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    ゆりた

    rps小説の方

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    ゆりた

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    rps/🐸🦢🐹🐢/ウンジが記憶を失う話

    ユナの告白.



    ウンジが事故に遭ってから二ヶ月が経とうとしていた、記憶は未だ戻っていない。戻そうと躍起になる度にユジョンと意見が食い違う。ウンジのことを考えてと言われる度に考えてないのはどっちだよと思った。最近は一緒のマンションにいるのに逢わせてすらもらえない、私だけ除け者。憂鬱な気持ちになっていたとこを飲みに誘われて二つ返事で了承した。


    店内の喧騒の中でアルコールが身体の中を回っていくのが分かる。汗をかいたグラスを持つと手の熱さが幾分かマシになった気がした。氷が溶けて薄くなった液体をまた一口含んだ、味しないでしょとこの場にいないウンジの声が聞こえる気がして頭を振る。向かいに座ったジンソルはそんな私を不思議がって見ていた。

    「オンニ大丈夫ですか?」

    お互いにお酒に強くないことは分かっているから、私が飲み続けていることを心配される。ジンソルは最初の一杯だけ付き合ってくれてあとはコーラを飲んでいた。

    「ん……」

    ふわふわする思考で返事するも続く言葉が出てこない。真正面のジンソルの顔がウンジにみえてきて、大きな目と笑うと横に広がる大きな口が似ている。端正ではっきりした顔立ちからは予想できないほどのんびり話すとこも。私だけを真っ直ぐに見てくれることはちっとも似てないけど。

    遠くのテーブルから歓声があがる。目をやるとスーツ姿の男性ふたりが身体を密着させショットグラスをあおっていた。ラブショット飲みというやつだ。

    「……やったことあります?」

    同じ光景を口を開けてみていたジンソルが聞いてくる。遠い昔にウンジとユジョンがやっていたのを他のメンバーたちと囃し立てたことを思い出した。口移しまでいったんだっけ?

    「やりたいの?」

    考えるのを放棄してジンソルに笑い掛ける。みるみるうちに赤くなった顔はウンジとは違うなと思った。こんな風にウンジに熱のこもった視線で見られたら、想像したら下腹が疼くのを感じた。

    注文した焼酎とショットグラスがふたつ届く。瓶を開けて、隣の席に移動してきたジンソルが注いでくれた。グラスとテーブルを少し濡らした液体に緊張する。腕同士を絡めてグッと飲み干す、喉が焼けるように熱い。

    「次は抱き合って……」

    スマホを片手にやり方を調べているジンソルが二重にみえる。二段階目にすぐ進めないのは思った以上にお酒がキツかったから、身体の熱さとは裏腹に頭が冷えていく。誘ったのは自分なのにやめたいなんて最低。

    身体の後ろから急に伸びてきた手が焼酎の瓶を奪っていく、ウンジだった。立ったまま瓶ごと飲み干される。テーブルに空き瓶を置く小気味いい音が鳴った。

    「迎えにきたから」

    帰ろうと腕を掴まれて立たされる。ふらつく足元を支えるように腰を抱かれて、ギブスが外れた右腕はまだ三角巾で吊られている。左手だけなのに力強くて振り払えない、腕の中から逃げ出すつもりもないくせにそう思った。

    「治ったらわたしも誘ってね」

    ジンソルに笑いかけて有無を言わせない雰囲気を漂わせている。この場ではウンジが一番年上だから誰も逆らえない。

    「ぜひ、イヴにも声掛けておきます」

    あの子の名前が出てドキリとする。必死に取り繕うとしても酔った頭はうまく回転しなかった。

    「スヨナはわたしが誘うよ」

    ウンジの口から出た呼び名、どうしてという気持ちが渦巻いて目の前がグラグラする。ねぇ私はどうすれば良かったのかな。



    タクシーの中で隣にいるウンジがすごく遠くにいるように感じた。対向車のライトやネオンで顔の輪郭が照らされても、窓に映り込む表情までは伺えなくて私も窓へと視線を逸らした。

    「行かないほうがよかった?」

    呟くように聞かれて首を振った、心のどこかで来てくれないかなと思っていたから。

    「店の場所送ってきてたから迎えにきてほしいのかなって」

    アルコールが回る前にこんなに酔ってしまう前にURLだけを送った。昔からメンバーがいないとこで飲むなら連絡してって言われてきた、ウンジはそれこそ過保護なくらいに。年々言わなくなってきたし、私も連絡しなくなっていった。

    「ユナは酔うとすごくかわいいから」

    心配なのと手が伸びてきて、空中で止まったかと思ったらふんわりと頭を撫でられる。酔った私を口ではかわいいと言うけれど、優しく触れるだけでそれ以上を望んでも無駄だって何度も分からさせられた。

    「嫌な気持ちにさせちゃったかな、イダレの子でしょ?」

    「気にしないと思うけど……」

    仲良いんだねとウンジに言われて喉の奥が詰まるような気持ち悪さを覚えた。そっちこそ私達の比じゃないぐらい仲良くて、それこそ恋人のようだったでしょ。

    「あの子のこと思い出したの?」

    あんな風に呼ぶなんて、私達のことは私とのことは思い出さないのに。どうしてあの子だけ特別なの。

    「何も思い出してないよ」

    ごめんねとウンジの声のトーンが落ちる、また悲しい気持ちにさせてしまった。思い出して欲しいと私が過去の動画や写真を見せる度に、話を聞かせる度に寂しそうに謝られる。

    「ごめ……っ」

    嫉妬、罪悪感、自己嫌悪、色々な気持ちが綯交ぜになって涙が溢れた。感情が抑えきれず泣きながら嗚咽が漏れる。

    『お客さん大丈夫?吐かないでよ』

    運転手にそう言われてタクシーの車内だったことを思い出した。

    「止めてもらっていいですか、ここで降ります」

    ウンジの要望に車が路肩へと停まる。支払いを済ませて先に降りたウンジに手を差し伸べられ外へと出た。宿舎のマンションまでは少し歩くような場所だった、夜風が濡れた頬に当たる。

    鼻をすすってゆっくり歩くウンジから半歩遅れて着いていく。いつも私が泣くと隣にいて泣き止むまで待ってくれた。ユジョンやミニョンは何かしらの言葉をかけてくれたけど、ウンジは黙ってただ横にいてくれる。ユナはひとりで泣きたいだろうけど、ひとりにするのは嫌だから話すの我慢しているって言ってたっけ。思い出してつい吹き出してしまう。

    「あ、え、やっぱり嫌だった?」

    「何が」

    ウンジが立ち止まり振り返って心配そうに聞いてくる。

    「手つなぐのユナ嫌でしょ」

    繋いだままの手を放して困ったようにこちらを窺っている。今更そんなことを言い出すなんて、ベタベタしたスキンシップは好まないけど別に今は嫌じゃなかったのに。

    「何がいいかダメか分からないの」

    ウンジが自分の左手と私を交互にみて眉を下げた。

    「ユナと過ごした時間が多分一番多いはずなのに、分からなくて思い出せないから」

    傷つけてしまうんじゃないかとぽつぽつと話す。だからさっきも一瞬躊躇したのかな、スキンシップ過多なウンジがそう思うなんて胸が苦しくなる。いじらしくてどうしようもなくて抱きついた。

    「ユナ?」

    「オンニ……好きだよ」

    私から触れるから、気持ちを素直に言うから不安に思わないで欲しい。背中に回した手で服を掴むとウンジの顔を見上げた。驚いた表情のまま固まっている唇に触れるだけのキスをする。

    「大好き」

    肩口に頭を預けて溢すように告げた。


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