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    yun357

    @yun357のワンクッション置き場。

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    yun357

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    キスブラ。

    お題「帰り道」お借りしました。

    I'm home.「はぁ〜あ〜…しんっ………ど…」

    大袈裟な溜息を吐きながら煙草に火をつけ、その煙を肺いっぱいに吸い込んで、吐き出す。煙の匂いがそこら中に漂う硝煙や砂埃と混ざり合ってその正体を無くしていくのを眺めながら瓦礫の上にどかっと腰を下ろした。
    その様子を見咎めてブラッドは眉間に皺を寄せる。

    「…おい、まだ終わっていないぞ。イクリプスは撤退したとは言え、逃げ遅れた市民の捜索が…」
    「はいはい分かってるよ…ったく…息つく暇も与えてくれねぇのかよ…暴君め。」

    煙草を持ったまま右手をあげて了解の意を示し、やれやれと重たい腰を上げる。それを一瞥して今度はブラッドが大きめの溜息を漏らした。
    周囲は先程までのイクリプスとの交戦で瓦礫の山になっていた。なんとか敵は退けたものの、道路には穴が空き、建物はかろうじてその形を保っている程度だ。打ち倒したイクリプスの残骸がそこら中に散乱している。

    「…アイツら、流石に暴れすぎだろ…ったく…」
    「今回は、予想外の数だった。サブスタンスは奪取できたが…敵も勢力を増している、と言う事か。」
    「…ディノとジェイは?」
    「こっちへ向かっているとの通信が入ったが、合流ポイントまでは距離がある。」
    「…急げって事ね……ったく…こっちはだいぶ力使ってヘロヘロだっつーの…」

    そう言って足を踏み出すがガクン、と一瞬膝の力が抜ける。

    「…っ…と…」

    慌てて崩れた体勢を立て直す。思いの外能力を使い過ぎていたようだ。キースは前を歩くブラッドに気づかれないようにキツく自分の手を握り込んで、歩く足に力を込め直した。それでも、目敏いブラッドはすぐに気がついて足を止める。

    「どうした、キース。」
    「…いや?何も。…疲れた〜とは思ってるけどな。」
    「…大分、無理をしたのか。」
    「まぁ、ちょっとだよ。ちょっと。」

    そう言って手をヒラヒラ、と振ると眉間にまた皺が寄る。…心配してる時の顔だ。そんなお前だって、無理してただろ。と硬直が出始めているブラッドの手を見ながら口を開く。

    「平気だよ。……大丈夫だ。」

    歩み寄ってブラッドの肩に手を置くと少しだけその眉尻が下がった。こういうとこは、かわいいんだけど。とキースが苦笑いをした、その時だ。

    カラン……

    瓦礫の山が僅かな音を立てて崩れたのをキースはブラッドの肩越しに見た。次の瞬間その瓦礫から現れたのは此方に向けられた銃口だった。

    「………っ…!!」

    -しまった、撃ち漏らしだ。
    イクリプスが引き金を引く。咄嗟にブラッドの肩を掴んで、自分の後ろへと弾き飛ばすように押し出す。反動でキースも体勢を崩すが、そのおかげで銃弾は外れ、崩れた石壁にめり込んだ。

    「っクソ……っ!」

    まだ追撃を諦めていない銃口の方を振り向き、その持ち主ごと視界に入れる。
    -捉えた。
    手を伸ばし、グ、と力を込める。途端にイクリプスの身体が吊り上げられていく。想像もしない見えない力に身体の自由を奪われ、動揺した敵は持っていた武器を放り出し脚をバタつかせ、逃れようとする。

    「…じゃあな。」

    さらに力を込めようと大きく一度息を吸うと、その刹那、キースの後方から夥しい数の鉄剣が飛び出していき、イクリプスの身体を刺し貫いていった。

    「………ブラッド。」

    振り向けば、物凄い形相でブラッドが睨んでいる。地に無惨に転がったイクリプスの残骸を一瞥してもう動かない事を確認してから、キースは気まずそうにブラッドの方へと身体を向ける。

    「あー…サンキューな。…悪かったよ。」

    余裕がなかった。と言い訳をしようとするが、それよりも早く距離を詰めて来たブラッドが少し乱暴にキースの顔を手で拭う。

    「ブッ………な、んだよ。」

    と文句を言いかけて、自分の顔を拭ったブラッドの手が相当量の血で汚れているのをみて、やっと自分が鼻血を出していた事に気づく。
    …やべぇ。
    こうなるのは、大分ギリギリだ。キースの能力は直接脳への負担が大きい。オーバーフロウを経験した事も一度や二度ではないが、その身体への影響は軽いものでは決してない。

    「…無理をしていたのなら、言え。」
    「……悪かった。」

    怒った顔のままのブラッドに寄りかかって、その身体を抱き寄せる。ブラッドは少し身体を強張らせたが、諦めたように溜息をつき、まだ動く方の手でキースの背中をトントンと、叩いた。

    「…帰ろう、お前にも治療が必要だ。」
    「…お前が先だぞ。」

    ブラッドは拗ねたように言うキースの言葉にふ、と息を漏らし「わかった。」と少しだけ笑った。

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