Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    水鏡零

    某あの茶の人
    訳あって別のハンドルネーム

    男性向けのイラストを穏やかに置いてゆくことが多いよ
    シチュボイス系のイラストも置いてゆくよ

    R18系はモブ攻めと明らかに人を選ぶシチュばかりなのです
    観覧は個人の責任でお願いしますヨ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 73

    水鏡零

    ☆quiet follow

    【PSZの三次創作小説:1】
    何言ってるかわからないかもしれないけれど、昔昔あるところにPSZの三次創作を書いている人がココにいました
    で。たぶんゲーム知らない人も知ってる人も「お前大丈夫か」状態ですが、あえてのせてみました
    大まかに説明すると「主人公たちが月に行く前に実はとあるシティから実験体としてヒューマンが連れ去られていて暮らしていたけどクーデターが月であって逃げた」っていう設定

    #なんでも許せる人向け
    #三次創作
    threeCreations
    #お前大丈夫か?
    areYouOkay?

    銃声と怒声が飛び交う中、僕たちは走り続けていた。
    後方へと振り返れば、仲間たちが追いかけてくる敵を食い止めてくれている。
    「ここはもう持ちません!早く!」
    「隊長!お怪我をっ!」
    「構わん!早くこの子たちを一刻も早く!」
    隣で両剣を構え、敵の銃弾を弾いてくれる先生。
    その横では、ためらうことなく銃の引き金をひく小さな少女。
    「この通路を抜ければ、すぐだっ!みんな、行くぞっ!」
    「はいっ!!」
    「絶対にっ!生き残れよっ!」
    自信に満ち溢れた恩師の笑顔が、痛々しくも感じる。
    手に持った頼り気のない武器でさえも、今は性能を信じるしか希望は無い。

    ただ無心に

    ただ生き残ることを胸に

    足を撃ち抜かれた少年が、悲鳴をあげて倒れ込む。
    助け起こそうとすれば、彼は手を振り払って顔だけをあげる。
    「兄さんっ!早く行ってくださいっ!」
    彼は足を押さえながら立ち上がると、カベに手を当てて力任せに鉄板を前方へと投げる。
    轟音と共に敵にあたり、更にそれを踏み越える様に新手がやってきた。
    とっさに駆け寄ろうとすれば、師が腕をつかみ、涙さえ流す暇もあたえず走り出す。
    背中で銃声が響き、それでも彼の戦う声が響いた。

    いつも笑っていたね。
    君はどんな時も、絶望という言葉を否定していた。

    同じ服をまとった女性たちに導かれ、大きなホールへとなだれ込む。
    息も絶え絶えの仲間たちを担ぎ上げると、一人ずつ機体の中へと入れてゆく。
    不安げな表情を向けながらも、彼らは口元に笑みを浮かべる。
    「これで、帰れるのね?」
    「先生・・・お師匠様・・・ありがとう。」
    小さな手を握り返した恩師は、大粒の涙を流しながら、彼らの頭を撫でて機体を起動させてゆく。

    すまない。
    本当にすまない。
    こんなことになって、こんなことに巻き込んで・・・

    良い大人が子供のように泣きながら、自分の腕から滴れる血を気にせずに、一人一人に謝り続けている。
    見ていられないような惨状と、結末にようやく気が付いた自分に、言い切れない不安と絶望が覆いかぶさってきた。

    走ってきた通路を見れば、更なる追っ手が迫ってきていた。

    力ない弟や妹を先に避難させると、自分は恩師と共に最前線と化した場所へと走ってゆく。
    「お前はこっちに来るな!」
    罵声に近い恩師の怒鳴り声に、自分はひるまない。
    頭を横に振ると、彼の目の前に迫った敵をなぎ倒す。
    更に迫る敵を、絶対に先へ進ませないと自分は武器を握りしめた。

    その時だった。

    「大丈夫。もう・・・平気よ。」
    場に似合わない優しげな声がすると、深手を負った先生と恩師の前に女性が立つ。
    自分も彼女に守られている事を感じ取り、思わず手が震えた。
    「さぁさぁ、先生。早くこの場を御発ちになられて。」
    「そんなこと!出来るわけがないだろうっ!君は何を言っているんだっ!」
    薄く発光している大きな壁のようなテクニックによって、敵の攻撃はまったくこちらに降り注ぐことが無くなる。
    大きな銃声も、大人の攻撃や親衛隊の一手も、まったく歯が立たない。
    柔らかな輝きとは打って変わり、その光の壁は敵にとっては脅威でしかないだろう。
    「だって、私はもう動けないもの。皆を助けたいから。私はここでお別れなの。」
    「・・・・っ。」
    「君を犠牲にしろというのかっ?私にっ??!」
    金色の髪をなびかせ、エメラルドのような輝きを放つ彼女の瞳は、とても優しくとても力強く感じられた。
    先生は、額から血を流しているのに、声を荒げて彼女へと手を伸ばす。
    その手から離れる様に彼女は更に敵へと近づいてゆく。

    あぁ。なんて・・・
    なんて無力なんだ・・・
    僕の力では・・・
    彼女は守れないんだ・・・

    「戻ったら、すぐに君を助けにゆくよ。絶対に・・・絶対にだ。」
    傍らにたたずむ小さな少女の手を握って、先生は走りだす。
    足を引きずり、動きが鈍くなってきた手を押さえながら、彼はそれでも歩みを止めない。
    「・・姉さん・・・。」
    小さな少女が、彼女を振り返り名前を呼ぶ。
    彼女は金色の髪をなびかせ、少女へと優しく手を振った。
    涙一つも流さず、優しげな表情を浮かべながら。
    「俺達も行くぞ・・・。」
    自分の意見を押し殺す様に、恩師が、肩を叩く。
    敵の攻撃は一層強くなり、共に戦ってくれている仲間たちが、目の前で倒れてゆくのが見えた。
    「ねぇ。お願い。君にだけに、私の思いを伝えてもいい?」
    先生と小さな少女の姿が見えなくなったのを確認すると、彼女は未だ足の動かない自分へと向き直った。
    それでも、彼女の作った光の壁は全く壊れない。
    強い意志と強い力を見せつけられているように感じる。

    でも、目の前で笑っている彼女の表情は瞳を潤ませていた。

    わかっているさ。
    君の言いたい本当の気持ち。
    何年一緒に暮らしていたと思うんだよ・・・。
    そういう隠し事は無しでいこうって、言ったじゃないか。
    フラれた僕の気持ちを考えろって。

    「本当は、もっと先生と一緒にいたかった。もっと、皆を助けてあげたかった。もっと・・・」
    大粒の涙を流して、彼女はありったけの笑顔を作る。

    あぁ。なんてキレイな女性になってしまったんだ。
    フラれた事が、今でも惜しくて辛いな。

    「もっと愛してほしかった。」

    二度と先生にも会えないって、君は分かっているんだね。
    彼の負った傷がどれだけ酷いかだって、理解しているんだろう。
    僕だってわかっているさ。
    きっとお師匠様は僕を助けたら戻るんだろう。

    この悲しみと憎しみしかない場所へ。

    どんなに強い力を持ったとしても、限界ということはある。
    “彼女”の作った光の壁は、短時間でひびが入り、そろそろ壊れそうだ。
    「お前をあいつと一緒に連れてゆけない俺を・・・許してくれっ」
    自分の前で声を殺して泣き出した師匠に、何も言葉をかけることができない。

    気が付けば目の前の風景は、どんどん変わってゆく。
    見たくもなかった“最期”を目に焼き付けてしまう。

    真っ白な服を赤く染めながら、彼女は歌うように滅びを敵へと向ける。

    業火と凍てつく氷の槍が敵を容赦なく覆い付くし、悲鳴が響き渡った。


    もしもあの時 という言葉が通用するのであれば
    僕はどんな決断をしていただろうか?


    その答えは、今でさえもたどり着けていない。



    青々と茂った草原の中で薄らと目を開けると、眩しい程の光が眼の中に入ってきた。
    「う・・・・。」
    傷む身体を押さえつける様に身体を起こし、辺りを見つめる。
    微かに焼け焦げたような香りが漂う中、それらと相反するように青々とした草花が目の中に広がった。

    同時に、絶望感がせりあがってくる。

    急いで身を起こしてみるが、探している人物の姿は無く、その痕跡さえもない。
    しいて言えば、不自然に焼け焦げた大地が残っているだけで、それ以外は本当に何もない状態だ。
    「せ・・・せんせ・・・・・・・あ・・・・」
    震える手を押さえつけ、嗚咽に似た声を出すしかない。
    すがるように焼け焦げた大地へと歩み寄り、ふっと空を見上げた。
    「・・・・・。」
    視線の先に薄らと白い球体が見えると、まるで吊られていた糸を切られたかのように自分は地面へと座り込んでしまう。
    目の先で輝いている球体を認知したことで、最後に見た風景がいかに遠い場所で起こっていたのか理解する。
    それは無理矢理であり、落ち着くことができない胸騒ぎを紛らわせようとしている状態だ。
    自分でさえも、どうしてよいのかわからない。
    そして、ここが何処なのかも理解できない。
    「シエ・・・せんせ・・・み・・・んな・・・」
    自分が助かってしまった事に、恐怖に似たモノを感じてしまう。
    焼付くように脳裏へと浮かんだ人々の声や表情が更に追い打ちをかける。

    焼け焦げた大地の砂を掴み、熱が無い事を感じて叫びそうになった。

    思った以上に時間は経っている。

    血と泥でまみれた服を引きずりながら、誰かに押されるように立ち上がると、傷だらけの身体で・・・僕は・・・歩き出した。

    何処に行くあてさえも無く、何処へたどり着くかもわからず。

    ただ、絶望を抱えながら歩くしかない。

    「あ・・・・。」

    虚ろな目で視界の先を見ると、建物が見えてきた。
    人々の活気にあふれた声も微かに耳をかすめる。

    その声は、久しく聞いていない穏やかで優しい声だ。

    「たすけ・・・たすけ・・・て・・・」

    聴こえるはずもない声で、眼の先に見えてきた建物に向かって声をあげてしまう。
    かすれた声で、最後の力を振り絞るかのように、息を吐きだす。
    枯れ果てた涙は流れなかったが、自分の中では泣き叫んでいる声が響いている。

    「・・・・父上様っ!」
    「っ・・・・。」

    ふっと背後から声が聞こえ、思わずその姿勢を崩す。
    生い茂った柔らかな草花の上に倒れ込みつつ、近づいてくる足音へと顔を向けた。
    茶色の髪が視界に入り、空のような青い瞳が顔を覗きこんでくる。
    「これは・・・・」
    「お怪我をされているのです。」
    「あぁ・・・そうだね。」
    軽い音を立てて近くに長い棒のような物が落ちる。
    酷く柔らかな手が顔を撫で、同時にゆっくりと身体が起こされた。
    青い空と眩しい程の光がぐるりと回り、視界に男性の顔が入ってくる。
    知らない、誰とも分からない顔だ。
    その横では目を真ん丸とさせた少女の顔が見える。
    「すぐに帰ろう。パルミア。」
    「はい!」
    男性は柔らかな布を自分に巻きつけ、一目散に走りだした。
    後では、長い杖を必死に抱えて追いかけてくる少女がいる。
    声を発して、彼らに自分の事を言いたかったが、もうその力さえも無く、
    ただ小さく口を動かすことしかできない。
    痛いくらいに柔らかな布と、しっかりと自分を落さぬように抱えた男性の手だけが感覚として頭に入ってくる。

    次第に草花をかき分ける音が聞こえなくなり、靴の音と人々の声が近づいてきた。

    「アルス市長っ!」
    「市長どうされましたかっ?」

    ざわめき驚いた人々の声が頭上を越え、自分たちを囲むように人々が駆け寄ってくる音が頭に響く。
    息を荒げて走ってゆく男性の横を、幾つもの大人たちが驚いた表情で駆けてきた。

    皆、同様に男性に抱えられた自分の姿を見て絶句する。

    「医者と薬屋の手配を!」
    「お任せくださいっ!」
    「もう少しだっ!頑張れっ!」

    ざわめく人々の中を、多くの声を浴びながら進む。

    自然と絶望感が薄れている事に、その時は気が付かなかった。

    次に視界へと入ってきたのは、安どする人々の顔だった。
    口いっぱいに広がっていた血の味も無くなり、全身を襲う痛みさえも感じない。
    「ち、父上様っ!」
    「パルミア。あまり大きな声を立ててはいけないと・・・・」
    うっすらと目の中に入ってきた茶色が更に色濃くなると、甲高い悲鳴のような少女の声が耳に入ってきた。
    優しい笑みを湛えた人々の間をぬうように、小さな少女が自分の顔を見て驚いた表情をしている。
    「こ・・・ここ・・・は・・・?」
    「気が付いたようだね。」
    「あぁ・・・よかった・・・よかったです。」
    先に自分を抱え走ってくれた男性の顔が視界に入り、やっとそこで助かったという実感が湧いてくる。
    何時振りだろうか。と思えるほどの柔らかな香りが頬をかすめ、それらが草花の香りだと気が付くのに時間がかかってしまった。
    「無理はしない方がいい。酷い怪我だったからね。」
    「あ・・・・。」
    身体を支えられながら上半身を起こしてもらうと、見た事もないような風景が広がっていた。
    鮮やかな色合いの布が風に揺れ、大きな窓の外には同じような色合いの建物が見える。
    こびりつくように脳裏に残っている風景とは違い、安心できる風景だけが広がっていた。
    衣服は真新しい物へとなっており、傷を覆っている布は真っ白で汚れひとつ見えない。
    「ここは、ミコトシティだよ。人と物が行き交う行商の街だ。」
    「こ・・・こは・・・・」
    「・・・?」
    自分を気遣ってか、男性はゆっくりと言葉を発してくれる。
    しかし、どうしても確かめたい事があり、彼の言葉を半ば聞き流す形で喋ってしまう。
    相当切羽詰っている表情だったのか、男性は自分の顔を見て次の言葉を発するのをやめた。
    周りの大人たちも皆、じっとこちらを見ている。
    「ここは・・・ち・・・地球ですか?」
    「え・・・?」
    「ここは・・・月ではなく・・・地球ですか?」
    「・・・・。」
    震える声を押さえつけ、必死に彼らに問いかける。
    とにかく、すぐに答えを聞きたくて。

    ここは、月ではなく、地球であるのかと。

    大人たちは目を丸くし、何を言っているのだと言わんばかりに、こちらを見て苦笑いを浮かべだす。
    大丈夫かと言わんばかりにため息をついて。
    しかし、その中で一人だけ・・・ただ一人だけが真剣な表情をしていた。
    自分をここまで連れてきてくれた“彼”だ。

    「ここは、地球。地球にあるミコトシティだ。」
    「月・・・じゃ・・・ないんですね?」
    「あぁ。君が脅えるモノは近くにはないよ。」
    「っ!」

    穏やかに微笑んだ彼の表情に、今まで張り詰めていたモノが決壊するように嗚咽が喉から発せられる。
    枯れ果てたと思っていた涙がとめどなく溢れ、手の震えが止まらない。
    茫然とこちらを見ている大人たちとは対照的に、彼は優しく自分を腕の中に入れてくれた。
    大丈夫だ。大丈夫だ。と何度も呟きながら。

    「ぼ、僕は・・・・助かったんだ・・・・せんせ・・・おかげで・・・みんなの・・・おかげでっ!」

    後に彼から言われた言葉は今でも忘れられない。

    死んだような瞳で辺りを見ていた瞳が、その一瞬で輝きを戻し、そして人形のような声に魂が戻った。と言っていいほど、自分の変化は大きかったという。

    周りで茫然としていた者達でさえも、その変化は分かったと彼は事あるごとに呟いていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works