子に座る西の王は、ヘクトールの目から見れば呑気の塊に見えた。よほど良い参謀、良い戦士に恵まれているのだろう。でっぷりと肥え太った王に世を切り開く政治能力はないように思えた。その予想は違うことなく、目の前に転がるヘクトールの身分に王が気付いた素振りはなかった。王は「凶悪で檻に閉じ込めても風車のごとく回る口先によって誰彼と誘い込む、自室で監視下に置きたい」というアキレウスの申し出にも、なんの疑いを持つことなく二つ返事で了承を下した。
    斯くして、ヘクトールは「アキレウスの監視下に置かれる捕虜」となった。
    ヘクトールは再びアキレウスに抱えられ自室へと連れられた。アキレウスは早々に抱えたヘクトールを寝床に放ると、部屋の角を眺め、得た報奨金で湯殿を造る計画を練っている。そんなアキレウスに、ヘクトールはなぜ、と問うた。
    「君は、オジサンの価値なんて知らないでしょう?なんで、捕虜なんかに……」
    「アンタに価値があるのか?」
    しまった、とヘクトールは顔を強張らせる。
    「あるんだな。わかった、それは追々調べるとして……。ヘクトール、なぜ俺がお前を捕虜にしたか、だったな」
    ひたりひたりと寄るアキレウスから離れたくとも、嵌められた枷はそう簡単に動くことを許してはくれなかった。
    顎を捉えられ、そのままぐいと引かれれば、アキレウスの黄金の瞳と視線がぶつかる。
    「その目だ。あの地下の薄暗い檻の中で、その深い緑だけが一層美しく輝いていた。捕らえても枷をつけても失われない、獣のように鋭い眼光。俺は、それに捕らわれた」
    「……っ、はぁ?!」
    「なぜそう強く在れる?お前の強さはどこにある?教えてくれ、ヘクトール」
    そのまま柔らかいベッドの上に押し倒され、顔が寄る。唇に触れた柔らかなものが何であるか。ヘクトールは知りたくもなかったが、眼の前にある黄金の瞳が煩いほど正解を宣っている。不躾にも口内へと入り込もうとするぐねぐねと動く舌先へ、ヘクトールは戸惑うことなくぶつりと歯を立てた。
    「っ、く、ぅ!」
    「おちょくるんじゃないよガキ。オジサンの強さ?君に捕まってるんだ、そんなものありゃしないさ」
    アキレウスの興味を削ごうと口を回すが、こちらをみる瞳はより一層輝きを増している。噛まれた舌を曝け出し、痛みに顔を歪めるアキレウスは言う。
    「そら、その態度だ。今、アンタは囚われの身だ。なのにそのでかい態度、自信と余裕……いつでも俺のもとから逃げ出せる。そう言ってるようにしか見えねぇ」
    「っ、」
    いくら鉄を曲げるほどの力があれど、話す素振りから感じられた直情型の性格を思えばすぐに口車に乗せれられる。そうすれば、再び日の目を見るのも時間の問題。たしかにヘクトールはそう思っていた。
    「アンタが知りたいんだ……何を信じれば、そこまで強くあることができる?どれだけ貶めても、その瞳に宿った強さはあり続けるのか?教えてくれ、ヘクトール」
    顎を包み込むように鷲掴みをされ、力を入れられれば自然と口が割れる。合わせた唇の向こうから、厚ぼったい舌が差し入れられ、喉の奥を擽る。再び刃向かえるほどの力を入れることは叶わない。ぞわりとした寒気に似た感覚が背を這うのを味わいながら、ヘクトールはアキレウスに捕らえられたことを心の底から後悔していた。

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