ぞんざいに手渡されたのは茜色の特攻服。オマエの分だ。隊長はそう短く告げて窓の外へと視線を向ける。どうせ外に興味があるわけじゃない。オレの顔色を確かめる気もないってことだ。オレが隊長に従わないなんてこと、きっと考えてもいないんだろう。それとも興味すらないのかもしれない。隊長にとって、オレは窓の外の曇り空と同じぐらい興味がない。隊長の頭の中なんて、どうせ1から10まで「イザナ」のことばっかりだ。
「…オレの分て、どういうことですか」
「横浜へ戻る」
戻る、そのひとことが隊長の正体だった。
目の前にいる黒の特服姿は偽物で。オレはそんなことただの一言も知らされていなかった。
隊長にとってオレはその程度なのだと知らされたことに、そんなことを思う女々しい自分に、どうしようもなく怒りがこみ上げる。
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