ある日の夢④私は学園の池を泳いでいた。
だがおかしい。いくら泳いでも池の縁にたどり着かない。その場で立ち止まろうとしたら、池の底に足が付かなかった。慌てて立ち泳ぎをする。いつもは浅い池なのに。
池には底がなくなっていた。深く、どこまでも水が続いている。ずうっと奥の方は暗くなっていてよく見えない。
その水の中、小平太が沈んでいくのが見えた。目を閉じている。顔が青白い。
さーっと血の気が引いた。まさかそんな、嘘だ。いや、まだ間に合う。すぐに助ければ。
潜ろうとするが、体が浮き上がってしまって、小平太にはたどり着けない。何度繰り返しても同じ。いくら水を蹴っても、小平太との距離は広がっていくばかり。小平太は暗い底の方へと沈んでいく。
目が覚める。
無性に不安になった。
隣で眠っている小平太の頬を触る。体温を確かめたかった。
「……どうしたんだ」
小平太が眠そうな声で言う。
「池の夢を見た」
「ああ、雨が降っているからな」
言われてみれば、外はざあざあ降りのようだった。耳が拾った雨音から水を想起したのか。
「現実で起きていることが夢に反映されることって、あるよなあ」
小平太は少し目が覚めたのか、さっきよりはっきりと喋った。
「私、このまま鍛練に行こうかな。雨降りのときはすぐ疲れるから効率が良い。長次は?」
「……私も行く」
このまま一人で寝直したら、また酷い夢を見そうだった。