これも治療のため腹が破裂する。いや、いっそしてくれた方が楽になる。
座り込みたい気持ちを堪えて、なんとか足を前へと進める。隣を歩む小平太は半分意識がないらしく、あっちへふらふらこっちへふらふら、それでも転ばず進んでいるのだから大したものだ。後ろからついてくる文次郎は、さっきからしゃっくりが止まらない。
三人でまんじゅう百個を平らげた帰りである。きり丸がバイト先のまんじゅう屋でとんでもないノルマを課されたと泣きついてきたのだが、それを全て先輩に押しつけるのはいかがなものか。
「ぐっ!?」
ふらついていた小平太が、突然文次郎の腹を殴った。
「っバカタレ、中身が、出る……」
文次郎が覇気なく小平太を罵る。
「でもしゃっくりは止まっただろ?」
言いながら、小平太はまた拳を突き出した。文次郎がのろのろと避ける。
「止まったんだから、もう殴らなくていいだろ」
「ただ歩くだけだと眠くてさー」
「っく」
長次の口から出た音に、つまらなさそうに口を尖らせていた小平太がこちらを向いた。
「待て、違う……ひっく」
「大丈夫だ長次、私が治してやる」
小平太の目がぎらりと光る。何発かのジャブを長次がかわしたあと、小平太の口から盛大な音が漏れた。
「ひーっく」
「ふへへへへ……私に任せろ」
「わーっ、待て長次!」
今度は笑顔の長次が小平太の腹を狙う。
しばらくろ組二人の攻防が繰り広げられたあと、高みの見物を決め込んでいた文次郎のしゃっくりまで再発し、かくして事態は三つ巴の争いへともつれ込んだのであった。